事例

MBSEソリューション導入事例
テイ・エス テック株式会社様

自動車シートのシステム仕様を"説明可能"に
MBSE導入により、顧客や社内関係者の認識を合わせ品質向上を実現

テイ・エス テック様は、自社開発した「ヘルスケアシート」の技術仕様検証プロセスにおいて、従来のUSDM形式での要求仕様書では可読性や網羅性が不足し、顧客に「利用者視点の価値」を伝えづらいという課題を抱えていました。そこで、オージス総研が設計内容を可視化するためにMBSE導入を支援し、既存の仕様書を分析した上でExcelに要求仕様システムモデル化しました。その結果、設計内容が可視化され品質が向上し、開発者間でのコミュニケーション活性化にも寄与しました。

大規模・複雑化する自動車シートの開発、「仕様の可視化」が急務に

自動車業界がSDV(Software Defined Vehicle)へとシフトする中、シートをはじめとする車の内装品も多くのセンサーや電装デバイスを搭載し、電子制御によって乗員の安全や健康を支える高度なシステムへと変貌を遂げています。
世界13カ国で事業を展開し、自動車業界のTier1サプライヤーとして、シートやドアトリムなどの開発から製造販売までを一貫して手掛けるテイ・エス テック様も、この大きな潮流の中で事業を拡大してきました。

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同社は、長年培ってきた技術力や提案力を活かし、乗員の姿勢をセンサーで測定し姿勢改善などをフィードバックする「ヘルスケアシート」の開発を進めてきました。しかし、開発現場では、目に見えないソフトウェアの振る舞いや複雑なシステム要求を、従来のUSDM(Universal Specification Describing Manner)手法だけで伝えることが難しいと感じる場面が増えていました。
「Excelに要求仕様を記載していましたが、記述が膨大になり、網羅性の不足や解読に時間がかかるといった問題がありました。社内でも本質的な議論がしづらく、何よりお客様である自動車メーカーに対して、当社のシートがどのような価値をユーザーに提供するのかを論理的に説明し、安心して採用していただくための説明方法に課題がありました。日本の製造業の強みである『すり合わせ』開発を、今の時代に即した形で体現するための新しいツールを求めていました」と、樫野様は当時を振り返ります。

この危機感が、同社がMBSE(モデルベースシステムエンジニアリング)の導入へと向かう原動力となりました。

目的志向、かつ最短でゴールに到達する提案を評価

9014_kashino_02.jpgMBSEの導入にあたり、テイ・エス テック様は、複数社を比較検討しました。その選定過程において、オージス総研は、他社とは明らかに異なるアプローチだったと樫野様は説明します。
「多くの会社が『MBSEという手法がいかに素晴らしいか』『このツールを使って何ができるか』といった、MBSE導入を前提としたメリットや手法に関する提案が中心でした。一方、オージス総研は『何を実現したいのですか?』と私たちの目的に真っ先に寄り添ってくださいました。また、事前に提示した情報から、サンプルモデルを作成して見せてくれました。自分たちの製品がモデルになるとこう見えるのか、という具体的な成果物のイメージが湧きました」

さらに、選定に至るまでの大きな壁は「期間」でした。
MBSEの導入プロジェクトに与えられた時間は、わずか2ヶ月。この厳しい条件に対し、最短距離でゴールへ導く具体的なスケジュールを提示したのも、オージス総研のみでした。
オージス総研は、現状分析からモデルの完成、自走の足掛かりを作るまでの最短でのマイルストーンを提示したのです。

樫野様は、社内でMBSEの活動が理解されるかも不安だったと語ります。

「MBSEの実践経験がなかったため、単に教科書的なモデルを教えるだけではなく、私たちの複雑な仕様をどう解きほぐし、どう実務に落とし込むか。アドバイスをもらいながら一緒に導き出してくれるパートナーを求めていました。そういった点をすべて備えていたのが、オージス総研でした」

テイ・エス テック様の将来的な自走化という目標に向けて、オージス総研の「確かな実力」とお客様の成功のために最短ルートを提案する「誠実な伴走姿勢」は、重要な評価ポイントでした。

既存の要求仕様書の徹底的な分析とシステムモデル化を実施

2025年2月にスタートしたプロジェクトは、オージス総研とテイ・エス テック様の開発メンバーによる定例会形式で進行しました。
まず着手したのは、既存の技術仕様の徹底的な分析です。具体的には、階層が混在したり、主語が欠落したりしている箇所の特定や、要件のループといった課題の分析を行い、その後、オージス総研とテイ・エス テック様でMBSEモデルを活用しながら実際にモデリングを行っていきました。

