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「「続」スマートグリッド社会成熟度モデル(第4回)」

2011.06.06 株式会社オージス総研  乾 昌弘

1.はじめに

 スマートグリッドやスマートコミュニティなど低炭素社会をめざした取組みに注目が集まっています。しかし、以前は別々に実施されてきた内容をスマート○○として統合的に扱うため、それぞれの関係がわかりにくくなっているのも事実です。そのため昨年度は、特に住宅地域を対象にスマートグリッド社会成熟度モデルの作成[1] [2]を行ないました。その後、環境省が公表した温暖化対策中長期ロードマップ試案[3]が一部改訂されたため、部分改訂したモデルを中心に簡単に再度御紹介します。

2.スマートグリッド社会成熟度モデルとSmart Grid Maturity Model (SGMM)との関係

 その前に「スマートグリッド社会成熟度モデル(1)」7月号で紹介しました米国カーネギーメロン大学が発表しているSGMMとの違いを、視点(Viewpoints)を使って説明したいと思います。大局的な視点では、スマートグリッド社会成熟度モデルは、社会(サービスを受ける側)の視点から、SGMMは、企業(サービス提供側)の視点からモデル化をしています。従って、表1に示すように具体的な視点の内容は、部分的には内容が重なっていますが、かなり違ったものになります。重なっている内容に関しては、「スマートグリッド社会成熟度モデル(5)」11月号を参照して下さい

表1.SGMMとの比較
SGMMとの比較

表2.スマートグリッド社会成熟度モデルの概要(改訂版)
スマートグリッド社会成熟度モデルの概要(改訂版)

3.スマートグリッド社会成熟度モデルの概要(改訂版)

 それではモデルの改訂についてですが、スマートグリッド社会成熟度モデルの内容の説明については、「スマートグリッド社会成熟度モデル(2)」8月号を参照して下さい。ここでは、改訂したポイントだけを述べたいと思います。
 分散型電源/熱源について、環境省が公表した温暖化対策中長期ロードマップ試案にある2020年の目標値をレベル5に設定しています。昨年のモデル作成時には、燃料電池の目標台数を明示されていなかったため、レベル2から上位は、燃料電池とCO2冷媒ヒートポンプの割合を同じと仮定して、電力自給率を計算しました。今回は、燃料電池の2020年での目標が、100万台と明示されたため、電力自給率を改定いたしました。レベル5での自給率は、55%以上から43%以上に変更になっています。

4. スマートグリッドに関する課題整理

4.1. 背景

 スマートグリッド社会成熟度モデルの各レベルに達するための課題が存在します。他方、スマートグリッドに関する課題も多種多様に指摘されているため、体系的に整理することが重要であると考えました。
 米国連邦エネルギー規制委員会(FERC)のスタック報告書[1]には、需要応答を実現するための課題として、法的課題技術的課題その他の課題(顧客の認識と顧客への教育の欠如、環境への影響に対する関心)の3項目が挙げられています。また、スマートグリッドを動かす3つの要素は、政策消費者技術であるという意見[2]もあります。これらを参考にして課題整理を行いました。

[1] 加藤敏春「スマートグリッド革命(エネルギー・ウェブの時代)」P171~P172、2010年7月刊
[2] Ann Burns「ビジネス羅針盤」エネルギーフォーラムP104-P105、2010年12月号

4.2. 基本的な考え方

 まず、新しい社会を構築するためには、前提として住民関係者の理解が非常に重要となります。次に基本的な課題には、政策法的課題技術的課題が存在します。政策・法的課題は、住民や関係者の同意が前提となります。さらに具体的な課題は、大きく分けて、利便性信頼性経済性に対する課題が存在します。
(1)利便性:以前も述べましたように、快適性を含め現状なみに確保されるという前提で話を進めます。
(2)信頼性:安全性に対する課題、セキュリティに対する課題、系統安定化に対する課題があります。
(3)経済性:装置などのシステムコストに対する課題、ユーザ負担に対する課題、相互運用性に対する課題があります。
 この続きは次号で行います。

(※)以上の内容は、下記の文献をもとにやさしく解説しました。
[3] 乾昌弘、宗平順己「スマートグリッド社会成熟度モデルと課題整理」経営情報学会2011年春季全国研究発表大会、2011年5月

 執筆者略歴
乾昌弘 技術士(情報工学部門)
株式会社オージス総研 技術部 部長補佐
1979年:京都大学工学部精密工学科卒業
1981年:東京大学大学院工学系研究科修士課程修了
1981年:大阪ガス入社
1991年:オージス総研出向
2003年:財団法人エネルギー総合工学研究所出向
2006年より現職

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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