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「プロフェッショナル・コミュニティ活動について」

2011.11.10 株式会社オージス総研  今井 康雄

 

 当社では人材育成の一環として、職種別のコミュニティ活動を推進している。
 コミュニティとは、趣旨に賛同するメンバーが集まるゆるい共同体とも解釈されるが、当社では「職種という横串による母集団(=コミュニティ)を形成し、自主自立的にメンバー同士が情報交流や相談・指導等を行い、社内ノウハウ蓄積・共有や後進育成等を実施する活動(=コミュニティ活動)を推進する。」という趣旨で活動を行なっている。プロがプロを育てるという方針から、プロフェッショナルコミュニティという名称である。
 当初はプロジェクトマネジャー(PM)の育成のみで活動していたが、全社員対象のITスキル標準(以下、ITSS)をベースとした職種別キャリアフレームワークを2007年に策定した後は、重点的に育成する職種すべてについて活動するようになった。
 現在、コミュニティ活動を実施している職種は下記の7職種である。
 PM/コンサルタント/ITアーキテクト/ITスペシャリスト/ITサービスマネジメント/セールス/業務システムスペシャリスト/
 ここでは、その検討経緯や運営状況を紹介する。
(当社の人材育成全般については、
・当社WEBマガジン2010年11月号「ITスキル標準と戦略MAPを活用した人材育成の仕組みについて」
・『ITスキル標準:導入活用事例集2010』IPA/情報処理推進機構を参照されたい。)

1.職種別の人材育成

 当社では2007年から、より専門分野のスキルを高めるために階層別人材育成とは別に、下図のような体制、考え方で中期計画を達成するための要員を職種別に展開し、育成を進めている。
 職種別に育成するためにまず、PM、コンサル、ITアーキテクトなど各職種の社内第一人者を戦略ブレーン役にし、スキルアップを牽引する体制をとった。
 各職種の第一人者を職種別統括として任命し、職種別の育成について教育部門と検討し、コミュニティという母体をベースに各種施策を推進した。
当初はコミュニティ活動がメインであったが、その後、各職種別にITSSのレベル4~6の認定(以下OCP認定)を始めることにより、2つの施策が相乗効果をあげていくことになる。

職種別人材育成体制
図 1 職種別人材育成体制

2.研修ロードマップ

 当社においてもITSSをベースにした職種別の研修ロードマップを作成しているが、コミュニティの位置づけは図のように、レベル3~4以上のハイレベルな人材を対象としている。
 ただし最近では若手で積極的にレべルアップを目指す人材にも参加が可能なようにしている。

表1.当社研修ロードマップ‐コンサルタントの例 (赤丸枠がコミュニティ)
当社研修ロードマップ‐コンサルタントの例 (赤丸枠がコミュニティ)表1.当社研修ロードマップ‐コンサルタントの例 (赤丸枠がコミュニティ)

3.コミュニティ活動開始時の検討

 コミュニティ活動を始めた際には、順調にスタートした職種もあったが、どのような運営にするかは下記の点でかなりの議論が必要であった。
<コミュニティメンバー>
 SNS(ソーシャルネットワークサービス)などのコミュニティでは、趣旨に賛同するメンバーが自主的に参加し、関心あるテーマについて活動を行う。本来は企業内でもそのような形式が望まれるが、当初はSNSのようなツールもなく、教育部門と職種別の統括がリードする形で、各所属から各職種の指導者、該当者、育成対象者を選んでもらって一体となって活動することとした。
<活動テーマ>
 コミュニティ統括や教育部門が事前に年間計画を立てて準備しておくのか、コミュニティ参加メンバーのニーズをどれだけ組み入れていくのかなどの運営形態については、かなりの議論が必要であった。
今まで運営形態としては

 などの運営形態を経験して来ており、参加メンバーの意向や職種の特性が反映されるので、どれが最適なのかを決めずに年度毎、職種毎に異なる柔軟な運営となっている。
 また、全員を対象にした定例の会と、関心あるテーマごとに分科会に分かれ活動する形態も最近では多くなっている。全員共通のテーマは限られるという点を考慮したものである。

 その他にも活動を業務扱いとするかしないかという問題もあったが、当社では人材育成活動の一環として業務扱いとして活動を行なっている。
 コミュニティの開催は、メンバーが集まりやすい時間の夕方以降で月1回程度、全体例会の活動をしているケースが多い。

4.コミュニティ活動

 下表は、コンサルタントとITアーキテクトコミュニティの昨年度から今年度にかけての活動内容抜粋である。

表 2 活動内容抜粋
活動内容抜粋

 この数年間では次のような特徴ある活動が出てきており、コミュニティにおける人材育成の可能性は広がっている。

 コミュニティ活動において、上記のようにバラエティに富んだ活動が出現しており、教育部門だけでの活動では到底できないことが実現している。社員の経験や知恵を交換することのスキルアップ効果は、計り知れないものがあると実感している。
 その社内の経験や知恵と、外部専門家が交流することにより、より付加価値の高いハイレベルな知見が生まれることを期待し、今後は社外との交流や外部への発信をより増やしていければと考えている。

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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