VANTIQによるスマートビルの構築 第4回 ~AIカメラによる社員の見える化の実現~
前回のコラムでは、スマートビルにおいてAIカメラによる顔認証を使用してセキュリティゲートとエレベータを制御する仕組みをVANTIQで実現する方法について説明しました。この仕組みに対し、お客様から、「AIカメラを利用して、オフィスで働く社員の位置を見える化してほしい」という要望がありました。
そこで今回のコラムでは、「AIカメラによるオフィス内における社員の見える化」の実現を題材にして、スマートビルアーキテクチャと、VANTIQのイベントドリブン・ローコード開発といった特長を生かした、シンプルで拡張性の高いシステムを素早く構築する方法について説明します。「オフィス内における社員の見える化」を実現する仕組みについて
- AIカメラによる社員の見える化のユースケースを下記に記載します。
- AIカメラは、カメラに映る映像から、どの位置に顔が映っているかを特定する。
- VANTIQは、AIカメラが特定した顔画像から社員の名前を、顔が映っている位置から社員の現在位置を特定する。
- VANTIQは、社員の名前と社員の現在位置をダッシュボード上に表示する。 下図の通り、このユースケースではオフィスの特定範囲を撮影しているAIカメラを6台設置し、社員が映ったAIカメラの位置とカメラに映った顔の位置から、社員の現在位置を特定します。

「オフィス内における社員の見える化」を実現するシステム構成について
「オフィス内における社員の見える化」の仕組みは、前回構築したビルOSのアーキテクチャを利用して実現します。下図に「AIカメラによる社員の見える化」のシステム構成を記載します。
- システム構成をもとに、「オフィス内における社員の見える化」を実現するための処理の流れを説明します。
- AIカメラは映像からどの位置にどのような顔が映っているか(以降、顔情報と呼称)を識別する。
- AIカメラは顔情報とカメラIDをビルOSに連携する。
- ビルOSはカメラIDと顔情報を用いて、社員情報と社員の現在位置を特定する。
- ビルOSは社員情報と社員の現在位置を社員現在位置見える化ダッシュボードに連携する。
- 社員現在位置見える化ダッシュボードは社員情報と社員の現在位置を表示する。
VANTIQが実現するシンプルで拡張性の高いシステム開発
スマートビルは、時代ごとに刻々と変化する要望に応え続けるために、サービスを追加、更新する必要があります。そのため、シンプルで拡張性が高く、システムを素早く構築する必要があります。ここでは、「シンプルで拡張性の高いシステムを構築する」観点を「スマートビルアーキテクチャ」と「VANTIQのイベントドリブンアーキテクチャ」で、「システムを素早く構築する」観点を「VANTIQのローコード開発」で説明します。
- シンプルで拡張性の高いシステムを構築する。
- スマートビルアーキテクチャ IPAのスマートビルアーキテクチャは、外部システム/アプリケーションとの情報連携を「データ送受信/連携モジュール」で、スマートビルのサービスを「独立したモジュール」で、表現するシステム構成です。VANTIQはスマートビルアーキテクチャのモジュールをVANTIQのサービスでそのままマッピングできます。例えば、本ユースケースでは、「データ送受信/連携モジュール」である「AIカメラデータ送受信モジュール」や「社員現在位置情報データ連携モジュール」、「スマートビルのサービス」である「社員現在位置表示サービス」で表現できます。
- VANTIQのイベントドリブンアーキテクチャ IPAのスマートビルアーキテクチャは、「データ送受信/連携モジュール」とスマートビルのサービスである「独立したモジュール」を連携して、スマートビルのサービスを提供しています。VANTIQは、モジュール間の連携をイベントドリブンアーキテクチャによるサービス間のイベント連携として実現しています。例えば、本ユースケースでは、3つのサービス(「AIカメラデータ送受信サービス」/「現在位置表示サービス」/「社員現在位置データ送受信サービス」)をイベントで連携することで、スマートビルのサービスを提供しています。
- システムを素早く構築する。
- VANTIQのローコード開発 IPAのスマートビルアーキテクチャは、「データ送受信/連携モジュール」と「独立したモジュール」がそれぞれの役割に応じた機能を提供しています。VANTIQは、「データ送受信/連携モジュール」と「独立したモジュール」の機能を、ローコード開発で実装します。例えば、本ユースケースでは、「社員現在位置表示サービス」はAIカメラが送信した顔情報とカメラIDをもとに、社員情報と社員の現在位置を取得する機能を、下図のようにローコード開発で実装します。
IPAのスマートビルアーキテクチャは、シンプルなシステムを実現します。例えば、スマートビルでは、AIカメラの交換や追加が考えられます。その際、別のメーカーのAIカメラに交換した場合、「社員現在位置表示サービス」も作り直さないといけない可能性もあります。スマートビルアーキテクチャでは、AIカメラの仕様差分を「AIカメラデータ送受信サービス」で吸収し、「社員現在位置表示サービス」は、AIカメラに依存することなく、複数のAIカメラに対して、サービスを提供できます。

VANTIQのイベントドリブンアーキテクチャは、拡張性の高いシステムを実現できます。例えば、スマートビルでは、「AIカメラデータ送受信サービス」のデータを用いた新しいサービスを提供することが考えられます。その場合、「AIカメラデータ送受信サービス」のデータを利用する新しいサービスを構築するだけで実現できます。AIカメラの情報を受信する部分を再構築する必要がありません。


VANTIQでは、スマートビルに必要な機能をローコード開発にて容易に、素早く開発できます。
AIカメラによる社員情報の見える化の動作について
今回開発したアプリケーション動作を確認します。下図にシステムが動作するイメージと、冒頭のユースケースに合わせた説明をします。
- AIカメラシステムは、AIカメラシステムデータ送受信サービスを経由して、カメラIDと顔情報を社員現在位置表示サービスへ送信する。
- 社員現在位置表示サービスは、カメラIDと顔情報をもとに、社員の現在位置(中央フリーエリアデスクB-2)を特定する。
- 社員現在位置表示サービスは、顔情報をもとに社員情報(氏名「オージス太郎」、所属「S開ES5-2」)を特定する。
- 社員現在位置表示サービスは、社員現在位置データ連携サービスを経由し、社員情報と、社員の現在位置を社員現在位置見える化ダッシュボードに連携する。
- 社員現在位置見える化ダッシュボードは、社員現在位置情報をもとに、社員の現在位置をダッシュボードに表示する。
まとめ
今回は、AIカメラを利用してオフィスで働く社員の位置を見える化するアプリケーションの構築を通して、スマートビルのアーキテクチャとVANTIQのイベントドリブン・ローコード開発といった特長を生かして、シンプルで拡張性の高いシステムを素早く構築できることが確認できました。次回は、従業員の位置登録や位置情報の見える化をスマートフォンからできるように、VANTIQを使ったスマートフォンアプリケーションの構築を行います。2025年3月20日公開
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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