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「MESの最新動向(工場の見える化の国際対応について)(2)」
2012.05.14 株式会社オージス総研 宗平 順己
工場の見える化のために、実際にKPIを取得しようとすると、工場の操業データなどの収集に実はいろいろと課題がでてきます。そこで前回からは、この領域に対応するMESについて、グローバル経営の観点から、国際的な製品動向についてリサーチ結果をご紹介しています。
1. MES製品リサーチの実施結果
1.1 MES製品リサーチの目的
工場の現場情報を収集し、ERPなどの管理系システムに接続する重要な役割を果たすのがMES製品です。
国際化対応にあたっては、このMES製品の国際標準への準拠状況等を調査しておく必要があります。
1.2 リサーチに使用した資料
MESの標準化に関しては、MESA Internationall[1]が精力的な活動をしており、MES製品のリサーチ結果をMES Product Surveyとして発刊しています。今回はこの2010年版を資料として使用しました[2]。
1.3 MES製品の世界的な状況
表1はMES Product Survey2010に掲載されている製品の地域別の状況です。
表1.MESProductSurvey2010掲載製品
MES領域に関しては欧州からも数多く製品が提供されていることがわかります。なお、日本製品は調査対象にも含まれていません。
1.4 調査項目
MES製品の調査項目を表3に示します。第5項がISA95への準拠状況です。
表2.MESProductSurvey2010の調査項目
(3)のMESA's Strategic Initiativesについては、生産領域における次の6つの戦略的な取り組みへの対応状況を調べています。
- Lean Manufacturing
- Quality and Regulatory Compliance
- Product Lifecycle Management (PLM)
- Real Time Enterprise
- Asset Performance Management
- Sustainable Manufacturing
1.5 調査結果
有償のレポートであるため詳細を記載することはできませんが、主な特徴をあげると以下の3点になります。
(1) | 製品の対象としては、全製造業を対象としており、連続系はやや少ないものの、バッチ系、組立系のどのプロセスにも対応している。ただし、製品によって得手不得手はある。 |
(2) | ISA-95の生産オペレーションについてはほぼどの製品も対応している。 |
(3) | SOA対応については、この2年で急速に対応が進み、ほぼ9割の製品が、機能の一部をサービスとして他システムから利用できるようにしてある他、他のサービスを取り込むこともできるようになっている。 |
2.まとめ
今回の調査の目的は、「世界的に見て何が常識であるか」を把握するためのものでした。
異常な円高により製造業は否応なしにグローバル化への対応を迫られています。しかも今回のグローバル化は従来の海外進出とは異なり、海外移転や現地生産現地販売というグローバル企業への転換といった内容です。このことはすなわち従来のように日本方式を海外へ持っていくという発想ではなく、グローバルスタンダードの環境に自らを置くということになると考えられます。
グローバル企業となるからには、生産面では世界各地の製造拠点をコントロールすることとなり、そのためにはグローバルなサポート体制を有するソフトウェアベンダーの製品を利用することになりそうです。
このような考え方のもと、海外のMES製品の仕様を調査したわけですが、表2に示す項目ができていて当たり前という事実、そして日本の製品は調査対象にもなっていないという事実を知ることができました。
また、日本国内ではなかなかSOAの実績が増えてこないのですが、MESの製品でSOA対応が一般化しているという事実も衝撃的です。
私見ではあるが、残念ながら日本のSIerは先週ご紹介した階層モデルのレベル4(=MRP)以上を得意とするところは多いものの、レベル3以下に対応できるところは少ない。現時点で海外とのギャップがこれほどまでに大きくなっている以上、日本の独自製品を使うのではなく、海外製品をいかにうまく選択し、グローバルな生産マネジメントシステムを構築するという方向を目指すしかないのではないかと感じています。
今後さらに調査を進め、MES適用の課題を明らかにし、ご報告します。
(参考文献)
[1] | http://www.mesa.org/en/index.asp |
[2] | http://www.mescc.com/mes-report.html |
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