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「「続」スマートグリッド社会成熟度モデル(第7回)」

2011.09.09 株式会社オージス総研  乾 昌弘

1. 今まで検討したまとめ

 世間的には夏休みだったということもあり、まず今まで検討したまとめをしたいと思います。なお、10月以降も頑張って連載をしたいと思います。
 図1は、今まで検討した項目の関係を表しています。

「スマートグリッド社会成熟度モデルの説明」 昨年8月号(スマートグリッド社会成熟度モデル 第2回)及び 6月号(「続」スマートグリッド社会成熟度モデル 第4回)
「スマートグリッドに関する課題整理」 6月号(「続」スマートグリッド社会成熟度モデル 第4回)及び 7月号(「続」スマートグリッド社会成熟度モデル 第5回)
「成熟度レベルアップのための施策及び方策」 8月号(「続」スマートグリッド社会成熟度モデル 第6回)
「めざすスマートグリッド社会及びサービス」 昨年10月号(スマートグリッド社会成熟度モデル 第4回)
「CMUのSGMMとの対応付け、標準化に関することがら」 昨年11月号(スマートグリッド社会成熟度モデル 第5回)

検討項目関係図
図1 検討項目関係図

「その他の話題」

「スマートグリッドで扱われるデータ量」 昨年9月号(スマートグリッド社会成熟度モデル 第3回)
「ガスメーターは、スマートメーター」 昨年9月号(スマートグリッド社会成熟度モデル 第3回)
「めざすスマートグリッド社会と標準化との関係」 昨年11月号(スマートグリッド社会成熟度モデル 第5回)
「スマートコミュニティアライアンス」 昨年11月号(スマートグリッド社会成熟度モデル 第5回)
「CO2削減に触れなかった理由」 昨年12月号(スマートグリッド社会成熟度モデル 第6回)
「利用者負担」 昨年12月号(スマートグリッド社会成熟度モデル 第6回)
「デマンドの平準化」 昨年12月号(スマートグリッド社会成熟度モデル 第6回)
「燃料電池車普及に向けたインフラ整備シナリオの経験より」 3月号(「続」スマートグリッド社会成熟度モデル 第1回)
「EV普及が黎明期の充電インフラについての考察」 3月号(「続」スマートグリッド社会成熟度モデル 第1回)
「スマートコミュニティのねらいとスマートグリッド社会成熟度モデル」 4月号(「続」スマートグリッド社会成熟度モデル 第2回)
「実証実験の課題とスマートグリッド社会成熟度モデル」 4月号(「続」スマートグリッド社会成熟度モデル 第2回
「集中型電源と分散型電源(熱源)のバランス」 5月号(「続」スマートグリッド社会成熟度モデル 第3回)
「スマートグリッド展2011で印象に残ったこと」 7月号(「続」スマートグリッド社会成熟度モデル 第5回)

2. スマートグリッド社会に関係する意見

 ここでは、関係するであろう社外の意見を列挙したいと思います。

(1)「スマートグリッドは、数年のうちにステップを踏みながら普及していくと考えられる。」(経産省 基調講演 2010年7月)
→ レベル別のモデル化の必要性再認識いたしました。
(2)「家庭の群管理でならし効果がある。」(電器メーカー 2011年6月)
「クラスター型スマートグリッドの普及」(大学教授 2011年6月)
「蓄電池を町のインフラと捉える。」(経産省 2011年6月)
→ 住宅地域をグループ化して捉える適切さを確認できました。
(3) 「ドイツのMoMaプロジェクトの目標の一つが、
 ・住宅(セル)ひとつひとつがエネルギーの自給自足を行い、不足する場合は隣の住宅(セル)からエネルギー融通を受けることで、地域レベル(マイクログリッド)でのエネルギーマネジメントを実現
 ・将来的にはマイクログリッド間での融通も視野に含む」(経産省 2011年6月)
 → 同様に住宅地域をグループ化して捉える適切さを確認できました。

