WEBマガジン

「業務棚卸しから業務改善へ」

2016.11.21 株式会社オージス総研  小山 孝司


昨今、企業内で「コンパクトワーク」や「ワークダイエット」というような表現で業務の効率化を目指す動きが浸透しています。効率的に業務を行うことにより、空いた時間を個人のスキルアップ活動や業務外での自己実現に有効に活用しようというものです。

業務を効率化する方法については、少し前になりますが、「業務棚卸しのススメ」という拙稿を掲載させていただきました。今回は、その中で十分触れられなかった「業務改善」に焦点を当ててみたいと思います。
業務棚卸しの対象業務が十分に効率化されていない場合には、図1.に示すように「業務改善」のステップを置きます。

業務棚卸しのステップ(業務改善ステップ付き)
図1. 業務棚卸しのステップ(業務改善ステップ付き)

1.業務改善の観点

特定の個人が長期間その業務を担当し、上長よりも業務をよく知っている場合などは、属人化の問題のほかにも、業務の進め方等に他人の目が入らず、旧来からの進め方がそのまま続けられるという問題があります。慣れているがあまり効率的でない進め方や丁寧過ぎる仕事をしていることもあります。そのような場合には、凝り固まった価値観、業務へのこだわりを打破することが必要になります。業務改善の観点としては表1.のようなものがあります。
表1. 業務改善の観点(例)
改善の観点業務の状態と改善案
廃止実施する目的が分からない業務は、よく調べてみて、それでも必要性が乏しい場合は廃止します。
頻度削減定期的に行っている業務は、法制度対応を除き、頻度の合理性や他の情報の活用を検討し、極力頻度を低減します。
合理化業務にかかる費用(人件費など)とその業務から得られる効果を比べて、費用対効果が十分でない場合は廃止や削減を考えます。
集中化同様の業務を複数の組織で実施している場合、単一の専門組織に役割と責任を集中します。
システム化間違いの起こりやすい転記処理や記載事項のチェック、大量のデータ処理などは人手によらないシステム化を検討します。
権限委譲決裁ルートの階層があまり多いのは非効率です。決裁者を案件の実施に責任を負う者(3階層程度)に限定します。(社内規程の改訂が必要)
基準緩和申請のチェック基準等を緩和することで業務量を減らせる場合、緩和することによるリスクと削減できる費用を比較して緩和の是非を検討します。(社内規程の改訂が必要)
均質化
(マニュアル化)
業務の仕方が個人によりまちまちでは、業務が属人化し、ノウハウが共有されないため、標準化(マニュアル化)し、サービスレベルを均質にします。
簡素化申請書の記載事項などについては、不要なものは排除し、可能な限り簡素化します。(個人情報保護の観点からも有効)
外注化業務遂行上の判断を要しない業務(ノンコア業務)については、機密保持に配慮したうえで、事務担当者や外部に委託します。

2.業務改善の進め方

業務改善のステップは、大きく分けて以下の二つの進め方があります。
(1) 業務改善担当(特命社員やコンサルタント)が改善策を策定する
(2) 業務担当者と業務改善担当(特命社員やコンサルタント)が協同で改善策を策定する

(1)は、第三者の目で、非効率と思われる業務や時間のかかっている業務について、上記改善の観点と照らし合わせたり、ベストプラクティスを参照したりするなどして、「業務はこう実施すべき」という改善策を策定する方法です。
(2)は、業務担当者や業務管理者の問題意識を集約したうえで、業務担当者と業務改善担当(特命社員やコンサルタント)が一緒になって、上記改善の観点などを参考にしながら議論をし、改善策を作りあげていくという方法です。手間はかかりますが、腑に落ちやすく、自分たちが改善策を策定したという自負心もあり、定着しやすいと私は思います。
(2)の具体的な進め方としては、業務棚卸しの際に記入していただく業務調査シートから業務にかかる作業時間を把握し、また、ヒアリング時に業務遂行上の課題を一緒に聞くことにより、長時間かかる業務、課題のある業務を集約して課題リストを作成します。課題リストの1件1件について、業務担当者と業務改善担当が一緒になって、改善のアイデアを出し合い、実現性の検討、効果の評価、他組織との調整、管理組織への社内規定改訂の打診などを行い、改善策を策定していきます。表2.に課題リストの例を示します。

表2. 課題リスト(例)
※↑タイトルのクリックでPDFが開きます。 課題リスト(例)

表2.の内容は、掲載のためにぼやかしているので分かりづらいと思いますが、実例ですのでかいつまんで内容をご紹介します。
No.2「ICカードを別の媒体に変更」は、製造中止になったICカードによるデータ収集の代替策が緊急に必要という課題であり、業務担当者のアイデアに弊社が実現方法を肉付けし、QRコードとLANによるデータ収集方法を立案し、後日実現の運びとなりました。
また、これらの内容を管理組織に報告した結果、No.8「必要な報告及びデータの整理」については、「検討を進めていく」という判断をいただき、本当に必要な報告やデータを検討し、厳選することにより業務削減につなげることになりました。

最後になりますが、業務改善はコンサルタントの支援がある方がスムースに進められると思います。業務を一番よくご存知なのはお客さまですので、お客さまがコンサルタントと一緒になって業務改善に取り組まれるのが良いのではないかと思います。


マニュアル化については、「「業務の見える化」とは?」 をご参照ください。
また、外注化の参考として、「BPOに活かすITガバナンス」もご参照ください。

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

『WEBマガジン』に関しては下記よりお気軽にお問い合わせください。

同一テーマ 記事一覧

「業務改善プロジェクトの進め方(その2)」

2016.12.13 製造 株式会社オージス総研  宇野 泰三

「システム導入後の効果の評価」

2016.02.18 ITガバナンス 株式会社オージス総研  小山 孝司

「業務改善プロジェクトの進め方」

2016.01.21 製造 株式会社オージス総研  宇野 泰三

「“ワークスタイル変革”では何が必要か?」

2015.03.20 ITガバナンス 株式会社オージス総研  大澤 登士弘

「業務棚卸しのススメ」

2013.06.18 ITガバナンス 株式会社オージス総研  小山 孝司

「BPOに活かすITガバナンス」

2012.06.12 ITガバナンス 株式会社オージス総研  小山 孝司

「UMLビジネスモデリングのご紹介」

2011.07.03 ITガバナンス 株式会社オージス総研  小山 孝司

「「業務の見える化」とは?」

2010.07.04 ITガバナンス 株式会社オージス総研  小山 孝司