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「昨今の商業施設をとりまく状況」
2017.01.23 株式会社オージス総研 行動観察リフレーム本部 有馬光美
■百貨店の売上高はこの10年で、1兆6,700億円マイナス
2012年、2013年はインバウンド特需でわずかにプラスに傾いたが、1997年9.1兆円から2009年に1985年以来24年ぶりの7兆円割れとなってからは、6兆円台をキープしつつも、ひたすらダウントレンドとなっている。
図1. 全国百貨店暦年(1~12月)売上高の推移 ※「日本百貨店協会」HP参照
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■百貨店不振の要因は、モノ消費の終焉とチャネルの多様化
ファッションが市場に飽和していることに加え、買物チャネルが多様化し、売上が分散。1990年代から郊外型ショッピングセンターの出店がはじまり、2000年代は「ららぽーと」「イオンモール」などの大型ショッピングセンターの時代となった。また、ルミネなど駅直結型のファッションビルやエキナカなどにも商業施設が登場し、より便利な方へと人が流れている。名古屋においても、2015年の売上高で、JR名古屋高島屋が初めて老舗の松坂屋名古屋店を上回り、高島屋の一人勝ちが鮮明となっている。
また、ネット通販の存在も商業施設の売上をおびやかしている。2014年の小売業界の規模は、小売業販売額が141兆2,190億円(経済産業省商業動態統計)。百貨店が6兆2,124億円、チェーンストア13兆207億円、コンビニエンスストア10兆4,230億円、SC総売上高29兆7,385億円、通信販売6兆1,500億円(ほぼ物販のみ、社団法人日本通信販売協会調べ)となっている。通信販売業界が14年で6兆円台に乗り、小売業に占める売上シェアでは4.4%と、百貨店の4.8%に迫っている。
もちろん、ファストファッションの台頭もファッション消費の流れを変えた。百貨店でわざわざプロパーの高い服を買わなくても、そこそこ品質がよいもの、トレンドデザインのものが買えてしまう。アウトレットやショッピングセンター、駅ビル、ファストファッション・・・、百貨店だけでなく、小売業全体が競合過多な飽和状態となっていると言える。
■脱・百貨店
■モノからコト消費へ
2012年に建替えオープンした「阪急うめだ本店」でも、新店コンセプトを「暮らしの劇場」とし、「モノを売る小売業」からライフスタイル情報を提供する「情報リテイラー」への転換を図る。「コトコトステージ」というイベントスペースを計24カ所設置。9階には新本店を象徴する4層の吹き抜け空間「祝祭広場」などを設け、売場面積のうち2割はモノを売らない空間とした。
ショッピングセンターでも、「買物しに行く」から「体験しに行く」MDへチェンジしており、健康のエンターテイメント化が進む中、健康やアウトドアを楽しむことに特化したSCも登場。2015年3月にオープンした東京の昭島の「モリパークアウトドアヴィレッジ」は、カヌーもミニキャンプもできるアウトドア物販と体験に特化した、屋外型のアウトドア専門モールとして注目を浴びる。また2015年4月には"走れるSC"がコンセプトの「もりのみやキューズモールBASE 」が誕生。2015年11月に大阪万博公園のエキスポランド跡地にオープンした「エキスポシティ」は、三井不動産商業マネジメント(株)が運営する商業施設「ららぽーと」の新店だが、水族館や体感型エンターテインメント施設、体験型英語教育施設などを導入し話題になった。
■しかし、コト消費コンセプトもカニバリゼーション
図2.
今後も、新しい商業施設のオープンが次々と予定されているが、各社とも生活者のニーズを知ることに苦心している。うわべだけのトレンドやヒット商品だけではなく、なぜそれが売れているのか(欲しいと思うのか)、なぜそこに行きたいと思うのか(体験したいと思うのか)といった、潜在的で隠れたニーズを知ることがますます重要になってきている。
*SC | =ショッピングセンター |
*MD | =マーチャンダイジングの略称。主に流通業界で使われる言葉で、顧客に商品を買ってもらうために、顧客の要求する「適正な商品」を「適正な時期・場所・量・価格」で提供するためのマーケティング活動のこと。簡単に言うと、品揃え、店揃えの意味 |
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