「今すぐAPIを公開したい」と言われたシステム担当者が取り組むべき三つのこと(第1章)

第1章 なぜ今、APIなのか?

金融分野を中心に急拡大してきた「オープンAPI」。今ではさまざまな業界に波及し、APIを活用した新たなビジネスモデルが次々と生まれています。政府も成長戦略の一環として、API活用を積極的に後押しするなど、強力な追い風が吹いています。このチャンスは生かすべきですが、APIを理解していかなければ、何も進みません。そこで第1回目となる今回は、API活用の背景やメリットについて紹介します。

デジタルビジネスの広がりと具体的な姿

ITの活用によってビジネスモデルの変革を実現し、新たな収益の機会を生み出す「デジタルビジネス」が拡大しています。デジタルビジネスの本質は、外部開放にあります。それは、複数の企業がそれぞれのシステムやサービスを相互に連携させて新たな価値を生み出すという意味です。

図式化すると、「デジタルビジネス=自社の提供価値(既存事業)× 他社の提供価値 × IT」となります。

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このデジタルビジネスを実現するためにはAPIを通じたサービスやデータの連携が不可欠です。

以下に、オープンAPIによるデジタルビジネスの具体例を挙げます。

○ 旅行代理店×配車サービス
例えば、ホテル予約と同時に現地で必要となる自動車を手配します。目的地の事情に通じた運転手を指名することも、1回のオペレーションで完了します。

○ 会計サービス×銀行
銀行が保有する利用者の口座情報と連携し、別会社のサービスとして、取引内容の参照や振り込みなどを実行します。FinTechの代表的なサービスの一つです。

○ 自動車×損害保険
自動車の走行・運転データを使うことにより、自動車保険の保険料率を算定することができます。この仕組みを利用した自動車保険は「テレマティクス保険」と呼ばれています。また、走行・運転データは、事故時の迅速なフォローも可能にします。

オープンAPIによるデジタルビジネスに取り組むメリット

オープンAPIで重要なのは、取り組むメリットがAPI公開側とAPI利用側のそれぞれにあるということです。

公開側のメリットは、収益やシェアの拡大です。他の事業者に対して必要な情報だけを安全に連携できるため、自社のデータやサービスを流通させるチャネルを増やすことになります。

利用側のメリットは、自社の顧客に向けた迅速な価値の提供や、統合による価値の創造が可能になることです。優れたAPIを利用すれば、高度なサービスやアプリケーションを顧客に対して迅速に提供できるようになるのです。

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政府がAPI活用を積極的に後押し

オープンAPIは、金融分野をきっかけに注目され、拡大してきました。代表的な例は、FinTechです。APIの公開で、新しい金融サービスを提供するITベンチャー企業と、既存の金融企業を結びつける動きが活発化しています。

法整備が進んだことも後押ししています。2017年5月に改正銀行法が可決・成立、2018年6月に施行と、銀行や信用金庫に対してAPI公開の努力義務を課すことが決まりました。これにより、残高や取引明細の照会、振替、振込といった銀行機能を組み込んだサービスの開発が容易になります。

現在、政府が掲げる成長戦略「未来投資戦略2018」においても、FinTech/キャッシュレス社会の実現に向けて、APIの開放と整備を進めています。政府目標では、2020年6月までにオープンAPIを80行以上で導入することを見込んでおり、2018年3月時点で、全邦銀139行中130行がオープンAPIの導入を表明しています。また、経済産業省は「クレジットカードデータ利用に係るAPI連携に関する検討会」を開催しており、APIの活用を積極的に後押しています。

さまざまな分野に広がるAPIの活用

金融分野以外でもAPI活用が活発化しています。

  1. 交通インフラでは、次世代モビリティ・システムの構築があります。これはさまざまな交通サービスをデータでつなぎ、新たな付加価値を生み出す「モビリティサービス(MaaS:Mobility as a Service)」等を促進するものです。ある運輸事業者では、荷物の発送や受け取りを便利にするさまざまなサービスや機能と連携できるAPIを広く公開しています。
  2. ヘルスケア分野では、個人に最適な健康・医療・介護サービスを提供するPHR(Personal Health Record)構築があります。これはAPI公開等により、本人の許諾を受けた民間サービス事業者がデータを活用できるようにするものです。
  3. 電子行政の関係閣僚で構成する「eガバメント閣僚会議」では、法整備とともに民間サービスの利用やAPI連携により、リソースを他サービスでも共有できるものにすると提言しています。

このようにオープンAPIは、金融分野だけでなく、さまざまな分野に広がり、私たちの生活と身近なサービスに影響を与えつつあります。オープンAPIは提供側・利用側のどちらにもメリットが望めます。第2章では、実際にオープンAPIを活用した新しいビジネスに向けて一歩踏み出そうとする場合に、どのようなことを検討し、どのようなアプローチをすれば良いかを解説します。