エッジAIとは?クラウドAIやエンドポイントAIとの違いやメリット・デメリット、活用事例を紹介

AI技術の発展に伴い、近年はさまざまな業界でAIが導入され始めています。医療や工業といった分野だけでなく、一見AIとは無縁のように思える農業や漁業といった業界でもAIを活用するケースが多くなってきています。製造業においても、生産部門の品質管理などで活用されており、今後、重要となってくる技術です。

製造業で活用しやすく、今とくに注目を集めているのが「エッジAI」です。そこでこのコラムでは、エッジAIの基本的な情報とエッジAIの活用事例を紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

エッジAIとは

エッジAIとはエッジデバイスでAIアルゴリズムを実行する技術を指しますが、エンジニアの専門領域や文脈によってその意味や指す範囲に多少の違いがあることに注意が必要です。

<クラウドエンジニアのエッジAIの定義>
クラウド以外の端末(エッジコンピュータ)でAIを実現する技術です。

<組み込みエンジニアのエッジAIの定義>
現地・現場・現物の環境でAIを実現する技術です。ただし、組み込みエンジニアにとっては、エッジの範囲があいまいなので定義を明確にする必要があります。一例ですが、エッジAIをさらに細分化したエンドポイントAIという概念がARM(アーム)社より提唱されています。

エッジAIの細分化と定義

ARM(アーム)社の定義(※)によると、エッジAIはインターネットに接続される高性能な機器でAIを実現します。エンドポイントAIはインターネットに接続しない比較的低性能な機器(例えばマイコン)でAIを実現します。
エンドポイントAIがインターネット接続を必要とする場合はエッジデバイスを介します。この例のように、エッジAIを細分化して区別しておくことで、製品に必要な構成を具体化して検討しやすくなります。また、必要となる技術や知識も異なる場合がありますので、合わせて整理しておくと良いでしょう。

※IoTデバイス向けエンドポイントAI - Arm https://www.arm.com/ja/markets/iot/endpoint-ai(外部サイト)

クラウドAI エッジAI エンドポイントAI
ビジネス/製品知識 必須 必須 必須
データ分析知識 必須 必須 必須
データ加工知識 必須 必須 必須
ニューラルネットワークなどの
AIフレームーワークの知見
必須 必須 推奨(TensorFlow Liteは重要)
物理デバイス知識 無くても良い 必須 必須
Python 必須 必須 推奨(データ可視化などで使えると便利)
C言語/C++ 不要 不要 必須
インターネット通信 必須 必須 無くても良い
BLEをはじめとする近距離通信 無くても良い 必須 必須

製品にAIを導入する際には、それぞれの特徴や得手不得手を把握し、実現したい要求や解決したい課題に合わせて適切に選択することが必要です。行き当たりばったりにならないよう、AIの使い処を整理しておくと良いでしょう。


エッジAIのメリット

エッジAIを導入するメリットとして、以下のような点が挙げられます。

・低遅延
クラウドとの通信がなく、インターネットを介さずにAIを動作させるため、低遅延でAIを実行できます。機器の制御などある一定レベルのリアルタイム性が求められる場合にはエッジAIが有力な選択肢の1つとなります。

・通信帯域の節約
エッジでデータを処理できるため、クラウドに通信するための帯域が節約できます。通信環境が不安定な場合や低速な場合は非常に大きなメリットとなります。

・データプライバシーの向上
エッジでデータを処理することは、データの漏洩リスクを軽減することにもなります。

エッジAIのデメリット

エッジAIのデメリットとして、以下のような点が挙げられます。

・計算能力の限界
エッジデバイスの計算能力はクラウドと比較して低い場合があり、複雑なAIモデルの実行が困難なことがあります。また、スケーラビリティはクラウドに劣ります。

・AIモデルの更新
エッジAIは現地・現場・現物の環境で実現されているため、AIモデルの更新には物理的な制約があります。リモートでAIモデルを更新する場合は、OTAなどの仕組みが必要となります。

・開発の複雑さ
エッジデバイスのハードウェアの制約やアーキテクチャの違い、置かれる環境、障害発生時といったさまざまなことを考慮して、AIモデルを開発する必要があります。

エッジAIの活用事例

エッジAIの代表的な活用例は下記となります。

・監視カメラ
セキュリティカメラの画像解析が一般的です。カメラそれぞれにAIを搭載することでシステム構成がシンプルになり、可搬性に優れます。また、クラウドでAIを実現する場合に比べて応答性に優れ、通信量も削減できます。

・スマート工場
カメラやセンサーを利用して、AIで欠陥を検出して製品の品質の安定化を図ります。また、機器の稼働データを利用して、生産プロセスの最適化や生産性の向上を達成します。
その他にも、危険な状況を検出して工場内の安全リスクを低減するためにもAIが用いられています。工場内でエッジAIを活用することで、データを外部に公開することはありません。

(参考)エンドポイントAIの活用事例

・医療デバイス
ネットワークに参加していないデバイス、例えば心電図デバイスにおいて異常波形を検知します。

・ウェアラブルデバイス
血中酸素濃度や血糖値、睡眠パターンなどの異常をリアルタイムに検知します。

まとめ

クラウドAIとエッジAI、エンドポイントAIの違いを示し、とくにエッジAIについてメリット・デメリットを紹介しました。製品にAIを導入する際には、それぞれの特徴を把握して適材適所でAIを用いることが重要です。AIを検討したが期待外れの結果となり、PoCで終わったという声をよく聞きます。AIに対して過小評価も過剰な期待もすることなく、解決したい課題を明確にして適切なAIを選択するようにしてください。

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2023年10月24日公開
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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