毎回、身近にあるモノや出来事など、簡単な【お題】を出題し、皆さまにモデリングをしていただいています。お題の次の記事で、皆さまの回答モデルの中から2、3個取り上げて、コメントを付けながら紹介しています。今回の第9回は前回の「お題:推し活」を回答していきます。編集員からも考えた回答例を提示しています。モデルに完璧な正しさというのはないと思っているので、モデリングした人の意図とモデルが合っているか、よりよいモデルにするにはどうしたらよいかをワイワイ発信できれば幸いです。
目次
1.前回の問題 (推し活)
前回の問題をもう一度確認しておきましょう。
【お題04】推し活のおさらい
私は普段、アジャイルコーチとして開発チームを支援しています。
現場ではチームの成長を隣で見守り、ときに励まし、ときに一緒に喜びます。
そんなふうにチームを応援している自分を見て、ふと思いました。
「これって、もしかして推し活に近いのでは?」
推し活とは、好きな対象を応援する活動のことです。そこには感情だけでなく、グッズ購入やライブ・イベント参加、情報共有など、推すという行為に関わるさまざまな要素が絡み合っています。
そこで今月は、このテーマで出題します。
【お題04】推し活
「推し活」をモデリングしてください。
推し活(コトバンクより引用)
《活は活動の略》自分の好きな芸能人やスポーツ選手、キャラクターなどを応援する活動の総称。→推し
推し活と一口に言っても、
- アイドルを応援する人
- スポーツチームを支える人
- キャラクターや作品を愛する人
など、対象も行動も驚くほど幅があります。
著者自身も、あるサッカーチームのサポーターをしていて、試合のたびに一喜一憂しています。
これらの行動を眺めてみると、「推し活」には単なる“ファン”以上の構造がある気がしています。
推し活をモデルにすると、私たちの仕事やチームへの関わり方にも「推している構造」が見えてくるかもしれません。
さて、今回も回答はクラス図とオブジェクト図で表現してください。
クラスには必要な属性を、関連には多重度を明記するのがポイントです (回答時間の目安は30分です)。
2.読者回答モデル
今回も、読者の皆様から、たくさんの回答モデルをいただきました。ありがとうございました。その中から2つの回答モデルを、当カフェのヒトクセある!?常連たちの声を交えながら紹介いたします。コーヒーなどを飲みながら、皆様も一緒にわいわいやる感じで考えてみてください。
また、残念ながら紹介できなかった回答モデルはどこかで掲載できるよう企画を考えていこうと思っております。掲載のなかった方は、お待たせして申し訳ございませんが、ご了承いただければ幸いです。
読者モデル1:武中幹人様
【モデルのコンセプト】
- アイドルに対する推し活をモデリングする
- 推す側は推しに対して活動をする
- 推す側は活動や反応に対して感情が動く
- 複数人やグループに対する推し活は考えない(単推しのみ認める)
- 同時に複数の感情が沸き上がることもある
【難しかったところ】
- 「活動」、「反応」と「感情」をうまくつなげたかったが時間と考えが及ばなかった
- 「活動」はグッズやネイル、チケットなどモノも必要なのでそこまで含めてモデリングしたかったが時間不足


