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「IFRS対応でシステムに手を入れるなら」

2011.01.03 株式会社オージス総研  伊藤 泰子

1.IFRS対応のためのシステム変更

 6月発行の本メルマガでも紹介しましたが、今年(2011年)4月に金融庁から国際会計月基準に関する誤解という文章が発表されています。
 その中に
 ・全面的なITシステムの見直しが必要か?
 という項目がありました。

 具体的には「IFRSになると、ITシステムを含め、業務プロセス全般を見直さなければならない」という誤解に対して、「既存システムの全面的な見直しは、必ずしも必要ではない」と回答しています。

 確かに2012年に判断されるのは連結ベースの財務諸表を強制適用するかどうかという点ですので、どこからIFRS対応のためのデータを取得してくるのか、その後の修正仕訳を連結決算でどう入れるのかによって、必ずしも連結決算システム以外については手を入れないという選択肢もあると思います。

 ただ、IFRSに絡むデータ収集を行うために、システム変更を考えるのであれば、同時に(場合によっては事前に)検討しても良いキーワードが二つあります。

 1つ目はBusiness Intelligence(以下BI)。企業内に散在する膨大なデータを迅速に集計、分析し、経営判断に活かすビジネス データを創り出すことがBIには不可欠ですが、データの調査/集約という作業については、IFRS対応と重なります。

 2つ目は電子帳簿。国税庁のホームページに電子帳票システムを利用している場合の申請事例で承認される場合と承認されない場合の事例が載っており、明細の遡りについて明確な規定が出されています。どうも昨年あたりに整備された部分のようですが、こちらも伝票の元になる明細データの調査/保存という作業がIFRS対応と重なってくる事が考えられます。

検討のポイント

 IFRS対応と合わせて検討する項目として2つのキーワードをあげましたが、検討するにあたっての要件整理の方法は異なるかと考えています。電子帳簿については、特定の目的があって、どのようなシステムを実現するのかの要件を整理したのち、対応という事になるかと思いますが、BIの場合、全社共通システムとして整備したいということ自体が要件となり、なんでもできるように・・・というところからのスタートになる場合があります。
 その場合には、現在、BI(広義にデータ活用ととらえて)がどのレベルにあり、どのレベルを目指すのかを、プロジェクトおよび関係者で共有する事が大切です。その上で、どういうステップで最終目的を達成するのか、データ利用の範囲はどこで、どういう利用者が考えられるのか?という検討につなげる必要があります。
 例えば、BIでの検討ステップの1つとして、個別にシステムを構築するというよりは、どのBIツールを使うか選定するという物がありますが、BIツール毎にやはり特徴があり、導入の段階、最終目的、利用の仕方が明確でないと、正しいツールは選択できません。サービスレベルをどうするのか?運用をどのように考えるのか?その他の検討項目についても同様です。
 データ活用のレベルとはどのようなものがあるか一例を挙げますと、「データの管理がどの単位で行われているのか?」、「個別システム単位なのか?」、「ERPシステムなどを利用して、一元管理が行えているのか?」などです。これらはこの後、IFRS対応のための基礎データをどのように集めてくるかにも影響する話です。

 IFRS、BI、電子帳簿、いつまでに何が必要か・・・という事を考えると、対応期間の調整が難しい部分もありますが、システム対応の計画としては、どう効率的に行うかという観点で重要だと思います。

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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