WEBマガジン

「ビジネスを解析する手法とその比較(下)」

2014.10.16 株式会社オージス総研  乾 昌弘

前号の続きです。

5. 行動観察

5-1.行動観察の概要

行動観察という言葉は一般的なものですが、大阪ガス行動観察研究所(株)では以下の説明がされています。
「人間の行動のほとんどは『無意識』に行われています。そのため、普段の生活でのニーズや、仕事での自分のスキルについて、アンケートインタビューといった従来の調査手法では引き出すことは困難です。 『行動観察』は、フィールドでの人の行動を幅広い視点で詳細に観察し、エスノグラフィー人間工学心理学など人間に関するアカデミックな知見をもとに解釈することで、言語化されていないニーズやリスク、スキルを抽出することができます。そして、得られた気づき、洞察に基づくソリューションを提案し、ビジネスに活用する手法です。」

つまり、顕在化した情報はアンケートやインタビューで抽出できるが、潜在的な慣習や行動特性は、行動観察をしないと抽出することができないのです。
御参考:大阪ガス行動観察研究所(株)Webサイトhttp://www.kansatsu.jp/

行動観察の領域
図5.1 行動観察の領域

行動観察のプロセス域
図5.2 行動観察のプロセス

5-2.事例

(1)あるドラッグストアでは、平日は高級シャンプーが売れるのですが、土日祝は安価な普及品がよく売れます。購買層は、同じ地域の30歳の女性です。理由がわからないので行動観察。平日は一人で来店して自分の好みのものを購入。土日祝は夫や家族と来店して、普及品を購入することがわかりました。
(2)スーパー銭湯の来場者の飲食に関する売上を増やすことが課題でした。そこで行動観察。観察者の気付きはたくさんあり、その中の一つが「生ビールのポスターの位置」でした。貼ってあった場所は飲食のカウンターの横。サウナの中のテレビの横に貼り替えたところビールの売り上げは59%アップしました。

参考文献:Webマガジン 「IT分野における行動観察の適用 ~その1~」

6. ビジネスを解析する手法の比較

手法の比較図
図6.1 手法の比較図

(1)以上の4つの手法を比較してみましょう。BRMSは「人」から顕在化した知識、ルールを抽出し、「コンピュータ」に蓄積されたデータで検証します。それに対して、行動観察は「人」の潜在的な行動パターン、ルールを見つけ出します。

(2)数理計画法は、「人」から知識、ルールをきき出して形式化をして、データで検証します。BRMSは解法もルール化するために「経験的解法」といえます。それに対して、数理計画法は「論理的解法」ということができます。
(3)行動観察は「人」が意識していない行動や習慣を観察して、ルールを見つけます。一方、統計解析は、「コンピュータ」に蓄積されたデータを解析して、ルールを見つけます。
(4)行動観察と統計解析の関係はいろいろなパターンがあります。例えば、統計解析は相関関係を見つけるのが得意なのに対して、行動観察は因果関係を見つけるのが得意です。また、行動観察は多人数を対象にするのが難しいため仮説を設定して、統計解析で実証するという方法もあります。
それぞれの特徴を活かして手法を組み合わせれば、より効果のある結果を導くことができると考えています。

参考文献:Webマガジン 「行動観察とビッグデータ」

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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