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「UXを考える その2 経験価値からUXを考える」

2013.08.09 株式会社オージス総研  宗平 順己

 UXは使い勝手ではなく、そのシステムを使って提供されているサービスや企業そのものの価値にも大きな影響を及ぼす重要な要素であることであることを前回述べました。
 その中心となるのが「経験価値」というもので、単に製品やサービスの機能ではなく、それを使用することに寄って得られる新しい「何か」が差異化要因となっているというものです。
 良く使われる例として「スターバックス」があげられます。スターバックスは、そこのコーヒーがおいしいからということで行くのではなく、スターバックスでコーヒーを買う、飲むことによって得られるものに皆さんは価値を見出しているということです。
 神戸大学の石井淳蔵先生は機能や価格を中心としたマーケティングから、顧客インサイトを起点とした経験価値マーケティングへシフトすべしとして、その特徴を下記の様に整理されています。

「経験価値マーケティング」4つの特徴
図1 「経験価値マーケティング」4つの特徴
(BtoBでは消費者を顧客企業、ユーザに読み替える:宗平注)

 そして、従来型のマーケティングの課題を以下の様に整理されています。
「従来のマーケティングの基本的な考え方である4P(Product、Price、Place、Promotion)は基本的にはエンジニアリング中心型、ロジスティックス中心型である。顧客に焦点を当てるどころか、製品のマーケティングに焦点を当てた、セールス志向そのままである。」
 以上出典:http://www.president.co.jp/pre/backnumber/2006/20060130/1063
 図の中にある「消費者(顧客)インサイト」を起点とするということが私は非常に重要であると考えています。生産側の思惑で、市場のセグメンテーションやプロモーションを考えてしまって、見事に失敗しているケースは皆さんも思い当たるもが多くあると思います。本当に顧客側の視点にたって、物事を考えるということができていません。かつて、携帯が広まった際に、事業者側が想像しなかったようなペースで普及し、使われるようになったということがあります。供給側の視点だけでは、予測できないことは既に実証済みです。
 一方、iPhoneの普及は、見事にAppleの思惑にはまっているのですが、皆それを心地よく感じています。UXだけでなく、それを使って得られる新たな経験が、強力な推進力となっているわけです。

 このように経験価値を高めるように顧客経験をデザインするということは実は非常に多くの実例があり、有効性が証明されているわけです。
 このような状況と、一般に使われる情報システムとを比較すると大きなギャップを感じずにいられません。
 このギャップを埋めるのが、実はデザイン思考というアプローチです。次号ではデザイン思考のアプローチと経験価値マネジメントの類似性についてご紹介していきます。

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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