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「スマートグリッド社会成熟度モデル Part3(第3回)」
2012.07.12 株式会社オージス総研 乾 昌弘
5月号の5つの視点からの評価項目を2項目ずつ選び出して合計10項目とし、レベル1~5に分け、達成すべき内容を定義しました。表1にスマートグリッド社会成熟度モデルの概要を示します。ただし、前号の内容に基づき、「住民の理解」の内容を改訂しました。
1. 分散型電源/熱源
分散型電源及び熱源の評価基準は、環境省が公表した温暖化対策中長期ロードマップ試案[1]を参考に定めました。それによると、高効率給湯器が全世帯の80%、太陽光発電1300万世帯(一戸建て世帯の約50%に相当)を目指していますが非常に高い目標であるので、この普及率を最高レベル5としました。また、このうち潜熱回収型給湯器は、50%の普及率を目指しています。
レベル1は現状を考慮して目標値を設定、レベル2~5は等配分しました。
[1]「温暖化対策中長期ロードマップ試案」環境省ホームページ、2010年2月
2.地産地消
2-1.電力自給率
電力自給率は、戸建てが対象です。
電力自給率=Σ分散型電源(効率目標×普及率) で求めました。
(1) | 在の太陽光発電の各世帯電力自給率は55%、今後の2倍近い効率向上で効率目標は100%としました。 |
(2) | 過去の燃料電池実証実験での電力自給率は約30%、発電効率の向上及び蓄電池の効果により効率目標は70%としました。 |
(3) | CO2冷媒ヒートポンプ使用の場合、電気使用量が33%増えると仮定しました。 |
2-2.熱融通世帯普及率
熱エネルギーはエネルギー量からみて非常に重要ですが、戸建てでは難しいため集合住宅を対象としました。また、伝熱ロスや配管などの設備、料金の設定方法に課題があるため、レベル5で30%以上としました。
3.住民の理解
(1) | 住民に対する啓発活動 |
前号の内容に基づき、改訂しました。 | |
(2) | 住民の満足度 |
レベル3で50%に設定しました。 |
4.各レベルの概要
おもに1章~3章の内容以外について説明します。
4-1.レベル1
現在の取り組みの延長線上にあります。ただし、数値的に温暖化対策中長期ロードマップ試案は非常に高いため、太陽光発電の代わりに他の再生可能エネルギーにより目標を達成してもよいのです。例えば、日本には、すぐれた小型風力発電機[2]があります。
[2] ゼファー小型風力発電機
http://www.zephyreco.co.jp/jp/
4-2.レベル2
住民に対する啓発活動は重要であるため、レベル2でインターネットを含め何らかの方法で始まっている必要があると考えています。また、この啓発活動の結果が活かされるように、例えば15分~30分間隔で、電気(ガス、水道)使用量関連の内容が見られ、それを基に省エネ行動ができることが必要です。
4-3.レベル3
レベル3では、スマートグリッド社会のカギとなる内容が現れます。
(1) | まず前提条件として、電力の時間帯別料金が設定されていることです。時間帯によって料金が違うと、高い時は系統電力はなるべく使わず、分散電源/熱源を効率よく使い、優先順位の高いスマート家電だけを使用します。安い時は優先順位の低いスマート家電も稼働させ、また電気を貯める方向に消費行動が動くことになります。時間帯別料金は、シーズンオフピーク、オンピーク料金、逼迫時料金、逼迫時払い戻し金、昼間/夜間/深夜料金などがあります。 |
(2) | 情報・アドバイス提供サービスが実施されていることが必要です。内容は、自宅の電気使用量が類似家庭と比べられる、対象地域の平均的な使用量がわかる、天候や電力需要量など予測も含めてエリア情報が見られる。各家庭に合ったアドバイスが受けられるなどです。 |
(3) | スマート家電の時間設定や優先順位の設定が可能なことです。例えば、洗濯乾燥機の稼動や冷蔵庫の霜取りの優先順位を下げる、冷蔵庫やエアコンの温度設定を上げるなどの機能が備わっていることです。 |
(4) | 省エネ及びコスト削減が実行できるように蓄電池及びスマート家電が普及していることです。定置用蓄電池は高価で場所も占有することからPHEVや電気自動車が家庭用蓄電池としても期待されています。また、蓄電容量が大きいため、エネルギーに対する影響度合いも大きくなります。(例:日産リーフ:24kWh、三菱MiEV:16kWh) |
4-4.レベル4
系統電力が逼迫した時に、自動あるいは手動でスマート家電のコントロール(デマンドレスポンス)ができ、停電時、家庭内の分散型電源で最低限の電力が賄えることです。学習制御中心の制御系HEMS、見える化による表示系HEMS及びデマンドレスポンスがうまく連動して、効果的なエネルギーの使い方ができるようになります。
4-5.レベル5
レベル1~4について、さらに定量的、定性的な向上が図られていることが必要です。
住宅については、上記のほか断熱効果を高くするなどの手段でも、省エネが計れます。これらは、住民に対する啓発活動で促進されると期待しています。
(※)以上の内容は、下記の文献を参考にやさしく解説しました。
[3] | 乾昌弘、宗平順己「低炭素社会をめざしたスマートグリッド社会成熟度モデル」経営情報学会2010年春季全国研究発表大会、2010年6月 |
表1.スマートグリッド社会成熟度モデルの概要(「住民の理解」改訂版)
5.あとがき
HEMSは、国の導入促進補助制度があり、ECHONET Lite(予定を含む)対応機器に対して、補助が現在行われています。HEMSが普及することを期待しています。
*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。
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