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「MESの最新動向(工場の見える化の国際対応について)」

2012.04.11 株式会社オージス総研  宗平 順己

 多くの製造業がグローバル展開していますが,グローバル経営の成熟度が高まるに従って,グローバルでの統一オペレーションとローカルオペレーションとのバランスのとれたマネジメントが求められるようになります。
 このためにBSCとSaaSアプリケーションを用いたKPIモデルの構築についてBPIというテーマで連載をしました。
 しかしながら実際にKPIを取得しようとすると、工場の操業データなどの収集に実はいろいろと課題がでてきます。そこで今回からは、この領域に対応するMESについて,グローバル経営の観点から,国際的な製品動向についてリサーチ結果をご紹介します。

1. 明らかになった課題

 KPIモデルについては次のような現実的な課題が明らかになっています。

(1) 現在困っているのは標準プロセスの設定である。いろいろな考えで生産ラインが設定されているために,比較評価できない。この標準モデルが必要である。
(2) また,あわせて合理的なデータ収集のしくみについても目処がたっていない製造プロセスに関しては,IEC62264-1:2000(ISA-95)において図1に示す4層の階層モデルが定義されており,BPIの連載でもこの階層モデルに準拠しています。
階層モデル
図1 階層モデル
 さらにISA-95のPart3(IEC62264-3)では,レベル3について図2に示すアクティビティモデルが定義されています。図2は生産オペレーション機能の例であるが,品質保証(QA),メンテナンス,倉庫管理(原料,製品)についても同じアクティビティ構造が適用されます[1]。
Activityモデル
図2 Activityモデル

2.MES製品リサーチの実施

2.1 MES製品リサーチの目的

 工場の現場情報を収集し,ERPなどの管理系システムに接続する重要な役割を果たすのがMES製品です。
 国際化対応にあたっては,このMES製品の国際標準への準拠状況等を調査しておく必要があります。

2.2 リサーチに使用した資料

 MESの標準化に関しては,MESA International[2]が精力的な活動をしており,MES製品のリサーチ結果をMES Product Surveyとして発刊しています。今回はこの2010年版を資料として使用しました[3]。

2.3 MES製品の世界的な状況

表1はMES Product Survey2010に掲載されている製品の地域別の状況です。

表1.MESProductSurvey2010掲載製品
MESProductSurvey2010掲載製品

この数は製品調査のアンケートに回答したものであり,その対象となる母集団は表2の通りです。

表2.MESProductSurvey2010調査母集団
MESProductSurvey2010調査母集団

 調査レポートは母集団よりもやや欧州系の製品が多くなっているが,ほぼ世界の製品状況を反映しているものと考えられます。日本ではどうしても米国製品の情報が中心となりがちであるが,MES領域に関しては欧州からも数多く製品が提供されていることがわかります。なお,日本製品は調査対象にも含まれていません。

2.4 調査項目

 MES製品の調査項目を表3に示します。第5項がISA95への準拠状況です。

表3.MESProductSurvey2010の調査項目
MESProductSurvey2010の調査項目

 (3)のMESA's Strategic Initiativesについては,生産領域における次の6つの戦略的な取り組みへの対応状況を調べています。

  1. Lean Manufacturing
  2. Quality and Regulatory Compliance
  3. Product Lifecycle Management (PLM)
  4. Real Time Enterprise
  5. Asset Performance Management
  6. Sustainable Manufacturing

 この調査結果については、次号ご紹介します。

(参考文献)

[1]Dennis Brandl, "What is ISA-95? Industrial Best Practices of Manufacturing Information Technologies with ISA-95 Models", ISA-95(IEC62264)チュートリアルセミナー, 2008
[2]http://www.mesa.org/en/index.asp
[3]http://www.mescc.com/mes-report.html

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