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「サービスデザイン思考におけるBtoBtoC(後編)」

2018.09.13 株式会社オージス総研  竹政 昭利

1.はじめに

前半では、BtoB企業における、インサイト(洞察)を持っている消費者の捉え方について、一論としてBtoBtoCとして捉える場合、部品の場合、見えない部品の場合の3つを考えました。後半では、さらに2つのケースについて考えていきたいと思います。

2.ケース4 素材メーカーの場合

BtoBtoCを一番イメージしにくいのは、素材メーカーかもしれません。生地を考えた場合、それが、鞄になるかもしれませんし、傘になるかもしれません。
イノベーションの例でよくあげられるのが、ポストイットです。粘着性の低いのりという素材が先にありました。素材メーカーである3Mは、当初接着力の強い接着剤をつくろうとしていたのですが、よくつくけれど、簡単に剥がれてしまう接着剤ができあがりました。
本来の目標からすると失敗作です。すぐ捨てられてしまいますが担当者は、何かに使えるのではないかと考え続けていました。(※4)
ある日、教会で、聖書のページをめくったところ、しおりがおちたことから「のりの付いたしおり」がひらめきました。そのときポストイットが生まれた訳です。
今はポストイットがあるから、なるほどと思いますが、ポストイットがまだ存在していないときに、粘着性の低いのりが使われる場面を考えることは難しかったことでしょう。
素材メーカーが消費者向けの商品のアイディアを考えるときに、ポストイットのような文具に範囲を限定すれば、良いアイディアが出てくる可能性がありますが、あらゆる分野に広げてしまうと、アイディアが発散しすぎて、迷走する可能性があります。
まして、ユーザーのインサイトと結びつくのは、至難の業でしょう。

一般的に、シーズから直接ニーズを発想することは難しいものです。
素材メーカーが消費者Cのインサイトを探ろうとするときには、科学技術コーディネーターの手法「シーズニーズ変換」が有効かもしれません。
「シーズニーズ変換」では、一度シーズから要素技術、機能・効能、用途の順に出していき、特徴を一度全部つまびらかにしたうえで、そこからその素材の使い道についてそのアイディアを出していきます。(※5)

3.ケース5 様々な関係者がいる場合

パソコンを作っているメーカーがあります。パソコンは、販売店を通してある会社に購買部門経由で納品され、そこの社員が使っている場合はどうでしょうか?誰のニーズを捉えればよいのでしょうか?
メーカーが製品を卸すのは、販売店になります。今までだと、販売店のニーズに重きを置いていました。販売店は、納品する相手の会社によってニーズが異なるため、様々なスペックをメーカーに要求してくるかもしれません。
購買部門はどうでしょうか?購買部門としては、通常どれだけコストを抑えてパソコンを導入できたかが腕の見せ所になります。コストダウンを重視しすぎると、スペックが低くなったり、使い勝手が悪いパソコンを選択するかもしれません。もしかしたら、社員としては、パソコンを使うたびに不満をもらしているかもしれません。
メーカーとしては最終消費者である社員のインサイトが重要になりますが、購買部門、販売店の話もじっくり聞いて、場合によっては購買部門、販売店の担当者を新たなペルソナとして追加することを検討しても良いでしょう。

4.まとめ

BtoB企業の場合も何らかの形でCを意識することは重要だと思いますが、それぞれの企業により、状況が異なります。今回見てきた以外にも、様々なケースが存在すると思います。
また、いままでずっとBを意識してきた会社の人は、Cを意識することが難しいようです。
今まで歩んできた畑の違いからどうしてもBを意識してしまう人や、そもそもCを意識する意味が分からないという人など、バイアスが存在しています。
じっくり時間をかけて、解きほぐしていく必要がありそうです。

「参照、引用」
4.http://www.mmm.co.jp/wakuwaku/story/story2-2.html#chap_cont
5.hhttps://www.slideshare.net/ishiirikie/ss-47444817t

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