 スマートグリッド社会成熟度モデルは、将来に向かっての内容であるため、実証実験の結果や社会の状況をフォローして検証してまいりたいと考えています。

3. 東大CEE主催シンポジウムより

 6月に東大エネルギー工学連携研究センター主催「エネルギーシステムインテグレーション-スマートグリッドがもたらすもの-」シンポジウムに参加して参りました。特に企業の方の発表で私の印象に残った内容(メモった要約)を御紹介したいと思います。

(1)「スマートグリッド 海外の実証の動向」
GEエナジー 鈴木浩氏
○ スマートグリッドは4つのE(Economy, Energy Security, Environment, Empowerment Customer)で表せる。
○ スマートメーターには、遠隔遮断スイッチがあるため、緻密な計画停電ができる。
○ 家内で、EV充電量と通常の家電使用量を将来的に分ける必要があるかもしれないため、スマートメーターにその機能を付け実証実験をしている。
○ アメリカでの調査では、68%の人(Savers, First Coasters, Control Freaks)が節電に協力してくれる層に属する。
○ シミュレーション結果では、昼間のピークカットを大勢でやると、夜間にピークを迎える(リバウンド)状態が起きうる。従って、上記の68%の人々と連携することも一つの方法である。

(2)「日産リーフに見る電気自動車の市場受容性と社会システムとしての展望」
日産自動車 上田正則氏
○ EVであるLEAFは、24kWhのリチウムイオンバッテリーを積んでいる。
○ バッテリーが、床に薄く敷くラミネート化されているので、車内空間を広くとれる。
○ ガソリンエンジン車に比べて、走行性と安定性にすぐれている。
○ カリフォルニアの調査によると、自動車は94%の時間、駐車場に留まっている。従って、スマートハウス、スマートコミュニティのバッテリーとして利用できる。
※ 有益な内容の御講演をいただいたお二人、及び東京大学の関係者の方々にこの場をお借りして感謝申し上げます。

4. 次号の予定

 10月号では、スマートグリッド社会成熟度モデルで、レベルアップするためのロードマップについて、御紹介したいと思います。ご期待下さい。

「あとがき」賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ

 私は座右の銘などというりっぱなものはありませんが、かつて、政治評論家の竹村健一氏がテレビ番組でよく言われていた「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ。」ということばが好きです。若い頃よく失敗したからです。平たく言えば「賢者は他人のトラブルや失敗をみて用心するが、私のような凡人は自分が失敗して初めて気をつけるようになる。」と言ったところでしょうか?

 まず、1988年中国で列車どうしが正面衝突し、日本の修学旅行生も犠牲になりました。「中国は遅れている。」と思っていたら、1991年信楽高原鉄道で正面衝突事故が起きました。次に1994年のロサンゼルス地震で高架道路が壊れましたが、テレビ番組で解説者が「日本ではありえない。」と言っていました。しかし、翌年に阪神大震災が起き、阪神高速道路神戸線は横倒しになりました。横倒しなど思いもつきませんでした。それ以降、全国の高速道路で補強工事が実施されました。また、1986年チェルノブイリで原発事故が起こりました。「ソ連は技術が遅れているのかな。日本ではありえない。」と思いました。2004年インド洋で大津波が起きました。そして、今回の東日本大震災。

 特に高速道路の倒壊や福島原発の事故を考える時、歴史に学ぶものはなかったのか、と思ってしまいます。なぜ、日本の高速道路や原子力発電所は、安全だと信じていたのでしょうか?「人の振り見て我が振り直せ」という故事は、最近ではあまり使われなくなってきましたが、深い意味を持っているように思えます。

 執筆者略歴
乾昌弘 技術士(情報工学部門)
株式会社オージス総研 技術部 部長補佐
1979年:京都大学工学部精密工学科卒業
1981年:東京大学大学院工学系研究科修士課程修了
1981年:大阪ガス入社
1991年:オージス総研出向
2003年:財団法人エネルギー総合工学研究所出向
2006年より現職

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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