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「SysMLによるシステムモデリングの実際 -システムモデリングの取り組み(1)-」
2016.04.28 株式会社オージス総研 時岡 優
・はじめに
・本質的な問題に対する対策
図 1. 本質的な問題に対する対策
ここに挙げたことは、当たり前のことのように思われるかもしれません。しかし"できているようでできていない"、"形式的になってしまっている"というのが実際ではないでしょうか?最近では、MBDやMBSE、1D-CAEなどといったバズワードが飛び交っていますが、その時の流行りや目新しい技術に振り回されるのではなく、まずは基本的なことにしっかりと取り組んでいく必要があります。その上で、必要に応じて新たな手法や考え方で補っていくというのが着実で現実的なアプローチだと筆者は考えています。
・「組織の壁」への対策
- <複数部署からなる検討体制の構築>
言葉尻だけで捉えてしまうと、新たな組織を作る必要があると受け取られてしまうかもしれませんが、実はそうではありません。なぜなら筆者が関わったメーカーの多くは既にこの体制が構築されており、技術検討会やワーキンググループ、デザインレビューなど様々な呼び名で複数の部署が集まり議論する場や機会が設けられているからです。図 2に複数部署からなる検討体制の例を示しました。
図 2. 複数部署からなる検討体制の構築
- 左側に示されているように、"特定分野に依存しない領域の検討"を複数の分野の担当者が集まって検討します。いわゆるシステムエンジニアリングです。そしてその検討結果をもとに各部署が"分野毎"の検討を行います。必要に応じて検討結果をシステムエンジニアリングにフィードバックし、洗練します。このような検討を、商品企画のようなコンセプトレベルから、システム構成部品の設計などのコンポーネントレベルまで繰り返します。
ここに示した体制そのものではないですが、メーカーごとに様々な形で複数の部署や分野の人たちが集まって議論・検討する体制が既にあると思います。しかしこのような体制になっている意図や目的はしっかりと理解されているでしょうか?形式的になってはいないでしょうか?また力のある部署が場を支配してはいないでしょうか?組織体制にしてもプロセスにしても、枠組みが先行してしまいその心(目的や意図)が置いて行かれてしまうことがよくあります。
大切なのは体制やプロセスなどの枠組み自体ではなく、その心を共有し伝承することによって常に機能し続けることです。そのため、置かれている状況に変化が生じれば、体制に見直しをかける必要がでてきます。例えば、ソフトの規模が小さかった頃とは異なり、現在ではソフトの果たす役割が大きくなっています。弊社のお客様の取り組みでは、以前は製品の企画仕様が決まった後からソフトの担当者が検討や議論に参加していたのですが、開発の初期からメカ・エレキ・ソフトの担当者が議論や検討に関与するように体制を見直したことによって、手戻りの削減やリスクの軽減、性能改善に効果が出てきています。
- <共通言語による意思疎通>
複数の部署が集まって議論するときのネックは、文化や考え方、普段の業務で使用している表現ツール(言語)などが異なるところです。特に表現ツール(言語)は、例えばメカ/電気CADやSimulinkなどのように、その業務に特化しています。同じ分野の人たちがコミュニケーションをとるのには十分ですが、異分野間での意思疎通にはあまり適していません。そのため、複数の部署の意思疎通を目的とした共通言語が必要になります。図3にSysMLを共通言語とした例を示します。
図 3. 共通言語による意思疎通
- SysMLとは"Systems Modeling Language"の略称であり、複雑なシステムの分析、仕様決定、設計、検証、および妥当性検証をサポートする汎用的なグラフィカルモデリング言語です。OMG(Object Management Group)によって、その仕様が策定されています。
とても簡単に説明をすると、SysMLは自然言語よりも厳密でありながら分野固有言語よりも汎用的な表記法です。自然言語だと曖昧になってしまう情報を明確に表現することによって誤解を減らすことができます。表形式に比べてグラフィカルに情報を捉えることができるため、工夫が必要ではありますが、情報の偏りや抜けが見つけやすくなったり、全体を俯瞰しやすくなったりします。さらにSysMLには拡張性があるためSimulink やModelicaなどの分野固有言語との連携も可能です。
弊社のお客様の事例では、ソフト設計者が再整理した要求の妥当性をメカの担当者に確認するための表現方法として活用しました。メカの担当者はSysMLを知らない状態でしたが、簡単な補足説明をするだけで、当初の目的であった要求の妥当性確認を円滑に進めることができました。また別のお客様では、車両のデザイン(意匠)を具体化するための過程(プロセス)をSysMLで表現することによって、開発の初期に、企画や開発、製造などの関係者間で認識を合わせています。SysMLを様々な目的に応じて使い分けることで、これまで表現できていなかったことが表現できるようになり、製品のライフサイクル全般のあらゆる局面において業務を円滑に進めることできるようになります。
・まとめ
*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。
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