WEBマガジン

「BPI:ビジネスプロセスインテリジェンス(その3)」

2011.08.09 株式会社オージス総研  宗平 順己

 【まずは先月号のお詫びから】
 デモサイトについて、UserNameの@が全角になっていて、ログイン断念された方も多いと思います。
 あわせてSaaS側のバージョンアップのタイミングと重なって、データが表示されなかった方も多いかもしれません。Webマガジン掲載の翌日から正常に復しています。
 再度掲載しますので、一度ご覧になってみてください。

https://demo.ahasystems.com:8443/axel/
UserNameViewer@OsakaGas.example.com
(@を半角にしてください)
PasswordViewer

 アクセスするとダッシュボード(Flashboardと呼んでます)の画面が表示されますが、
 At a Glance
を選んでもらうとKPIの一覧をツリー構造でみることができます。
 Tier1がトップレベルですので、ここを選ぶと全部のKPIを見ることができます。
 KPIの棒や線の意味は前月号をご参照ください。

 Flashboardの画面でも、KPIツリーからでも良いですが、KPIを一つ選択してクリックするとそのトレンドを示す画面が表示されます。Forecastingを選ぶと今後の予測もみれます。
 いろいろとパラメータをいじって遊んでみてください。

*デモシステムに関する問い合わせ
 Munehira_Toshimi@ogis-ri.co.jp
 (@を半角にしてください)

【本論】
1.なぜツリー構造が必要か

 見ていただいたツリー構造では、上位のKPI(指標は)下位の指標から計算して求められるように設定されています。
 BIのKPI設定で重要なのは、このツリー構造を決めることです。
 皆さん、このような経験はありませんか?
 毎月の決算結果を見て、売り上げや費用が計画より増えているが(あるいは減っているが)その理由はすぐにはわからず、会議では調べて次月報告しますとなってしまう....
 この場合、原因が顕在化し手を打つまでに2カ月近くかかってしまうことになります。安定成長期ならいざしらず、現在のビジネスにおいて2カ月遅れは致命的です。
 これはやや極端な例かもしれませんが、1か月遅れというところは多いと思います。
 今回ご紹介しているモデルは製造ラインをターゲットにしたものですが、部門戦略がうまく実施されているかどうか、そのモニタリングをラインレベルから本部レベルまでできるようにしています。それも過去の結果だけでなく、今後の予測までして、トラブルの拡大(あるいは発生)を未然に防ごうとしています。兆候を検知していち早く翌日には手を打つというマネジメントポリシーを反映したものになっています。

2.モデル構築のプロセス

 では、このようなKPIツリーはどのように設定するのでしょうか?今回のトライアルで実施した手順は下記のとおりです。手順4まではどのようなBIツールを用いようと共通的な手順となっています。

手順1BSC「戦略マップ」による戦略の可視化
手順2「戦略マップ」からKPIの設計
手順3KPIの階層化・整合化
手順4データ項目の設計(DWHへの要求事項の抽出)
手順5ツール独特の関数などの設計・定義・登録とデータ項目へのFB
手順6各階層・役割に応じたビューの設定

今月号では手順3までの概要を説明します。

手順1:BSC「戦略マップ」による戦略の可視化

(1)戦略の方向性設定
 戦略マップ作成に先立って、戦略の方向性を下記のように設定しました。

◇第1次グローバル展開:競合は国内企業
・生産力の確保
・価格競争力の維持
・利益率の確保

◇第2次グローバル展開:競合は各国の企業
○グローバルHQ
・マーケットの特性に応じたパフォーマンス管理
・同時にブランドの統一性の維持
・地域のポートフォリオ管理 ~ グローバルでのビジネスリスクマネジメント
○日本(ローカル、東南アジア)
・高機能品が要求されるが競争も激しい
・新製品の売れ行き状況を見てダイナミックに生産量調整が必要
→マーケットに支持されないことが判明した場合には、直ちに新製品を投入するか
 一つ前のバージョンの製品を増産
・常に新製品の最初の生産拠点となるために、生産性・品質のコントロールが最初は難しく調整が常に求められる
・生産技術が安定すると、東南アジア、ならびにグローバルに展開
・旧機能製品を低価格で、新製品を従来価格以内で提供する
○欧米
・現地競合に対する機能による製品競争力の維持
・価格競争力の維持
・利益率の確保
○南米
・生産力の確保
・現地競合の低価格に対する価格競争力の維持
・利益率の確保

(2)戦略マップの作成
 上記のような方向性を前提として、HQおよび3エリアの戦略マップへの落とし込みを実施しました。戦略マップ作成にあたっては、汎用性を意識して「戦略マップ」に記載されている戦略マップのテンプレートを参照しました。
*このテンプレートについては過去の連載を復習して下さい。

手順2:戦略マップからKPIの設計

(1)各エリアレベルのKPIの設計
 各エリアの戦略マップからKPIを設定。このKPI設計にあたってもエリアレベルでは「戦略マップ」に記載されているKPIのテンプレートを参照しました。

(2)下位レイヤへの展開
 上位レイヤのKPIは事後的指標です。パフォーマンスドライバーを明らかにするためには、上位KPIをResults Chainを考慮して下位KPIに展開する必要があります。エリアレベルのKPIを設計後、先月号に示したマネジメントモデルを実装するために、下位に工場、ライン、プロセスのレイヤを設定し(計5階層)、KPIを展開しました。

手順3:KPIの階層化・整合化

(1)整合化の必要性
 手順2でResults Chainに従って、下位KPIをプロセス階層モデルに展開しました。一般的なBSCの設計ではこれで十分なのですが、この展開結果を各プロセス階層においてマネジメントできるのかというチェックをしたところ多くのところでラインレベルに工場レベルのKPIが設定されているなどの不整合が発見されました。

(2)整合化手法の確立
 このため、KPIの展開はResults Chainに従って単純に階層展開するのではなく、その指標はどの階層でみるべきなのかを同時に判断し、因果関係では上限関係であっても同一階層で管理すべきものについては、その階層内での上下へのKPIの展開を設定することとしました。このためプロセス階層については上下ではなく左右に展開する表形式を採用しました。

(3)グローバル統一指標とローカル指標の識別
 整合化のもう一つの重要な成果は、HQから生産プロセスまで展開される統一指標を決めることができたことです。
 この過程を通じて、エリア、工場単位でローカルに管理したい指標との区別が可能になりました。

 というところまでがKPIの展開方法ですが、文章のみではわかりにくいと思います。次号では図表を交えて詳しくご紹介します。

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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