GHG排出量の計算とは?基本の考え方と具体的な算出方法を解説
脱炭素やサステナビリティへの関心が高まる中、日本企業にとってGHG排出量の計算は重要な経営テーマとなっています。環境への配慮は単なる社会貢献ではなく、ESG評価※やグローバル市場での競争力にも関わる指標です。本記事では、GHG排出量計算の基本的な考え方から具体的な算出方法、実務上の課題と対策までをわかりやすく説明します。
※ESG評価...環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの観点から企業や団体を評価すること
GHG(温室効果ガス)とは
GHGとは「Greenhouse Gas」の略で、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを指します。二酸化炭素(CO2)をはじめとするさまざまなガスが該当します。これらは自動車輸送の燃料消費、工場設備の稼働、電気の使用、廃棄物の処理など、さまざまな日常の事業活動の中で発生しています。
温室効果ガスは種類ごとに温暖化係数が定められており、国際的な基準に基づく分類が行われています。組織や事業単位での排出量を把握する際には、各ガスをCO2換算し、合計することが一般的です。この考え方は、先進国のみに目標を義務付けた1997年の京都議定書の採択以降、国際社会で広く用いられてきました。
削減対象となる温室効果ガスとは
削減対象となる主な温室効果ガスには、CO2、メタン、一酸化二窒素、代替フロン等が含まれます。削減対象となるガスは、自社で排出するだけでなく、サプライチェーンが排出する分も対象となります。
※参考 : 算定方法・排出係数一覧(環境省)
https://policies.env.go.jp/earth/ghg-santeikohyo/calc.html(外部サイト)
GHG排出量が重視されるようになった背景
GHG排出量の計算が重視されるようになった背景には、国際的な合意があります。
2016年に発効したパリ協定では、各国共通の長期目標として、「世界的な平均気温上昇を産業革命以前と比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求すること」が目標として定められました。
さらに日本は、2020年10月に、「2050年温室効果ガス排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)」を目標に掲げています。
環境省の発表によると、2023年度の日本の温室効果ガス排出量は約10億1,700万トンとなり、減少傾向を維持しています。しかし、カーボンニュートラルを達成するには、さらなる削減努力が必要です。そのため、日本企業には、より高度な可視化と分析が求められています。
※参考 : 2023年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量について
https://www.env.go.jp/press/press_04797.html(外部サイト)
さらに、省エネ法や地球温暖化対策推進法といった法律により、特定事業者には温室効果ガス排出量の算定と報告義務が課されています。エネルギー使用量が一定条件を超える組織は、排出量を算出し国へ登録・報告を行う必要があります。これは企業活動に直接関わる制度であり、経営に関わる重要な事項です。
CO2削減に向けた国内における制度・環境変化
・省エネ法・地球温暖化対策推進法(温対法)
エネルギー使用量1,500kl/年以上の企業に対して企業の温室効果ガス排出量の算定と 報告を義務化し、世間に公表できるようにした法律。
・サステナビリティ開示
プライム上場企業にサステナビリティ開示を制定する取り組み。サステナビリティ基準委員会が 企業規模に応じて2027年3月期より適用義務化。
・GX推進法改正案
二酸化炭素(CO2)排出量が、年10万トン以上の企業に排出量取引への参加を義務付けし、2026年度より鉄鋼会社など300~400社を対象に制度運用開始
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なぜGHG排出量を計算する必要があるのか
GHG排出量を計算する目的は、排出量を可視化することで、自らの事業活動における環境負荷の源を特定し、改善のステップを明確することです。これはサステナブルな経営を実現するための第一歩です。
また、投資家や消費者が、企業のESG方針やサステナビリティへの取り組みを重視する場合、排出量を開示していると効果的な指標となるでしょう。企業の透明性を示す重要な指標であり、グリーン戦略の信頼性にも直結します。正確なデータに基づく評価は、ブランド価値の向上や新たなビジネス機会の創出というメリットにもつながります。
GHG排出量の算出
GHG排出量の基本式は非常にシンプルです。排出量は「活動量 × 排出原単位」で算出します。
活動量とは、電気使用量、燃料消費量、原材料購入量、廃棄物処理量など、事業活動に伴う数値データを指します。これに国や各種基準で定められた排出係数を用いることで、排出量を求めます。
実務では、Scope1、Scope2、Scope3の3つに分けて計算するのが一般的です。Scope1は自社で直接発生する排出、Scope2は購入した電気などに伴う間接排出、Scope3はサプライヤーや他社を含むサプライチェーン全体の排出を指します。
排出係数と排出量計算例
排出係数とは、単位活動量あたりにどれだけのGHGが発生するかを示す数値です。
環境省が公表している算定方法・排出係数一覧ページを参考にすることで、最新の基準に基づいた計算が可能です。
例えば、灯油を10kl使用していたとします。
その場合の係数は、2026年2月時点では係数が2.50です。
灯油の消費量:10 kl ×液体化石燃料 灯油の排出係数: 2.50 tCO2/kl = 25 tCO2
という計算になります。
※参考 : 算定方法・排出係数一覧(環境省)
https://policies.env.go.jp/earth/ghg-santeikohyo/calc.html(外部サイト)
ただし、排出係数は再生可能エネルギーの導入状況や電源構成の変化により変わる場合があります。そのため、毎年度の更新情報を確認しながら用いることが重要です。
GHG排出量計算の課題と対策
実際にGHG排出量の計算を行う際には、いくつかの課題があります。
まずは、「どの部署が・何を・どの程度」エネルギーを消費しているかの把握・管理や、社内協力体制を確立させることが第一の難関でしょう。
社内の先述した排出係数は年度ごとに変化する可能性があり、毎年の確認が必要です。
特にScope3では、原材料の調達から販売、廃棄に至るまでの過程が複雑であり、他社やサプライヤーとの連携が不可欠です。データの収集や分類、分析には専門的な知識と多くの手順が必要となります。
また、各部門やカテゴリ別にデータ形式が異なる場合、計算や比較が難しくなることもあります。そのため、専用のソリューションサービス導入を検討する企業が増えています。これらを利用することで、効率的に可視化を行い、継続的な改善プロセスを構築することが可能となるでしょう。
まとめ : GHG排出量を正しく計算し、脱炭素経営を加速しよう
GHG排出量の計算は、地球温暖化対策に取り組む上で欠かせない基盤です。法律対応や開示義務への備えだけでなく、自社の環境リスクを把握し、持続可能な事業を目指すための重要なステップでもあります。
基本式に基づく算出方法を理解し、Scopeごとに整理しながら正確なデータを蓄積することで、脱炭素経営は現実的なものになります。まずはScope1、Scope2といった自社の活動量を把握し、小さなステップから始めてみてはいかがでしょうか。

資料のトピック
● 企業が環境に取り組むべき背景の整理
● CO2排出量可視化ソリューションのご紹介
・GHG(温室効果ガス)排出量の算定にかかる⼯数を削減する導入支援サービス
・Scope1,2,3対応 クラウドサービス「ScopeX」
● 導入事例
2026年3月11日公開
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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クラウドサービス「ScopeX」と算定テンプレートを利用することで、算定工数を削減します。