例えば、ユーザーシナリオの視点では、ユーザーが乗車してからヘルスケアシートを使用するまでの流れをシーケンス図で描くことにより、「シートが乗員にどのような価値を与えるのか」「乗員に何を行ってもらうのか」といったユーザーのシステム利用の具体的なイメージを持てる資料が完成しました。

「モデルを指でなぞると、関係する各部品への影響が一目瞭然になりました。今までは頭の中だけで完結させて、いきなりソースコードを書いていたような領域が、共通の土俵で見えるようになりました。モデルという共通言語を得たことで、専門分野が異なるエンジニア同士でも、抽象的な感覚ではなく論理的なディスカッションが可能になりました」(樫野様)

タイトなスケジュールの中、プロジェクトを支えたのは毎週のオンライン定例会と、密なコミュニケーションでした。

「オンライン環境でも特に支障なくプロジェクトを進められました。むしろオンライン環境でやり切ることができたことで、モデルの精度を磨くことにもつながったと思います。また、離れた拠点、例えば、海外の拠点に赴かなくてもモデルを使って説明可能とするための良い訓練になりました」(樫野様)

設計品質の向上と資産化を実現、MBSEの全社展開に向けて

わずか2ヶ月という短期間でのプロジェクトでしたが、得られた成果は期待を遥かに上回るものでした。
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「モデル化を進める中で、これまでの設計では気づかなかったような不具合、不要な処理のループや検討漏れの分岐などを早期に特定することができました。これらを、実機を作る前の段階で潰し込めたことは、開発コストと品質の両面で大きなインパクトがあります」(樫野様)
均一な粒度でシステム全体を俯瞰できるようになったことで、網羅的な検証が可能となり、お客様に対しても「なぜこの設計なのか」を論理的に説明できる環境が整い、設計品質の向上につながりました。

また、副次的な効果として、開発現場でのコミュニケーション変革にも寄与しました。

 「以前は、部門間でシステムという言葉の定義にばらつきがあるなど、開発において共通認識を持つことが難しいと感じることがよくありました。特に、ベテランエンジニアの経験知を若手に理解してもらうのは容易ではありません。しかし今では、若手の開発担当者が自らモデルを作成して設計意図を説明するようになるなど、可視化することで共通言語となり、以前よりも議論が活発になりました」

テイ・エス テック様では、今回のMBSE導入の成功を礎に、他のプロジェクトへの展開を視野に入れており、オージス総研に対してさらなる期待を寄せています。
 「オージス総研は、目的を常に意識し、その目的達成に向けて最短で到達できるよう、私たちを導いてくれました。この成果は『ヘルスケアシート』だけでなく、eスポーツ向けのゲーミングチェアほか、新製品の開発検証にも役立てていきたいです」

最後に樫野様が抱負を述べました。
「SDV化が進む中で、従来の部品単体としてのモノづくりだけでは通用しない局面が増えています。日本の製造業の強みである『あうんの呼吸』や『すり合わせ』による開発を、MBSEといったツールで可視化し、デジタルやAIを活用しながら開発プロセスの自動化や効率化を進めていきたいと考えています。海外、特にEUではこの分野が非常に進んでいる印象です。グローバルサプライヤーとして、車両全体の価値を左右するようなシステム提案を積極的に行い、お客様に喜ばれる製品づくりに取り組んでいきたいです」

<プロジェクトを支援したオージス総研担当者の声>


テイ・エス テック様が、ご自身でモデルを作成し、設計の妥当性を検証できるようになっていく姿を間近で拝見し、非常に嬉しく感じています。開発効率の改善という課題に対してもお役に立てれば幸いです。日本の製造業では、多くの企業が同様の課題を抱えていると感じています。私たちは単なる手法の提供に留まらず、お客様の本業である製品開発に集中し、新たな価値を発信していけるよう、今後も最新の知見と誠実な伴走で支援を続けてまいります。

お客様プロフィール

テイ・エス テック株式会社

9014_front_logo_photo.jpg1960年設立。世界13カ国で四輪車・二輪車用シートを中心とした自動車内装品を展開するグローバルメーカー。

開発から生産まで一貫して手掛け、先進的かつ独創的な技術を活かし、快適な車室内空間を世界に提供している。

※この記事に記載されている社名および製品名は、各社の商標または登録商標です。
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は取材当時のものです(2026年2月)。また、予告なく変更される場合がありますので、ご了承ください。

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