【モデルについての自己評価】
- コンセプト内での自分が思うアイドルの推し活の表現はうまくできた
- +で表現したかった部分が不足したので70点
【モデルについてのコメント】
常連A- コンセプトに挙げている「感情が動く」というのは面白いと思いました。推し活をしている人は対象のことをよく考えていて、一挙手一投足に感情が湧きあがるようなイメージがあります。オブジェクト図を詳細に書いてあるのも、とても良いですね。さらに、場面や行為ごとにオブジェクト図を分けて表現すると、活動に対する感情や反応がもっと分かりやすくなると思います。
常連B- 沢山の活動が書かれているので、それぞれに投稿者の湧きおこる感情が見えてくるとその関係性が見えてきたかもしれないね。オブジェクト図を一つ一つ見てみると「CDを渡す:布教する」の場合は「対象=“オタクB"」とあるので、オタクBオブジェクトにも関連線を引くと、布教する行為の対象がより明確になりそうです。
常連A- そこからオタクBさんがハマってくれたものの「卒業公演:観る」しかなく、「早く知りたかった:悔しい」につながっていると理解しました。
常連B- クラス図に移ると、推す側と推される先で綺麗な対比の構造になっているように見えます。活動は推しに対する活動に見えるけど、活動に先ほど挙げた「布教する」があるので、活動対象に推す側のこともありそうです。
常連A- 活動→推す側が「1..*」になっていたので、布教を考えると推す側に複数の関係性がありそうですね。もしくは、活動にコール&レスポンスを加えると、ライブでみんなが行う活動みたいに捉えられて面白そうです。
常連B- オブジェクト図を場面で分けるという話があったように、関連名や関連端をクラス図中に記入することで、関連線の表現を変えるなどのアイデアが浮かんだかもね。
常連A- 確かに。ここで少し実践的な観点を挙げると、オブジェクト図とクラス図の配置は合わせたほうがよいと思います。オブジェクト図では左右の関係で並んでいる一方、クラス図は縦やダイヤの形で配置されています。同じように並べることで、線の抜け漏れや多重度の誤りに気付きやすくなります。
常連B- そうですね。オブジェクト図とクラス図を行き来することは重要です。基本的なテクニックとして押さえておきたいところです。
常連A- 改めて一つの推し活ごとにオブジェクト図を分けて、「こんな時にはこんな感情が湧くな」と見ていくと、難しかったところで挙げられていた「活動」「反応」と「感情」の関係性がさらに見えてきそうです。
読者モデル2:やっとむ様
【モデルのコンセプト】・【難しかったところ】
コンセプトや難しかったところとして明記が無かったのですが、モデルに添えられたコメントから、モデルは以下のように(書いた結果、そう投稿者は考えたと)捉えました。
- 外部から見た推し活(を投稿者としてはどのように受け取っているか)
- 活動している人が1人だけだと、特に推し活とは見えない(主体の自己認識とは別)
- 「単なる”ファン”以上の構造」は見つけられなかった

【①モデルについての自己評価】
- 投稿者は推し活の経験がなく、理解もできていない
- 押し活をしている人を知ってはいるので、外部から観測できることをモデリングしてみました
- それでも、どんなことをしているかうっすら聞いているだけなので、実例、具体例がありません


【②モデルについての自己評価】
- 活動の主体である個人は、ボーカロイドやバーチャルアイドルの推し活をしています
- ライブに行ったりCD(?)を買ったりしています
- 仲間内での応援イベントを開いたりもしているそうです


【③モデルについての自己評価】
- 活動の多くは場を持っています。イベントだったり、ショップだったり、YouTubeチャネルだったり
- そこには他の個人もいて、経験を共有しています
- 経験の共有をきっかけに、一緒に行動、活動するようになる仲間やグループもあるようです


