VANTIQによるスマートビルの構築 第3回 ~カメラによる顔認証結果を受け、セキュリティゲートやエレベータをリアルタイムに制御する機能を追加~
第2回までに、従業員がセキュリティゲートにICカードをタッチすると、従業員が働いているオフィスまで移動するエレベータを手配する仕組みを実現しました。この仕組みに対し、お客様から、「セキュリティゲートにカメラを設置し、顔認証できたら、セキュリティゲートを開き、エレベータを手配してほしい」という要望がありました。
そこで今回のコラムでは、前回までのコラムで実現したビルOSに、顔認証の機能をどのように追加するかについて説明します。
カメラによる顔認証から、セキュリティゲートの制御やエレベータを呼び出すまでの一連の流れ
- 従業員が出社してから、エレベータを手配するまでの一連の流れを説明します。
- 顔認証システムは、カメラに映った人物が、カメラ画像をもとに従業員であるかを判断する。
- 顔認証システムは、カメラ画像が従業員であると判断すると、ビルOSに従業員情報を連携する。
- ビルOSは従業員情報をもとにセキュリティゲートを開く。
- ビルOSは従業員情報をもとにエレベータの手配をエレベータシステムに要求する。
- エレベータシステムは、ビルOSが手配したエレベータを呼び出す。 3~5は第1回のコラムの流れと同じものとなります。
ビルOSとセキュリティゲート等の外部システムの連携に伴う問題点
本シナリオを実現しようとした場合、「顔認証システムとセキュリティシステム、エレベータシステムを連携させる機能」を1つのサービスにする必要があります。この場合、前回までに作成した「セキュリティシステムとエレベータシステムを連携させる機能」のサービスと部分的な重複が生じるなど、問題点が発生します。
問題点を説明するため、サービスを構築した場合の図を示します。
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このビルOSには、以下の問題点があります。
- 2つのサービスに「行き先指定」「エレベータ手配」の機能が、重複して実現されている。
- 2つのサービスからエレベータシステムに対して、エレベータ手配を行う情報連携を別々に行っている。 機能や情報連携が重複することで、機能改修を行う際に、改修期間が長くなったり、改修にかかわる費用が増大したりすることになります。
たとえば、エレベータ手配の機能を改修することになった場合、上図では2つのサービス、2つの経路をメンテナンスしなければなりません。もし同様のサービスが3つ以上あれば、同様にメンテナンスするサービスや経路が増えます。
VANTIQで実現したビルOSのシステム構成
- 「カメラによる顔認証から、セキュリティゲートの制御やエレベータを呼び出すまでの一連の流れ」は大きく3つに分けることができます。
- 顔認証システムで認証した結果、セキュリティゲートを開く。
- セキュリティゲートを開いた後、エレベータを手配する。
- 上記の1と2を接続する。
2については下図のように前回までに作成した「エレベータ手配サービス」で実現できています。
ここに、1の「顔認証システムで認証した結果、セキュリティゲートを開く」機能を「顔認証・セキュリティゲート連携サービス」として構築します(下図のミドリ線)。
最後に3の「顔認証システムで認証した結果、セキュリティゲートを開く」と「セキュリティゲートを開いた後、エレベータを手配する」の接続を実現します。
「顔認証・セキュリティゲート連携サービス」と、「エレベータ手配サービス」は個別で構築されています。この2つのサービスを連携させる必要があります。「データ送受信モジュール」内で、セキュリティゲートをオープンした後、通過者情報を「エレベータ手配サービス」へ連携することで2つのサービスを接続します。その結果、「顔認証で認証し、セキュリティゲートを通過したら、エレベータを手配するシステム」を実現しました。これで機能の重複なく、シンプルなイベントの連携で機能を実現できます。
VANTIQで実現するビルOSの特長
- ビルOSをVANTIQで実現する特長として、2つ挙げられます。
- IPAが提唱するスマートビルアーキテクチャの構成をそのまま表現できる。
- サービス間の接続を簡単に定義して、イベントの流れを表現できる。
『IPAが提唱するスマートビルアーキテクチャの構成をそのまま表現できる』について説明します。本コラムのシステム構成はIPAのスマートビルアーキテクチャ(外部サイト)の構成をベースに作られています。スマートビルアーキテクチャは、外部システムと連携する「データ送受信モジュール」と、外部アプリケーションと連携する「データ連携モジュール」で構成しています。VANTIQでは、「データ送受信モジュール」や「データ連携モジュール」をVANTIQの「サービス」でそのまま表現できます。本コラムでは「データ送受信モジュール」と「データ連携モジュール」が「データ連携/送受信モジュール」に該当します。
『サービス間の接続を簡単に定義して、イベントの流れを表現できる』について説明します。スマートビルアーキテクチャは「データ連携/送受信モジュールや「サービス」をつなぐことで柔軟的なサービス提供を実現します。VANTIQは「サービス」と「サービス」をローコードでつなぐことで、柔軟な機能提供を実現できます。本コラムでは「データ送受信モジュール」と「顔認証・セキュリティゲート連携サービス」と「エレベータ手配サービス」をつなぐことで、新しい機能の提供を行っています。
新規機能追加したスマートビルのシステムの動作について
最後に、新機能を追加したスマートビルのシステムを動かしてみます。
ここでは、セキュリティゲートに設置されたAIカメラと顔認証システムで認証を行い、セキュリティゲートを開き、エレベータを手配します。下図に認証前認証後のイメージ画像を掲載し、その後に冒頭のユースケースに合わせた解説を記載します。
- 顔認証システムは顔認証システムサービスにデータ送受信サービスを経由して、顔認証情報を提供する。
- 顔認証システムサービスは顔認証情報をもとに通過者(TNBT000003)と通過者が通過したセキュリティゲート(SecurityGate003)を特定する。
- 顔認証システムサービスはデータ送受信サービスに通過者情報(TNBT000003)と通過したセキュリティゲート情報(SecurityGate003)を送信する。
- データ送受信サービスは、通過者情報(TNBT000003)をエレベータ手配サービスに連携する。
- 前回のコラムで実現した、ICカード情報連携からエレベータを呼び出す処理を行う。 VANTIQを使用して、前回までのコラムで実現したビルOSに、「セキュリティゲートで顔認証時に、エレベータを呼び出す機能」を追加できたことを確認しました。
まとめ
今回のコラムでは、お客様の要望である「セキュリティゲートで顔認証時に、エレベータを手配する機能の追加」の方法を説明しました。機能が重複しないシンプルなシステム構成をVANTIQで実現しました。
続いて、ユーザーからは、フリーアドレスなオフィス内にAIカメラを設置し、社員の位置の見える化を実現したいといわれています。
2024年11月12日
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。関連サービス
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VANTIQ
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