DX実現にむけて、 エンタープライズ企業に必要な3つの転換とは

2020年6月23日~28日に開催されたITメディア主催のオンラインイベント「ITmedia DX Summit vol4~DX実践の必須技術」に出展し、「エンタープライズ企業のDX実現」をテーマに講演しました。

講演では、DX実現において、クラウドネイティブ企業とは異なるエンタープライズ企業だからこそ乗り越えなければいけない課題と、その解決に向けたアプローチについて、事例を交えて解説させていただきました。

本コラムでは、その講演内容について、ポイントを絞りながらご紹介します。


デジタルトランスフォーメーション(DX)と、 エンタープライズ企業が抱える課題とは

デジタルトランスフォーメーション(DX)の本質とはいったい何か?

2018年に経済産業省が「DX推進ガイドライン」を発表したこともあり、最近至る所で見聞きするDXという言葉ですが、その発祥は2004年に提唱されていた概念・キーワードのようです。

様々な解釈がなされているDXですが、経済産業省の定義から大事なポイントとしては、「企業が、競争上の優位を確立するために、データやデジタル技術を活用すること」、これが重要な部分です。

DX推進に向け、DXガイドラインをはじめ、様々な書籍が、その実現に向けた考え方やアプローチについて提案していますが、取り組む側からすると様々な考え方があり、何から取り掛かればよいのか困るというのが実情ではないでしょうか?

DX先進事例からみるヒントは、「データ活用と開発スピード」

新型コロナ感染症対策で高い評価を得ている台湾。台湾では、各薬局にあるマスクの在庫状況がリアルタイムでわかるスマホアプリを1週間足らずで開発リリースしたことで、マスク不足による人々の私生活の混乱解消に一役買った事例が話題になっていました。

当局のリーダーシップによりマスクの在庫データが即座に公開された点、そのデータを活用した在庫可視化アプリが短期間で開発・公開されたスピード感など、学ぶべき点が多いです。

その他の事例として、講演では、当社の親会社である大阪ガスの取り組みについてもご紹介しました。

地に足つけたDX推進のための5つの要素と、実績を出しやすい要素とは?

オージス総研では、地に足をつけ着実にDXを推進していくためには、「リーダーシップ」「組織・体制」「データ活用」「プロセス」「技術(速く作り、すぐに動かす)」、これら5つの要素が重要であると考えています。

本来はこれらを全方位的に取り組めることが理想ですが、エンタープライズ企業にとって、それはなかなか難しいのが現状ではないでしょうか。そこで、比較的実績がわかりやすく示せ、取り組みやすい領域である「データ活用」「プロセス」「技術」から着手することを提案したいと思います。

解決への3つの転換

エンタープライズ企業ならではの「データ活用」「プロセス」「技術」へ取り組む難しさと、解決への道筋

取り組みやすいとはいえ、従来型の組織体制や文化が残り、多くの既存資産を抱えるエンタープライズ企業にとって、「データ活用」「プロセス」「技術」に取り組む上でも乗り越えなければいけないハードルがいくつかあります。次に、各領域においてエンタープライズ企業が抱える課題と、それを解決するための転換について解説します。

【データ活用】 データのサイロ化状態から、データの交通整理とタイムリーな分析への転換

IoT、オープンデータなど扱えるデータが増大する中で、データが散在し、価値を見出すためのデータ分析が十分できないという課題を抱えている企業も多いです。

データ活用、特にAIを使った高度活用ができるかどうかが、競争上の武器となっている今、データの活用レベルを高め、それを武器に進化させていく必要があります。そのためには、データのサイロ化により十分な分析ができていない状態から、データを整理・集約し、タイムリーに分析できる状態への転換が必要で、分析結果を現場業務に活用していく必要があります。その鍵は、データ活用基盤(DataOps基盤)の構築によるタイムリーな分析試行の実現と、AIを活用した分析結果の活用促進・高度化にあります。データ活用基盤については、①構造・非構造含めた大量データを集約できること、②分析に用いるデータに容易にアクセスできること、③分析試行をスピーディーに繰返せること、という3つの要件を備えていることが重要です。

【プロセス】 要件ありき・高品質達成のスタイルから、価値探索・スピード重視の開発スタイルへの転換

DXが叫ばれる中、デザイン思考やアジャイル開発という言葉を耳にすることも多く、既に取り組まれている企業も多いです。オージス総研も、エンタープライズ企業へのアジャイル開発やデザイン思考の導入をご支援させていただいていますが、下記に挙げるような、理想通りにはいかない現実の問題に悩まれるお客様も多いです。