【④モデルについての自己評価】
- 外部から推し活というものを見たときは、個人というよりは「そういうことをしている人たちがいる」と受け取れるように思います
- 活動している人が1人だけだと、特に推し活とは見えない気がします(主体の自己認識とは別)
- お題にあった「単なる”ファン”以上の構造」は見つかりませんでした。投稿者が理解できていないと明らかになったと思います
【モデルについてのコメント】
常連B- オブジェクト図から作成して、段階的に投稿者の思考を追えるのは嬉しいですね。
常連A- 多くの投稿者が結果としてのオブジェクト図やクラス図を送ってきてくれているので、モデルの進化を一緒に追えるのは楽しいですね。①のコメントを見ると投稿者自身の「推し活」というよりは知っている知人を見て、モデリングしたようです。
常連B- ①は背景説明で、②からは「活動」を加えてクラス図を書いてくれています。「活動」が追加されたことで、「推し活」を表すための最小構成が見えてきたように感じますね。
常連A- 「推し活」らしくなってきたからこそ気になる点も出てきますね。たとえば、②では「仲間内での応援イベント」の開催はありますが、そこに誰が参加しているのかはまだ表現されていません。
常連B- その関係性は③にありましたね。
常連A- 確かに。③を見ると、「参加者」と関連端でロール付けられた「個人」が、応援イベントの「場」に紐づいています。イベントと個人をつなぐ「場」ができたことで、表現が一気に豊かになりました。
常連B- 逆に、音楽視聴や鑑賞では「場」が表現されていないので、特定の「場」だけをモデルに書くと判断したのかもしれません。どの場面を重要な概念として扱い、どの場面は省略するのかという判断も、モデリングでは大事な観点です。
常連A- 思考の動きが見えるからこその推測ですね。なるほど。一方で「経験の共有をきっかけに一緒に行動、活躍するようになる仲間やグループがあるようです」と書かれた箇所の「仲間」や「グループ」(クラス図だと「コミュニティ」)は③ではどういうものかまだわからないですね。
常連B- そこは④の「外部から見た推し活」の認識として「個人というよりは『そういうことをしている人たちがいる』」と見ていて集団としての動きを「推し活」として捉えようと思っているのだと思います。
常連A- なるほど。その関係性で考えると、④では「コミュニティ」として認識できる「活動」に関連線を引くと、より意図が伝わりやすくなりそうです。その動き、つまり推し活が「コミュニティ」としてまとまって見えている、という認識に近づくと思います。
常連B- ③にある「経験の共有」という所から、最初の投稿者のモデルじゃないですが「活動」に対する「感情」(共感)みたいなのがありそうな気がしました。
3.回答例
マスター- それでは回答例として、当カフェの常連さんのモデルを紹介します。 コンセプト次第でモデルは変わりうるものですから、正解としてではなく、1つの考え方、1つの例としてご覧ください。 では、結果としてのモデルだけではなく、常連さんたちがどのようにそのモデルにたどり着いたのか、モデリングの過程も追ってみましょう。
コンセプト
シナリオを考える
常連さんたちは、ざっくばらんにいろいろ話をしたようです。 『推し活』については、AIとも相談しながらシナリオを考えてみました。
常連A- ちょっと、AIに聞いてみて…「推し活をモデリングするのはどうですか?」…と。
AI- とても良いテーマですね。そして「推し活をモデリングする」というお題自体は、モデリングカフェのコンセプトにぴったりで、読者も興味を持ちやすい題材だと思います。
常連A- (全肯定してくるな…。いろいろ対話した結果)まぁ、私の思う推し活の認識としてはあまり違和感が無い気がしますね。
- 「推し活(おしかつ)」とは、自分の“推し”を応援し、その存在を楽しみ、生活にポジティブなエネルギーを取り入れる活動全般を指します。単なるファン活動よりも、「主体的に関わる」「日常に組み込む」というニュアンスが強い言葉です。
- 「この人(存在)を応援したい」「見ていると元気になる」対象が「推し」です
- なぜ「推し活」が広がったのか?SNS・配信文化で距離が近くなり、応援の形が多様化。「癒し」「生きがい」「自己肯定感」を得られることで、コロナ禍以降、心の支えとして再評価された
- 推し活は「消費」だけではなく、最近はこんな捉え方も増えています:「自分の感情を理解する手段」「日常を意味づける行為」「好きを起点にした自己表現」
常連B- 早速、ファンとの違いも話してくれていて、「推し活」の理解の助けにはなりそうですね。ただし、これはあくまでAIの整理です。ここから先は、実際の場面をオブジェクト図にして、自分たちなりに確かめていきましょう。
具体的な推し事を考える
常連A- そうですね。こういう時こそ、現実の事実に沿ってオブジェクト図から作っていくのが良さそうです。何か「対象」があり、それに対する「感情」を抱き、何かしらの「行為」につながっていく。たとえば、こんなシナリオがありそうです。
- ファンが推しであるアイドルのライブに参加する
- ライブでは推しているアイドルを応援したいという感情からライブに参加する
- 曲に合わせて推しているアイドルのコールに応えたり、曲にのったりして同じ時間を過ごすことに多幸感がある
常連B- なるほど、こんな感じかな。
- ライブ参加のシナリオ

