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「BSC(バランスト・スコアカード)を正しく理解する(4)」

2010.10.04 株式会社オージス総研  宗平 順己

第3世代のBSC その1

 第2世代のBSCでは戦略マップのテンプレートが登場し、顧客の視点に示されている顧客への3つの価値提案、「卓越した業務」、「顧客関係重視」、「製品リーダーシップ」、これがすなわち企業がとりうる戦略になり、この戦略に応じて内部ビジネスプロセスにおいてどの部分を卓越させるのかを決めるといったことを前号でご紹介しました。
 第2世代のBSCで、かなり戦略マップをすっきりと分かりやすく示せるようにはなったのですが、最も重要な4つめの視点、学習と成長の視点については、今ひとつ何を決めればよいのかあいまいであると感じていました。
 この疑問に答えるべく、図-1に示すように第3世代のBSCは特に学習と成長に視点に関して、大きな進展がなされています。

第3世代の戦略マップの基本形(その1)
図 1 第3世代の戦略マップの基本形(その1)

 図-1に示すように、あいまいであった学習と成長の視点は、人的資本、情報資本、組織資本という無形の資本(インタンジブルズ)を戦略にあわせて整えることであるとしています。
 ここに重要な概念である「レディネス」という言葉がでています。これは戦略実現のための新しい顧客価値創造やそれに伴う新しいビジネスプロセスを実現するにあたって、人材、情報システム、組織風土は準備が整っていますか?ということです。整っていないのであれば、必要な投資をするということになります  例えば、オージス総研では、この新しい戦略マップの考え方を用いて、中期計画を実現するために必要となる戦略的職務群を定義し、その人材の質的・量的必要人数を定義し、不足分を補うための施策を展開しています。  情報システムもこのレディネスの考え方を用いると実に明快にIT投資を定義・評価することができますが、これは次回に詳しくご紹介します。

 さて、第3世代のBSCの戦略マップには図-2に示すようにもうひとつ大きな変更がありました。

第3世代の戦略マップの基本形(その2)
図 2 第3世代の戦略マップの基本形(その2)

 この図-2に示すように尺度(KPI)のところに事前的指標、事後的指標の区別がなくなりました。これはBSCを垂直展開すると、下位組織のKPIが上位組織の事前的指標となることが分かったからで、重複をさけるためにこのようなシンプルな構成になりました。
 また、図-2の左上に「プロセス:業務管理」という表記があります。第3世代のBSCでは、企業の多くのプロセスを
 「業務管理のプロセス(オペレーション・マネジメント)」
 「顧客管理のプロセス(顧客マネジメント)」
 「イノベーションプロセス」
 「規制と社会のプロセス」

の4つのクラスターに分け、それぞれについて、戦略マップを書くこととなっています。また「戦略マップ」の本にはプロセスクラスター毎のテンプレートが定められ、図-3に示すように設定すべき戦略目標と指標が示されています。

業務管理プロセスにおける指標
図 3 業務管理プロセスにおける指標

 このように第3世代では第2世代以上にビジネスプロセスとの関係性が強く意識されるようになりました。

 以上が第3世代のBSCの概要です。次号はBSCとビジネスプロセスモデリング、IT投資マネジメント、人材マネジメントについてご紹介します。次号も非常に重要な号となりますので、お見逃しなく。

「戦略マップ」:本文中の図は全てこの本からの引用
 ロバート S・キャプラン、デビット P・ノートン著、櫻井通晴・伊藤和憲・長谷川惠一監訳(ランダムハウス講談社,2005年)

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