事例

組み込みソフトウェア開発品質改善事例
株式会社デュプロ様

ソフトウェア設計の手戻り工数の50%削減を達成
オージス総研の伴走型支援で課題の「自分ゴト化」を促進、設計品質が飛躍的に改善

新聞広告丁合機、製本機器などを開発するデュプロ様は、長年の課題であった、ソフトウェア設計の手戻り工数削減を目指し、ソフトウェア品質改善コンサルティングをオージス総研に依頼しました。オージス総研は、プロジェクト診断を通じ、デュプロ様の開発現場がもつ強み・弱みを把握し、取り組むべき課題を明確化。そのうえで、「ソフトウェアの共通部品の開発」、「設計書作成のガイドライン作成」、「設計改善検討のトレーニング実施」を具体的な計画として立案し、実行しました。オージス総研の支援終了後も、デュプロ様単独で、レビューやプロセス整備などの改善活動を継続された結果、手戻り工数の半減を実現しました。

長年の懸案であったソフトウェア開発での手戻り工数削減に挑む

株式会社デュプロ様は、創業60年を超える、新聞広告丁合機、製本機器、インクジェット印刷機など、プリンティング・ドキュメンテーションの分野で活躍する製品を開発するメーカーです。自社で開発から生産、カスタマーサポート、営業までを一貫して担っており、世界約170ヵ国以上でビジネスを展開しています。

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開発本部  事業戦略部  デジタル戦略グループ  シニアスーパーバイザー 鈴木様は、紙を中心とした3つの市場に注力していると語ります。
「1つ目は国内の新聞市場です。新聞やチラシなど新聞販売に関わる機械全般を製造しています。2つ目は製本、カタログ製作などの印刷商材市場です。3つ目は学校やオフィス内で使われる小型の印刷機市場です。これまではヒット商品を中心に取り組んできましたが、これからは、紙に新しい価値を見出すため、特殊な表面加工をほどこした紙製品の開発など、お客様の付加価値を高めるような製品づくりに挑戦しています」

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<特殊な表面加工をほどこした紙製品>

デュプロ様では、製品のソフトウェア品質に長年課題を抱えていました。設計工程での問題が評価工程で発見されることが多くなり、その結果手戻り工数が増え、人員の追加投入や開発期間の超過につながっていました。

7019_yakou.JPGまた、ソフトウェア開発の属人化の問題も抱えていました。
開発本部 第2開発部 ソフトウェア設計グループ 八高様は当時を振り返ります。
「プログラムを開発した本人以外が、仕様や設計方針を理解するのが難しいという問題がありました。市場の要求がどんどん高まっていき、製品の高速化や高精度化、操作性の高さなどが求められるようになり、その要求に応えるためにモデルチェンジに取り組んできました。ソフトウェアもその都度少しずつ手を入れていくのですが、修正のかけ方が人によって違っているため、理解するのが難しいプログラム構造になっていました。前任者から引き継ぎ、後任が手を加え、それをまた別の開発者が修正していくことで、設計当時の経緯がわからない状態でした」

デュプロ様は、これらの課題に対して独力で品質改善活動に継続して取り組まれ、一定の成果をあげていました。しかし十分とは言えず、自社で進めるには限界を感じ、外部から知見を得るという結論に至りました。

自己分析から段階的に進めたソフトウェア品質改善プロジェクト

鈴木様は、品質改善活動を支援するコンサルタントとしてオージス総研を選定した理由を次のように挙げました。
「オージス総研は『自分たちの自己分析から始めましょう』と提案してくれました。課題をしっかりと分析し、本当に必要な対策を見つけてから取り組むというアプローチが新鮮でした。他社での実践事例も豊富で、信頼できると思いました」

品質改善プロジェクトは大きく三段階で進みました。


1. プロジェクト診断による現状と課題の明確化

一段階目は、現状把握と課題を明確化するプロジェクト診断の実施です。オージス総研は、「ソースコード品質」、「開発プロセス」、「ソフトウェア担当者のスキル」の3つの観点から組織の傾向を把握することに加え、真の課題をデュプロ様自身で発見するためのグループワークを行いました。

「ソースコード品質」は、3プロジェクトを対象にしたメトリクス測定を実施。「開発プロセス」「ソフトウェア担当者のスキル」は、アンケートやインタビューを実施しました。そして、これら3つの結果から、デュプロ様がもつ組織的な強みや弱みの傾向を明らかにしました。

観点

主な傾向(一部)

