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「IFRSとXBRLの広がりについて」

2011.04.03 株式会社オージス総研  竹政 昭利

 IFRSの特にAccounting(会計)の側面とXBRLの関係については、2011年2月号において、説明しました。
 ちなみに、2011年IFRSタクソノミ確定版が公表されたようです。

 開示のときに使用されるXBRL-FRについては、既にEDINET、TDnetをはじめ広く普及をしています。また企業内部の情報を表現するXBRL-GLについても、普及しているとは言えませんが、可能性を感じさせるものです。
 さらに、財務の数値データだけでなく、注記などもXBRLを利用する動きがあります。
 ところで、IFRSは、日本においては国際会計基準と一般的に訳され、Accounting(会計)の基準の側面が強調されがちですが、実はIFRS(International Financial Reporting Standard)をそのまま訳すると、国際財務報告基準となります。Accounting(会計)ではなく、Financial(ファイナンシャル)と言っています。
 名前からわかるように、IFRSを広義で捉えると、Accounting(会計)だけにとどまらず、Finance(ファイナンス)でもあると言えます。さらに、ERM (enterprise risk management)や内部統制などGovernance(ガバナンス)領域とも密接に関わっております。
 このようにIFRSはAccounting(会計)、Finance(ファイナンス)、Governance(ガバナンス)の領域にまたがるものですが、面白いことに、XBRLについても、この3つの領域にまたがって、利用が進んでいます。
 それでは、Accounting(会計)以外のFinance(ファイナンス)とGovernance(ガバナンス)の領域におけるXBRLの利用について見ていきます。

○Finance(ファイナンス)領域におけるXBRL利用
 米国において、コーポレートアクションのXBRL化が進んでいます。
 コーポレートアクションは、株式の配当や増資、会社合併、会社消滅、株式分割等、「企業活動」の中で特に株主に向けた活動を言います。
 コーポレートアクションの業務、システムの中心は、信託銀行(カストディ)と証券会社であり、ここでは、ISO15022、ISO20022などの標準化やシステム化が行われてきています。(日本は欧米に比較して遅れていますが。)
 しかし、欧米においても株式を発行する企業の部分については標準化、システム化が進んでおらず、ここにXBRLを利用することが検討されています。
 また、公示地価やCO2排出権取引のXBRL化についても検討されています。土地など固定資産の評価については、IFRSのFinance(ファイナンス)としての側面と関係してきます。

○Governance(ガバナンス) 領域におけるXBRL利用
 この分野でもXBRLは色々なところで利用されはじめており、ERM(Enterprise Risk Management)タクソノミや、内部統制タクソノミなども開発されています。
 さらに、OCEG(The Open Compliance & Ethics Group)のGRCなどにもXBRL利用がされています。GRCは企業のガバナンス(Governance),リスク(Risk),コンプライアンス(Compliance)を一元管理していく概念です。
 そして、WICI(World Intellectual Capital Initiative)では、自動車、電子機器、製薬など業種別のKPI (key performance indicator)の研究をしており、XBRLタクソノミについても開発をしています。

○まとめ
 このように、広義のIFRSの領域に、XBRLの利用も広がってきています。XBRLは、まだ完成した技術ではありませんが、データ自体に意味を持たせることが可能であり、他に類を見ない有用性があります。その意味で、XBRL-FRなど、開示の部分の限定された利用だけでなく、ファイナンスやガバナンス、GRC、リスク管理などの分野において、IFRSをきっかけに、システムを検討すると共に、XBRLの導入なども考えていくのが良いのではないでしょうか?

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