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「ビジネスプロセスとKPI BPI:ビジネスプロセスインテリジェンス(その6)」
2011.11.10 株式会社オージス総研 宗平 順己
先月号ではKPIツリーを社内で共有することにより、トップと現場が同じ意識をもって業務改革を進めることができるということを、SocialBPMという概念を通じでご説明しました。そのKPIツリーとビジネスプロセスとの関係づけを行う方法についてご説明します。
1.先月号のおさらい
1.1 ゴール共有システムの要求事項
先月号ではゴール共有システムの要求事項を以下のようにまとめました。
(1)ツリー構造
一般に企業活動は経営レベル、マネジメントレベル、業務レベルの3つのレイヤに分けられ、従って、意思決定ならびにそれをサポートするKPIも3つのレベルがあります。
戦略レベルの意思決定は、経営陣の責務であり、組織全体の方向性を決定づける再決定のできない非常に重要なものです。マネジメントレベルの意思決定は、戦略の枠組み内において、短期的かつ限定された業務範囲におけるコントロールをするためのものです。
一方、一般にBPMが対象とする業務レベルの意思決定は、個々の顧客、一つの取引、ビジネスプロセス上の一つのタスクに対してのみ影響を与えるなど一つ一つのビジネス価値は小さいものの総量が多く、蓄積された場合の価値は大きなものとなります。そのため、ルール化され標準として一連のビジネスプロセスに組み込まれているべきものです。
このように、意思決定ならびにそれをサポートするKPIも3つのレベルがあり、それらは相互に関係づけられていなければなりません。
(2)ビジネスプロセスとの関係が定義されている
当該指標の値からビジネスプロセスの良し悪しを判断する必要があることから、KPIとビジネスプロセスの関係性が明確になっていないといけません。
(3)共通的に利用できる
異なる工場間、競合他社との比較ができるようにその指標は少なくとも同じ業態では共通的に利用できないと困ります。
(4)Predictive analyticsを実現
次の行動のためには、オペレーションレベルであっても傾向把握ができないとモニタリングしている意味がない。
(5)設定コストが安い
KPIの見直しは必然的に発生するが、そのたびに設定にコストがかかるようだと継続的に利用できない。
(6)難しい操作が不要
毎日のモニタリングで使用するため直観的に利用できないといけない。
1.2 解決策としてのBSCの実行ツール
この条件に満足するためには、BSCのコンセプトを忠実に再現し、しかも利用者主体で使えるものでないといけないということから、AxelというSaaSアプリを選択し、そのデモシステムをこれまで繰り返し参照してきました。このAha!Soft社[1]のAxel というSaaSアプリですが、2010年5月にフロリダ州オーランドで開催されたBSCのエグゼクティブセミナーで紹介されたもので、Deltacomという会社(デルタ航空ではありません)でこのSaaSを使って、見事に社内にBSCを定着させているのを見て興味をもったものです。BSC先進国の米国でPalladium社がわざわざ推薦するのも納得できるものでした。BSCの最新本「戦略実行のプレミアム」の実践にはうってつけのソフトだと思います。残念ながら英語のみなのでグローバル企業しか使えないのが難点だったのですが、この円高で皆さん海外シフトを加速されるでしょうから、むしろ最初から英語のソフトを使った方が良いのではないかと最近強く思っています。
さて、少し話がそれましたが、先月号の最後に、要求事項の(2)と(3)については、BSCを用いるだけでは不十分で、ビジネスプロセスモデリングにも工夫が必要となるということをお伝えしました。
次節からその内容を紹介します。
2.BSCとビジネスプロセス
2.1 第3世代BSCとビジネスプロセス
「BSC(バランスト・スコアカード)を正しく理解する 第3世代のBSC その1」という連載で、「第3世代では第2世代以上にビジネスプロセスとの関係性が強く意識されるようになりました。」ということをお話ししました。第3世代のBSCでは、企業の多くのプロセスを
「業務管理のプロセス(オペレーション・マネジメント)」
「顧客管理のプロセス(顧客マネジメント)」
「イノベーションプロセス」
「規制と社会のプロセス」
の4つのプロセスクラスターに分け、それぞれについて、戦略マップを書くこととなっています。また「戦略マップ」の本にはプロセスクラスター毎のテンプレートが定められ、図1に示すように設定すべき戦略目標と指標が示されています。
図1 業務管理プロセスにおける指標
2.2 第3世代BSCテンプレートとプロセスリファレンス
表1は、APQC PCFとSCORを合成した詳細プロセスリファレンスBSCの第3世代で示されているプロセスとの関係を示したものです。プロセス体系の上位レベルで重複することなく対応しています。
表1.BSCのプロセスと詳細プロセスリファレンスとの対応
※L1,L2はプロセスレベルを示す。APQC PCF との対比は
以下のとおり
L1 : Category、 L2 : Process Group L3 : Process、 L4 : Activity
L4がビジネスユースケース(アクティビティ図を作成する単位)に相当する。
続いて、「業務管理プロセス」のテンプレートに示されている「製品やサービスの生産」(表1の下線部分)における戦略目標「製品原価の低減」、「工程のサイクルタイム」および「固定資産の有効利用」と詳細プロセスリファレンスとの対応を検討し整理したのが表2です。
表2.指標とプロセスとの対応表(製品・サービスの生産)
このように、第3世代BSCとビジネスモデルとの対応関係の概念を、テンプレートの具体的な指標と詳細プロセス間の関係として定義することができます。すなわち、BSCで設定された指標をもとに見直し対象となるプロセスを定義することができるわけです。
突然、プロセスリファレンスというものが出てきたので戸惑われた方と思います。次回はその内容についてご紹介します。
3.再びデモサイト
ずっとご紹介しているデモサイトですが、改めて、じっくりとアクセスしてみてください。BSCの要求事項がいかに良く反映されているか「感じて」頂ければと思います。
https://demo.ahasystems.com:8443/axel/ | ||
UserName | → | Viewer@OsakaGas.example.com |
(@を半角にしてください) | ||
Password | → | Viewer |
アクセスするとダッシュボード(Flashboardと呼んでます)の画面が表示されますが、
At a Glance
を選んでもらうとKPIの一覧をツリー構造でみることができます。
Tier1がトップレベルですので、ここを選ぶと全部のKPIを見ることができます。
KPIの表示内容については下記のPDFファイルを参照ください。
Axel使用方法説明書(簡易版).pdf
Flashboardの画面でも、KPIツリーからでも良いですが、KPIを一つ選択してクリックするとそのトレンドを示す画面が表示されます。Forecastingを選ぶと今後の予測もみれます。
いろいろとパラメータをいじって遊んでみてください。
*デモシステムに関する問い合わせ
Munehira_Toshimi@ogis-ri.co.jp
(@を半角にしてください)
<参考資料>
[1] http://ahasoftware.com/axel.html
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