ソースコード品質

  • ・グローバル変数による結合や相互依存関係により、保守、再利用が難しい
  • ・保守時に読み解きづらく、再利用が難しい

開発プロセス

  • ・類似機能でも設計・実装が製品ごとに異なり、設計の理解が難しい
  • ・手戻り対応にかかる時間の割合が高く、ルールを育てるより守る意識が強い

担当者のスキル

  • ・実装スキルに比べ、分析・設計など上流工程スキルが低め
  • ・組織的な学習機会が少ない

 

次に、改善活動を主導するソフトウェア担当者やリーダーの方々を集めた"自分たちの課題を発見する"グループワークを行いました。改善活動は組織に属する人の理解がないとつまずくことが多いため、デュプロ様のもつ組織的な傾向を生み出す真の構造を、デュプロ様自身がつかみ、課題を導き出すために、グループワークの形を取りました。

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開発本部 第2開発部 ソフトウェア設計グループ シニアエンジニア 石黒様は当時を振り返ります。「『自分たちで自分たちの課題を見つけなさい』というお題に対して、因果ループ図を描きながら分析していったことで、方向性が定まったと思います。オージス総研が技術的な引き出しをあたえてくれたことで、技術要素の課題が明らかになり、自らのやるべきことが明確になりました」

グループワークの結果をもとに、客観的診断結果とオージス総研の知見を総合して、因果ループ図のまとめを行いました。そして、その因果関係を念頭において取り組むべき課題を抽出し、それに対する改善活動案を提示しました。

観点

課題(一部)

改善活動案

ソースコード品質

  • ・モジュール性を考慮した要素分割
  • ・ソースコード量の削減

ソフトウェアの共通部品の開発

開発プロセス

  • ・設計方針の明示や設計の進め方、成果物などの統一
  • ・改善プロセスの導入

設計書作成のガイドライン作成

担当者のスキル

  • ・設計の基礎知識の組織的な習得
  • ・漸進的な設計改善方法を身に付ける

設計改善検討のトレーニング実施
(設計を診る目の育成)

 


2. コンサルタント支援下での改善活動の推進

続く二段階目は、オージス総研支援による改善活動の実施です。プロジェクト診断の結果をもとに、改善活動の具体的な計画として、①ソフトウェアの共通部品の開発、②設計書作成のガイドライン作成、③設計改善検討のトレーニング実施、の3つの計画をたて取り組んでいきました。

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「実プロジェクトにあてはめて訓練していきました。コンポーネント設計や方式設計だけでなく、コーディング規約なども含め、技術を、ワークショップを通して学びながら進めていきました。技術を習っておしまいにはせず、具体的な成果を出すためにベースとなる構造設計を行い、それが今でも使われており、さまざまな製品に水平展開されています」と石黒様。

「オージス総研から直接教育を受けた方の技術習得は進んでいましたが、それ以外のメンバーへ、そのスキルや知見をどう展開していくかが定まっていませんでした。そこで、新規に設計を担当する際には、担当者をその場に呼んで、レビューをしたり、逆にレビューされたりなど、ワークショップに参加する人や教育する人をいろいろと変えていくことで、社内展開するきっかけを意識的につくっていきました」と八高様は補足します。

「オージス総研は、報告書を作成しマネジメント層へ定期的に進捗報告してくれていました。それ以外にも、ホワイトボードなどによく書いてくれたことが印象に残っています。それはわかりやすく、みんながそこに目がいくので、共通理解や議論を深めるのにとても役立ちました」と石黒様。


3. デュプロ様単独による改善活動の継続

約7ヶ月のコンサルティング支援を経た後、三段階目として、デュプロ様単独で改善活動を継続して実践しました。手戻りに対して1件ごとに原因分析を行い、再発防止に粘り強く取り組みました。その中で、開発プロセスがさらに整備され、チェックリストや規約の整備も進んでいきました。また大きな課題に対しては、ワーキングを立ち上げて取り組まれました。

「コンサルティングを受ける中で開発プロセスが整備されたことがとてもよかったと感じています。コーディング規約をつくっても守られない、見てくれないという悩みに対して、『規約を一枚の紙に収まる内容にし、それを各自のデスクに貼ればよいのです』と大胆にアドバイスしてくれました。これはとても新鮮で驚きであり今でも実践しています。一枚に収めようとすることで、不要なものが削られ、重要な部分だけが残るため、皆が守るようになりました。さらに、貼ることでメンバーからのフィードバックも活発になり、レビューする頻度が高まったと思います」と石黒様。

