WEBマガジン
「スマートグリッド社会成熟度モデル Part3 (第1回)」
2012.05.14 株式会社オージス総研 乾 昌弘
1. はじめに
平成21年度にスマートグリッド社会成熟度モデルを作成し、平成22年度より本Webマガジンで連載いたしております。多くの方々のご愛読いただき有難うございます。
この間に福島県の原発事故が起きるなど、とくに電力に関わる環境は大きく変わっております。当初、成熟度モデルを作成した時は、このモデルを実際に活用できるのはいつかわかりませんでした。しかしその後、電力会社が時間帯別料金を採用したり、国の環境会議がHEMSの導入に対する補助を決めたりと、この成熟度モデルは現実味を帯びてまいりました。
このような背景により、「スマートグリッド社会成熟度モデルPart3」と名付けて、新シリーズを始めたいと思いますので、よろしく御願いします。
前シリーズで説明した内容を再整理しながら進めたいと思います。またモデル作成当時は、スマートグリッドという名称ぐらいでしたが、その後、スマートシティ、スマートエネルギーなど多くの言葉が生まれました。本テーマは、スマートグリッドという名称が最適かどうかわかりませんが、名称を変更すると混乱が起きるため、「スマートグリッド社会成熟度モデル」のままで解説したいと思います。
2.スマートグリッド社会成熟度モデルの対象地域の絞り込み
日本は米国などと事情が異なり、電力系統自体は安定しており、需要サイドでスマートグリッド化することが重要となります。需要サイドの状況は、平成22年4月より施行された省エネ法の改正により、工場やフランチャイズ店を含む店舗に対しては、規制が厳しくなりました。一方、家庭部門に関しては、エネルギー消費量が年々増加傾向にあるにもかかわらず特に規制がなく、エコポイントなどを付与して省エネを促進しているというのが実態です。従って、特に住宅地域を対象にして目標とする内容の検討を行いました。原発事故後は住宅地域での電力消費量のピークカットが大きな課題となっていることから、ますます家庭部門でのスマートグリッド化が、重要となっています。
3.スマートグリッド社会成熟度モデルの役割
図1にモデルの役割を示します。対象となる住宅地域の現状からスマートグリッド社会は一機に目指せないため、5段階に分けて次のステップを目指すことになります。レベルNでAsIsとToBeが設定されており、ToBeの内容が、レベルN+1でAsIsの内容となります。
また、住民の努力だけではレベルアップが図れないため、それぞれのレベルで必要な施策・方策が実施される必要があります。
図1 スマートグリッド社会成熟度モデルの役割
4.スマートグリッド社会成熟度の基本的な考え方
それではまず、基本的な考え方から述べたいと思います。スマートグリッドをシステムとして捉えると、ハードウェア、ソフトウェア、(ハードソフトの)運用、ユーザインタフェイスからなると考えることができます。これにユーザ自身を含めたの5つを視点と呼ぶことにします。そして「需要サイドが重要」ということを考慮に入れて評価項目を設定しました。
このシステムの5つの視点を検討した結果、具体的な視点は下記になりました。
表 1 5つの視点
この続きは、次号で行います。
参考文献
[1] | 乾昌弘、宗平順己「スマートグリッド社会成熟度モデルの役割と各レベルに達するための施策・方策」経営情報学会2012年春季全国研究発表大会、2012年5月 |
*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。
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