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「SysMLによるシステムモデリングの実際 -システムモデリングに取り組む動機(2)-」
2016.02.18 株式会社オージス総研 時岡 優
・はじめに
- 複数ある方式から最適解を決めきれない
- 怖くて制御モデルを変更できない
- 仕様の漏れ、誤解釈による手戻りが減らない
- 次世代製品のコンセプトが定まらない
- システム全体で期待した性能が出ない
- 新機種のアーキテクチャ見直しに自信が持てない
・本質的な問題
- ニーズ・課題との乖離
- 組織の壁
- 部分最適から抜け出せない
- 目的や根拠が曖昧
- ノウハウが伝わらない
- <ニーズ・課題との乖離>
顧客やその業務が見えていない状態です。自分たちが作っている製品がどのように使われているのか、何が課題かを捉えきれておらず、製品を市場に送り出してもシェア争いで競合製品に負けてしまっています。
また、顧客の情報は保有しているものの、営業サポート、商品企画、先行開発などの部署間の連携が弱いために、結果として作り出される製品に顧客の声(Voice Of Customer)を反映できていないこともあります。
- <組織の壁>
企画構想段階における部署間の連携の弱さは「ニーズ・課題との乖離」でも触れましたが、それ以外にも、設計段階での部署間の連携の弱さが挙げられます。メカ、エレキ、ソフトといった異なる技術分野間での連携です。また設計と製造など、工程をまたがった部門間の連携もよく問題になります。同じメーカー内であっても筆者には別会社のように映ることもあります。サプライヤー等が絡んでくるとさらにややこしくなります。このような組織の壁があることによって、そのメーカー内にある貴重な情報が円滑に流れず/活かされず様々な問題を引き起こします。
- <部分最適から抜け出せない>
担当者の視野が狭くなり、思考が制限されてしまっている状態です。発生した要求や問題に対して、俯瞰的、多面的に捉えることができず、パッチ当てのような対策しかとることができません。その繰り返しによって、複雑怪奇になっているシステムは枚挙に暇がありません。
- <目的や根拠が曖昧>
目的-手段の連鎖をとことん追求する事なしにシステム開発を適切に遂行することは不可能であると筆者は考えています。物事には必ず原理原則があり、判断には必ず根拠があります。勘や経験によるところも否定はできませんが、筆者が担当している案件を見る限りでは、その勘や経験もだいぶ弱くなっている印象を受けます。実際には既存の仕様書や図面、制御モデル、従来機などの過去の資産が担当者の足りないところをカバーしているのですが、その資産が作られた頃からシステムの変更部分も多くなり、かなり限界がきてしまっている印象です。いざ過去の資産を変更しようとしても、目的や根拠(設計意図)が残されていないために、設計に時間がかかったり、予期せぬ不具合を埋め込んだりしてしまいます。
- <ノウハウが伝わらない>
筆者自身がまだ30代ということもあるせいか、担当案件で一緒に活動するお客様側のメンバーは同じくらいの年の方が多いのですが、扱う製品、担当技術分野を問わず、どの現場でもノウハウの継承が不十分だと感じています。メーカー自体にはノウハウがあるのですが、後進に伝承できていないのです。
さらに厄介なのは、後進が分かっていないことに管理職層が気づいていないという状態です。できて当たり前という管理者(承認者)の思い込みが重大な不具合を後工程に垂れ流してしまうのです。
・本質的な問題の因果関係
図1. 問題の因果関係
- スペック重視(コンセプト軽視)
- 分業化・専門化の進展
- アーキテクチャの使い回し
- <スペック重視(コンセプト軽視)>
ターゲットする市場や顧客が大きく変わらないため、機能を増やすことや性能を上げることに関心が偏り、機能過多や過剰性能になりがちです。「カタログスペックの横にらみ」という表現を耳にすることがあります。
競合製品との比較に関心が偏り、ターゲットとする市場や顧客が置き去りになってしまうのです。顧客を起点にした一貫性のある製品開発が疎かになる中で、いつの間にか先行研究や商品企画の部署がうまく機能/連携しない状態に陥ってしまいます。
- <分業化・専門化の進展>
似たような製品を作り続けるため、開発の組織自体が最適化されます。結果的に個人の担当範囲が限られることが多く、製品全体や他の人の担当範囲との関連性が弱くなります。各担当者の視野や思考が狭くなるため、異なる技術分野の担当者と十分な議論ができなくなってしまいます。
- <アーキテクチャの使い回し>
過去の資産を使い回して一部を改良・最適化することで、新たな製品として市場に出すことが多くなるため、原理原則に立ち戻って検討する機会が減ります。結果として、ノウハウを継承する機会に恵まれず、後進の開発力低下を招きます。
全てではありませんが、製品開発の大半は派生開発であり幾重にも繰り返されているのが実状です。このような派生開発の繰り返しを背景として、知らず知らずのうちに、5つの本質的な問題が各メーカーに共通的に内在し、個々の問題が様々な形で顕在化していると筆者は考えています。
・本質的な問題の俯瞰
図2. 製品開発に生じているギャップ
・まとめ
次回からは、この本質的な問題を切り口として、筆者が各メーカーの方々と一緒に進めているシステムモデリングの取り組みについて紹介していく予定です。
*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。
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