手戻り工数が50%減少、プログラムの理解も容易に

品質改善に取り組んで3年が経過した頃、改善活動の成果について、石黒様から喜びの声があがりました。
「品質改善プロジェクトの開始から3年後に、手戻りが50%削減しており、目に見える形での大きな成果に驚きました。オージス総研のコンサルティングを通して、『機能や責務ごとにプログラムを分けてつくる』という設計方針が社内の共通認識として定着し、飛躍的な品質向上につながりました。ソフトウェアを部品化し再利用を可能とする『共通部品化』を進めたことで、複数の製品で共通利用可能となり、属人化解消にもつながっています」

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開発本部 第1開発部 ソフトウェア設計グループ 近藤様は、プログラムをより容易に理解できるようになったことを実感しています。
「改善活動が始まった時は育児休暇中で現場を離れていました。復職し現場に戻ってくると、設計方針や方法が大きく変わっており、最初は戸惑いました。しかし、プロジェクト参画メンバーが、設計方針を丁寧に説明してくれたことでキャッチアップすることができました。さらに、自分でもメンバーが作成した設計書と実装されたソースコードを何度も見比べることで理解を深めていくこともできました。以前は、プログラムはソースコードだけで、ソースコードを自ら読み取る力が必要でしたが、設計書があるおかげで、ソースコードとのつながりもスムーズに理解することができました。また、新機種のソースコードを書く際、わからないところは何度も聞いて、レビューしてもらうことを繰り返すうちに設計方針や方法について腑に落ちる瞬間がありました」

デュプロ様は、オージス総研の技術力、「気づき」を引き出す工夫を高く評価しています。

「設計の方針、規約、品質改善のテクニックを学ぶ貴重な機会になりました。オージス総研の進め方は、『自分たちで考えよ』というスタイルで、当社の不足している部分を補いながら一緒に進めてくれました。議論が行き詰まった時には、そっと軌道修正してくれました。参画メンバーが『自分ゴト』として取り組み、社内に展開したからこそ、現在でも改善活動が継続できています。毎週金曜日夕方にはリーダークラスが集まり、なぜなぜ分析を行うなど意見交換も活発です。当社だけで改善するのは難しかったと感じており、オージス総研に感謝しています」と石黒様。

さらなる品質向上と開発のスピードアップの両立を目指して

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開発本部 第2開発部 ソフトウェア設計グループ グループリーダー 高橋様は、今後も継続的な品質改善活動が重要だと語ります。

「設計やソースコードレベルでの手戻りは減ってきたので、さらなる削減を進めるとともに、これまでの活動が廃れないよう継続しつづけることも大事です。さらには、仕様通りに動作しないプログラムの検証と対策も講じていく必要があります」

スキルの継承や新しい技術への挑戦も課題だと八高様は語ります。「品質を維持しつづけることも大事であり、新しい世代への継承を想定し、その設計が正しいかどうかを判断できる人材の育成が必要だと思っています。また、新技術も次々とでてきているので、そうした技術を活用して、新製品の市場投入までの開発のスピードアップの仕組みづくりにも挑戦していきたいです」

鈴木様は、ビジネス視点においてお客様のさらなる付加価値創出に貢献したいと抱負を述べました。
IoTで得られたデータとの連携などにおいて、ソフトウェアの重要性が益々高まっており、DX実現に向け新たな分野に取り組んでいます。オージス総研には今後も期待しています」

<プロジェクトを支援したオージス総研担当者の声>


デュプロ様は問題意識が高く、プロジェクト参画メンバーが楽しそうに熱心に取り組んでいた姿が印象的でした。大きな成果につながったことを非常に嬉しく感じています。

私たちには「現場の方々の力で、現場をより良くして欲しい」という願いがあります。今回のデュプロ様の事例は、その理想的な展開だと思います。組み込みソフトウェア開発の現場には、ポテンシャルはあるが、それを出し切れない現場がたくさんあります。そしてソフトウェアの力は今後どんどん重要になっていきます。ソフトウェアの力を企業の強みにしていきたいというのが当社の思いであり、今後もお客様自身で課題が解決できるような提案や支援に取り組んでまいります。

お客様プロフィール

株式会社デュプロ

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創業60年を超える、新聞広告丁合機、製本機器、インクジェット印刷機などを開発するメーカー。世界170ヵ国以上でビジネスを展開し、自社で開発・生産から営業・カスタマーサポートまでを担っている。紙を中心にお客様の付加価値を高める製品づくりに挑戦している。

※この記事に記載されている社名および製品名は、各社の商標または登録商標です。
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は取材当時のものです(2024年2月)。また、予告なく変更される場合がありますので、ご了承ください。

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