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「今度こそ、”データ利活用による継続的業務改善”を実践しよう!(2)」

2012.01.17 株式会社オージス総研  藤本 正樹

 前回、過去のBI(Business Intelligence)導入時の課題として「目的が明確でなく、データ利活用全体を考えられていない」とご説明しました。今回はこの課題について、昨今のBIブームと関連付けて、もう少し考えてみたいと思います。

 「ビジネス・インテリジェンス」という用語を考案し、「BIの父」と呼ばれる元ガートナーのハワード・ドレスナー氏は、「これまで数多くの企業がBI導入に失敗してきた」とBI活用の現状を指摘しています。同氏によると、「これまでのBI導入プロジェクトの多くがBIツールの導入にばかりに目を向け、経営パフォーマンスを管理していくための全体的な仕組みの構築まで配慮してこなかったからだ」ということです。[1]

 これまでにBI導入をしてきた企業に"失敗"が多いかどうかは別として、うまく使いこなせていない、あるいは、BIの本来の意味である「企業内外の事実に基づいた膨大なデータを、体系的に蓄積・分析・加工することにより、企業の意思決定を迅速に行う」ことが出来ていない、という事例があることもまた事実です。

 翻って、昨今の状況はどうでしょうか。実は、かつてと同じ失敗を繰り返しそうな兆候が見て取れるのです。筆者や関係者がこれまでに実施した、様々なお客様へのヒアリング、あるいは、"お客様のBI導入を支援する立場の方"とのディスカッションから、以下の問題点が明らかになってきました。

データ活用方法が不明なため、データ量が肥大化する。
 前回に記載した「とりあえずのデータ収集となっている」と関連しますが、とにかくデータを集めてから、利用方法を考えるというアプローチを取るケースがあるようです。
 このアプローチでは、DWH(データウェアハウス)やデータマートの構築にコストがかかります。通常、データを分析するには、データを収集するだけではなく、データの整理も必要となります。したがって、「とにかくデータを集めて」しまうと、集めたデータを整理する必要性が生じ、結局なかなか先へ進めないということになりかねません。
 データの収集、整理についても、すべてを対象にする必要はなく、どのデータを分析するのかを明確にする必要があるでしょう。
  
長期的視野がないコスト優先の考え。
 前回に記載した「業務帳票の作成コスト(手間・時間)を削減するための代替手段としてしか利用されていない」と関連しますが、基幹システムの帳票をBIで簡単に出せるなどのコスト優先の考え方があるようです。
 そもそも、業務システム(いわゆる基幹システム等)と情報系(BI)システムで出力されるレポートは用途が異なることが殆どですが、情報系=帳票出力という考え方から、業務帳票とBIレポートの区別をつけずに単なる帳票出力システムとして扱っているケースがあります。
 誰が、何のために、このレポートを使うのか、ということを押さえた上で切り分けを実施する必要があるでしょう。
  
BIを使うべき人が使えていない。
 前回に記載した「BIを利活用する人が非常に限られている」と関連しますが、誰が使うのかということが明確になっていなく、"目的に応じて使うべき人が使う"ということが出来ていないケースがあるようです。
 やみくもにツールのユーザーを増やしても効果はありません。ユーザーの役職や立場(経営層、マネジメント層、現場担当、など)によって、見るべき内容は変わります。まずは自社の経営戦略や事業戦略に整合したデータ活用法を定めることが重要だと思われます。
  
中身ではなく見た目でBIツールを選んでいる。
 BIツールを選定する際に、ツールの本当の内容ではなく"見た目"を重視しているケースがあります。
 確かに使用するユーザーのことを考えると"見た目"は重要です(取っ付き易い、操作し易そう、など)。しかし、いかに"見た目"に優れたツールであっても、的確な目的の下で適切に使わなければ、大した効果は得られません。実際に、「現在、高価なBIツールを導入したが使いこなせていないので、入れ替えを考えている。」と仰るお客様を数多く目にします。
 誰が、何のために、このレポートを使うのか、ということを押さえた上で、"見た目"も含めてBIツールを選ぶということが必要になるでしょう。
  
BIを導入するための目的が明確になっていない。
 ここまでの問題点の原因は、(何度も繰り返しになりますが)これに集約されるでしょう。
 "データの提供"がBIの最終目的ではないのは、言うまでもありません。BIの目的は、企業の置かれた状況、今後の経営方針・事業方針などに影響されるため、様々です。その目的を明確にしないと、
  • 「本当に必要なデータは何か」が分からず、
  • いつのまにかデータの収集が目的になってしまい(手段の目的化)、
  • データの活用が出来なくなり、
  • BIツールも本来の用途にマッチしていないものを選んでしまい、
  • ユーザーニーズを満たさないBI環境を構築してしまう。
という"過去と同じ轍を踏む"ことになりかねません。
 本当に必要なものは、ビジネスニーズに対する理解であるということを今度こそ忘れてはいけないのです。

「BI導入における問題点」の整理
図1 "BI導入における問題点"の整理

 それではどうすれば良いのかということになるのですが、"前回にご説明したポイントを押さえて、BI導入に臨む"ことが重要になります。

 [ポイント](前回と同内容を再掲)
 (1)データ利活用を実施する"目的"を明確にする。
 (2)"目的"に沿ったデータ利活用のあるべき姿(To-Be)を策定する。
 (3)あるべき姿(To-Be)に向かうための現実的なステップ(Can-Be)を設定する。

 次回からは、上記ポイントを押さえた"BI導入計画"立案の具体的な方法についてご紹介していきます。

(参考文献)
[1]IDG Interactive, Inc.「BIの父が語る『従来のBI導入が失敗してきた理由』」(2011年12月21日現在)

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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