  • デザイン思考をしているのに、稟議が近づくと通しやすさを優先し、こじんまりした企画になる
  • 企画や稟議に時間がかかる。開発だけアジャイルでも、全体ではアジャイルではない
  • 社内にルールがなく、特例扱い。既存ルールの調整・迂回が大変
  • デザイン思考・アジャイル開発は実践済み。ただし全PJで見ると適用PJは1%程度

DXでより成果をあげるため、プロセスの領域で取り組むべき転換は2つ。一つは「企画と開発が一体になったプロセス・体制」への転換。当社はこれを「OGIS Creation Style」と定義しています。デザイン思考とアジャイル開発を一つのチームで実践し、デザイン思考を使った顧客の本質的な価値発見と、アジャイル開発を使った頻度の高いクイックな価値検証を、同時に、かつ繰り返し行っていくことが重要です。

二つ目の転換は、既存のプロジェクト型のIT投資ルールに、ビジネス開発型のルールを追加することです。期間は有期で、計画とスコープを重視する従来のプロジェクト型ルール。ここに、顧客価値と変更を重視するビジネス開発ルールを追加する。毎年予算をつけ、価値発見と価値検証を実施、あくまでQCDとスコープは実現手段であり、価値の予実を常時モニタリングし、必要に応じてビジネスロードマップを修正していくのです。

【技術】 スクラッチ中心、自前主義から、サービス組合せ・スケーラブルなクラウドネイティブ技術活用への転換

技術の領域では、従来標準のモノシリックなシステムが前提のため、素早く作ってすぐに試すような小回りのきくアプリケーション開発ができていない、既存資産を抱えながらパブリッククラウドサービスの利用が進むことで複雑性が増し、運用管理が複雑化しているという課題を抱えている企業も多いです。

こうした課題を抱える企業にとっての技術の転換ポイントは、速く作れてすぐに動かせ、世の中の変化に対応できる柔軟性をもち、メンテナンス性も考慮するということです。そのためには、以下の3つの取り組みが重要になります。


  1. 自社のコアシステムに加え、世の中を席捲しているパブリッククラウドサービスや革新的なOSSツールを積極的に採用し組み合わせること
  2. ほぼ無限のクラウドリソースフル活用するためにスケーラブルでクラウドネイティブなアプリケーション開発を行い、マイクロサービスアーキテクチャを採用すること
  3. サービスを組み合わせる際は、カオス化しないように技術の標準化を行いながら、開発・運用の負荷を抑制していくこと

金融機関向けマイクロサービス開発事例紹介

講演では、実際に当社がご支援した金融機関のお客様における、マイクロサービス開発プロジェクトの事例紹介を行いました。

「早く・安く・頻繁にリリース」の実現を目指し、マイクロサービス・クラウドネイティブ化を採用

異業種や海外Fintech企業などの参入により競争が激化する金融業界は、従来のビジネスモデルでは利益確保が難しくなっており、新たなビジネスの創出が必要となっていました。しかし、縦割り組織、縦割りシステムが、その動きを阻害しており、お客様は、データ活用による新たなビジネスモデルの創出、FinTech企業のような新サービスの開発からリリースまでの時間短縮を実現したいという思いを持っておられました。そこで、既存業務を「業務管理」という視点で再整理し、共通サービスとして機能・データを集約させ、商品開発のスピードアップと保守の効率化、データ利活用の促進を推進することを目指されました。

「共通サービス」を「早く・安く・頻繁にリリース」できるようにするため、マイクロサービスアーキテクチャを採用、プラットフォームはクラウドネイティブ技術を活用することを選択されました。

マイクロサービス・クラウドネイティブ化に取り組む上で重要な6つのポイント

講演では、本事例において、マイクロサービス・クラウドネイティブ化を進める上で重要なポイントを6つの視点から解説しているので、ぜひご覧ください。

3つの転換を実現するために

最後に、DX推進に向け、「データ活用」「プロセス」「技術」の転換を支援するため、オージス総研では下記のソリューションを取り揃え、エンタープライズ企業のDX実現を支援しています。


オージス総研―DXソリューション

講演では、各ソリューションについても説明していますので、合わせてご覧ください。

ユーザー系IT企業、特定ベンダーや製品に依存しないオープンな立場の当社だからこそ、ユーザー目線で考えることができるとの思いをもって、エンタープライズ企業のお客様のDX実現を共にご支援していきたいと考えています。

※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

デジタルトランスフォーメーション(DX)に関する資料ダウンロード

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