CO2排出量の可視化に取り組むには?課題と効率的な方法を解説

脱炭素やカーボンニュートラルへの対応が企業に求められる中で、「まずはCO2排出量を把握することが重要だ」と言われる機会が増えています。しかし、環境分野の専門人材がいない企業では、「何から始めればいいのかわからない」「算定が難しそうで継続できる気がしない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、CO2排出量の可視化が必要とされる理由、よくある課題、そして無理なく取り組むための効率的な方法までを、わかりやすく解説します。


CO2排出量の可視化とは?

CO2排出量の可視化とは、企業や組織の事業活動によって発生する二酸化炭素(CO2)を算出・数値化することです。
どの工程で、どのくらいのCO2が排出されるかを知らなければ、適切なCO2削減目標を設定できません。脱炭素経営はCO2排出量を可視化することから始まります。

CO2排出量の可視化が必要な理由

CO2をはじめとする温室効果ガスの増加により、地球温暖化は年々深刻さを増しています。近年では、酷暑や豪雨といった異常気象を身近に感じる場面が増え、地球温暖化を意識する機会が多くなっています。こうした背景から、企業活動においても環境負荷を把握し、CO2削減に取り組む姿勢が求められています。

2020年に本格運用が始まったパリ協定を契機に、脱炭素経営への流れが加速しています。日本国内でも、2050年カーボンニュートラルの達成を目標に掲げ、地球温暖化対策推進法の改正やGX推進に関する制度整備が進められています。特に近年は、一定規模以上の企業に対して、CO2排出量の把握や情報開示、さらには排出量取引への参加を求める動きも具体化しており、環境対応は「努力目標」ではなく、事業運営に直結する要件になりつつあります。

このような制度環境の変化に加え、企業を取り巻くステークホルダーの意識も大きく変わっています。投資家や取引先は、企業がどのように脱炭素やカーボンニュートラルに取り組んでいるかを重要な評価ポイントとして見るようになりました。
ESG経営が重視される中で、環境への取り組みはCSR活動の一環ではなく、企業価値や中長期的な成長戦略に直結する経営課題として位置づけられています。

こうした流れの中で、CO2排出量の可視化は、すべての環境施策の出発点となります。排出量を定量的に把握できなければ、削減目標の設定や進捗管理、外部への説明は成り立ちません。数値として整理された排出量データは、社内での共通認識をつくるだけでなく、経営層への報告資料や意思決定の根拠としても活用できます。環境対策を感覚的な取り組みから、データに基づく戦略的な施策へと引き上げる役割を果たします。

CO2排出源の整理とScopeの考え方

CO2排出量は、一般的に「活動量」に排出係数を掛け合わせることで算出されます。たとえば、使用した電力量や燃料使用量といった活動量に、国や機関が定める排出係数を掛けることで、CO2排出量を数値として算出できます。

・排出量算出式: 活動量[1]×排出係数[2]=CO2排出量

[1]活動量...エネルギー使用量、購買量など
[2]排出係数...燃料や電力などのエネルギー消費量(活動量)に対して、どれだけのCO2が排出されたかを示す単位量あたりの数値

※参考:算定方法・排出係数一覧(環境省)
https://policies.env.go.jp/earth/ghg-santeikohyo/calc.html(外部サイト)

計算自体はシンプルに見えますが、実際には活動量の把握が企業や関係会社全体に及ぶことや、排出係数が年度ごとに更新されることがあり、手作業での対応には多くの時間と手間がかかります。
また、排出量は、国際的な基準である「GHGプロトコル」に基づき、Scope1、Scope2、Scope3の3つに分けて、算定・報告されることが主流です。

  • Scope1:自社で直接排出されるCO2
  • Scope2:購入した電力や熱の使用に伴う間接排出量
  • Scope3:サプライヤーや物流、製品使用後まで含めたサプライチェーン全体の排出量

すべてのScopeを一度に正確に算定するのは簡単ではありません。そのため、多くの企業ではまずScope1・Scope2といった自社で把握しやすい排出源から可視化を進め、段階的にScope3へと対象を広げています。自社の事業内容や体制に応じて、無理のない範囲から着手することが現実的な進め方と言えるでしょう。

CO2排出量可視化の3つの課題

CO2排出量の可視化は重要性が理解されている一方で、実際に取り組もうとすると多くの企業がさまざまな壁に直面します。ここでは、環境部門の担当者からよく聞かれる代表的な課題について整理します。

