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「RPAは業務改善の救世主となるか?」

2017.09.15 株式会社オージス総研  小山 孝司

1. RPAとは

最近RPA (Robotic Process Automation) という言葉をよく耳にするようになりました。簡単に言うと、パソコンに向かって作業をしている人の代わりに、ロボット(ソフトウェアでできている)が自動的に作業を行ってくれるというものです。例えば、社内システムの出力データを表計算ソフトに取り込み、見やすいグラフを作成したうえで、ワープロソフトに貼り付けて報告書を作成する(実際にはもっと複雑)などが簡単に実現できるそうです。もちろん、ロボットツールの導入と作業を覚え込ませ(プログラミングに相当)、検証することは必要ですが、比較的簡単に取り組めそうでなかなか魅力的です。

RPAという言葉は使っていませんが、その原型ともいえる概念やツールはWeb EDIが盛んになった頃に既に登場しています。調達業務において、各社が異なるWeb EDIを調達先に使わせるためにマルチ端末現象が起き、これに対応するためにWeb EDIと社内システムをつないで入力、出力、転記作業を自動化するWeb EDI自動化ツールが開発されました。RPAは対象領域が一般的なホワイトカラーの業務に拡がり、一躍脚光を浴びているのだと思います。

RPAにはレベルがあり、人が教えた通りに動作する、教えたルールに基づき判断する、蓄積した情報から推論をする、という風にだんだん賢くなるそうです。この辺りの詳細は巷の情報にお任せしますが、具体的な業務を想定したときRPAの最初のレベルでも、ダイレクトに扱え、転記等が可能なデータと、領収証などの証票をスキャンしたデータなど比較のためにはOCR認識処理が必要なものとがあります。証憑を扱うことの多い経理業務のBPOなどでは後者の技術は必須になります。

2. RPAの手作業自動化の効果は大きい

RPAは、業務改善などによりシステム化が進んだ中でも、最後まで手作業で残る部分を自動化しようとするものですから、うまく適用できれば人員をロボットで置きかえることができ、人員不足の解消、人員の高付加価値業務へのシフト、人員削減などの効果が非常に大きいと考えられます。

3. 業務可視化がRPA導入の前提

しかしながら、業務分析してみると、RPA化した現行業務の必要性が実は低く、廃止対象になるということがあるかもしれません。この場合は、RPA化の作業が無駄になります。このようなケースを防ぎ、よりRPAの効果を出すためには、RPA導入の前に、対象業務の目的や必要性、かかっているコスト、生み出す価値などを分析するために「業務可視化」や「業務棚卸し」を行うことを強くお勧めします。

4. 業務改革が必要になる場合もある

一方、顧客の嗜好は変化し、世の中のIT技術も日進月歩です。現行のビジネスおよびそれを支える業務プロセスが時代に合わなくなる可能性があります。そのような場合には、業務改革レベルの抜本的な業務プロセスの見直しが必要になります。その際には、顧客に提供する価値とそれを実現するための業務プロセス(施策の連鎖)およびそれを担う情報システムの因果関係を整理することのできる「BSC戦略マップ」が役に立ちます。また、顧客提供価値そのもの(サービスや製品)を発想する手段として「サービスデザイン思考」は有効です。

5. 結論

RPAは、このような業務改革、業務改善を行っても残る手作業を自動化する手段として非常に有望と考えます。ただし、業務の可視化がRPA導入の前提となります。

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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