常連A- なるほどね。まだ1例だけなので、ここでは評価しすぎず、次のシナリオを考えてみましょう。 常連B- そうしましょう。 常連A- 次はグッズ購入はどうですかね。推しのグッズだったりアクリルスタンドだったり、そういうの買ってカバンに付けたり棚に飾ったりして、見て幸せな気持ちになる…みたいなのを考えてみました。 - 個人で作成する推し棚

常連A- 「グッズを集める」と関連する活動として「グッズを購入する」とか「専用棚にグッズを並べる」というのを書いてみました。 常連B- 「グッズを購入する」「専用棚に並べる」は、一連の「行為」として捉えられそうです。一方で、構造としては「ライブに参加して応援する」ケースに近い形で表現できそうです。もう少し違うタイプの推し活も見てみましょう。 常連たちはそんな会話をした後、シナリオに聖地巡礼の記述を追加しました。 - 聖地巡礼のシナリオ

コンセプトを決める
- 対象を「良い」「応援したい」と思う感情を、行為として表現すること=推し活
- 推し活とは、対象に対する感情を起点に、それを行為として表現し、さらに新たな感情を生み出していく活動である
モデル
最後に、常連さんたちは、クラス図を描いていました。
クラス図

今回のモデルでは、「推し活」を「感情を起点にした行為」として捉えました。つまり、推し活は単に対象を好きでいる状態ではなく、感情を起点に行為が生まれ、その行為が場やコミュニティと結びつき、さらに新しい感情を生み出していく活動だと考えたのです。
オブジェクト図で具体的な場面を描いてからクラス図に戻ることで、どの概念をクラスとして扱うべきか、どの関係に多重度を持たせるべきかが見えやすくなります。自分の推し活をモデリングするのか、他者として推し活している人をモデリングするのかによって目の付け所は変わってくるのではないかと思えるお題だったと思います。
みなさんは「推し活」をどのように捉えたでしょうか。自分なりのモデルを見つけられるか、投稿期間が終わったあとも是非、モデリングに挑戦してみてください。
4.プレゼント企画
今回、株式会社チェンジビジョン様のご厚意で、投稿者の中から優秀なモデル回答読者に「astah*の1年間のライセンス提供」をいただいています。
ライセンスの提供は、ちゃんとライセンス登録し、チェンジビジョン社からのメールで情報を受け取ることが条件とはなります。
今回のプレゼント当選者は、下記の方になりました(パチパチ)。
プレゼント当選者
- 武中幹人様
- やっとむ様
後程、ご連絡いたしますので、楽しみにお待ちください。
5.さいごに
今回のお題である「推し活」について、回答モデルを描いた後、実際に推し活をしている人にも話を聞いてみました。そこで多くの人に共通していたのは、「元気がもらえる」「多幸感がある」という感覚でした。また、推し活には、推し対象への愛だけでなく、推し対象を中心とした環境への愛も含まれているということも分かりました。イベントの場、そこで出会う仲間、経験を共有するコミュニティ、そうしたものも含めて「推し活」なのだと感じました。
著者自身もサッカーチームを応援していますが、まだまだ「推しが足らない」と感じることがありました。モデリングして対象を「見える」ようにすることは、自分の捉え方と他者の捉え方の違いを知る、よい方法なのかもしれません。
2026年度1回目のお題と回答はいかがだったでしょうか。
毎回お伝えしますが、私も今回のお題に関して、完璧なモデルというのは分かりません。観点が変われば違うモデルになることもあります。その点も含めて、皆様と会話し、様々な可能性やより良い観点を「見出す」ことが、私たちがモデリングカフェを再開した理由です。
次回のお題については・・・、次号をお楽しみに!