① CO2排出量に関するデータ収集・連携の難易度

CO2排出量可視化を難しくしている大きな要因の一つが、データ収集と社内外連携のハードルの高さです。
Scope1・Scope2に該当する自社拠点の電力使用量や燃料消費量であれば、比較的把握しやすい一方で、Scope3に含まれる排出量の把握は一気に難易度が高まります。
原材料の調達、部品製造、物流、製品使用、廃棄といったサプライチェーン全体に排出源が広がるため、自社だけで完結せず、他社が保有するデータに依存せざるを得ないからです。

特に近年は、グローバル化や外注化の進展によりサプライチェーンが複雑化しており、どこで、どの程度のCO2が排出されているのかを把握するには、多くの時間と手間がかかります。取引先やサプライヤーごとに管理方法やデータ形式が異なるケースも多く、情報を集約・整理するだけでも担当者に大きな負担がかかります。

さらに、サプライヤーから実データを収集するためには、単に依頼するだけでなく、協力を得るための仕組みづくりや関係構築が欠かせません。脱炭素への理解度や対応状況は企業ごとに差があり、十分な情報が提供されない、あるいは概算値しか得られないといった課題も生じやすくなります。このように、社外との連携を前提とするScope3の算定は、可視化を進める上で大きな壁となっています。

② 社内のノウハウ不足

脱炭素やGXに関する専門知識を持つ人材が社内にいない場合、「この計算方法で問題ないのか」「外部に説明できる内容か」といった判断ができず、作業が止まってしまうこともあります。環境部門だけに負担が集中し、全社的な取り組みに発展しにくい点も課題です。

③ 算出手法とデータ精度に関する課題

もう一つの課題が、算出手法やデータ精度のばらつきです。CO2排出量は、活動量に排出係数を掛け合わせて算出しますが、どのデータを活動量として採用するか、どの係数を使うかといった判断は、企業や部門によって異なる場合があります。その結果、社内で算出した数値同士の比較が難しくなったり、年度ごとの変化を正しく評価できなかったりすることがあります。
また、正確な算定を行うには、GHGプロトコルや各種ガイドラインへの理解が必要であり、一定の専門知識が求められます。知識やリソースが不足している場合、やむを得ず概算値に頼るケースもありますが、その場合、実際の削減努力や改善効果が数値に反映されにくくなるという問題が生じます。精度に不安がある状態では、経営層や外部ステークホルダーに対して自信を持って説明することも難しくなります。

このように、データ収集・連携の難しさと、算出手法・精度の課題が重なり合うことで、CO2排出量の可視化は「やるべきだとわかっていても進まない」取り組みになりがちです。だからこそ、仕組みやツールを活用し、属人性を排除しながら継続的に運用できる体制づくりが重要になってきます。

CO2排出量を可視化する手段

こうした課題を背景に、近年ではCO2排出量の算定や管理を効率化するための手段が広がっています。企業の体制や目的に応じて、無理なく継続できる方法を選ぶことが、可視化を定着させるための重要なポイントです。

表計算ソフト

CO2排出量を可視化する方法として、まず表計算ソフトを用いた算出があります。安価で、小規模な範囲で試すには有効です。しかし、データ更新や管理が属人化しやすく、事業拡大や複数拠点への対応には限界があります。

CO2排出量管理システム

そこで注目されているのが、CO2排出量可視化に特化した管理システムやクラウド型ソリューションです。これらのツールでは、算定ロジックや排出係数があらかじめ設定されており、専門知識がなくても効率的に算出できます。データ収集から分析、レポート作成までを自動化できる機能を備えた製品も多く、担当者の手間を大きく削減できます。
表計算ソフトと比較するとコストがかかりますが、正確なCO2排出量を継続的に把握するという点では、有効な選択肢の一つと言えるでしょう。
導入事例や提供機能を比較しながら、自社の規模や業種に合ったソリューションを選定することが重要です。2026年以降の目標設定や2050年カーボンニュートラル達成を見据え、継続的に運用できる仕組みを構築することが、結果的に効果的な対策につながります。

まとめ

CO2排出量の可視化は、脱炭素経営やサステナビリティ対応を進めるための重要な第一歩です。専門人材がいない環境では難しく感じられがちですが、適切なツールや支援を活用することで、継続的な取り組みは十分に実現できます。
重要なのは、最初から完璧を目指すのではなく、自社の状況に合わせて無理なく始めることです。CO2排出量を可視化することで現状を正しく把握し、具体的な施策や将来の戦略へとつなげていくことが可能になります。まずは「知る」「把握する」ことから、脱炭素への一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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資料のトピック

● 企業が環境に取り組むべき背景の整理

● CO2排出量可視化ソリューションのご紹介
 ・温室効果ガス排出量の算定にかかる⼯数を削減する導入支援サービス
 ・Scope1,2,3対応 クラウドサービス「ScopeX」

● 導入事例

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2026年2月13日公開
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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