信州大学 頼富 雪乃さん、本堂 貴也さん、上田 弦輝さん、二村 健太さん、丸山 優さん
昨年11月11日に開催したオージス総研主催のソフトウェアアイデアコンテスト第12回 OSCA(OGIS-RI Software Challenge Award) 「混ぜると消える?ソフトウェアコンテスト」で最優秀賞を受賞された「Little Woods」チームへのインタビューをお届けします。
(画像は本選発表資料をもとに加工)
チーム「Little Woods」のメンバーと研究室ご紹介
(インタビューは本選後の11月某日オンラインで実施しました。)
-- Little Woodsの皆さん、あらためて最優秀賞おめでとうございます。今日はインタビューの機会をいただきありがとうございます。まず最初にお一人ずつお名前と、何か一言あればお話しいただけますか。
平岡- ではまず私から。チーム代表の修士1年 平岡 廉です。今回は、最優秀賞という非常に光栄な賞をいただけてうれしく思います。
久保- Little Woodsの鉄砲玉こと久保です。修士1年です。
-- 鉄砲玉、いいですね。
二村- 学部4年の二村 健太です。
上田- 学部4年の上田 弦輝です。
丸山- 学部4年の丸山 優です。
本堂- 学部4年の本堂 貴也です。やったぜ!
頼富- 学部4年の頼富 雪乃です。本選で話していた者です。
編集注:コンテストの本選では質疑応答や受賞コメントなどチームの方からお話しいただく機会がありますが、複数メンバーのチームは代表して話をする方がいらっしゃいまいた。
ZHAO- 中国からの留学生です。修士1年のZHAO(チョウ)です。
堀- 修士2年の堀です。2年前からオージス総研のコンテストに応募していたので、やっと念願の賞をいただけてとても光栄に思います。
-- 2年前からですか。毎年のご応募、ありがとうございます!
吉原- 修士2年の吉原です。メンバーは以上です。
-- 皆さん、ありがとうございました。10人とも研究室は同じですか。
平岡- 全員同じです。 信州大学工学部 小林研究室 に所属しています。
-- どのような研究をされているのでしょうか。
平岡- 小林研究室では人間と共生する情報システムのデザインをテーマとして、インタラクションデザインに関する研究とアグリテック(ICT農業・IoT農業・スマート農業)に関する研究をしています。私は農業用の自動運転車両の研究をしております。
-- 農業用車両というと、トラクターなどでしょうか。
平岡- 今は運搬機器みたいなものを想定しています。一般の農機は自動運転など機能性を高めるとどんどん高価格になるのですが、それをいかに低価格で実現できるかというのを目標に研究に取り組んでいます。
-- 意義のある研究ですね。インタラクションデザインの研究についても教えていただけますか。
吉原- インタラクション系と言ってもユーザーインターフェイスのデザインなど幅広くあるのですが、僕の研究は人が触れ合うようなロボットの外見の設計の部分を研究しています。例えば、Pepperみたいなロボットに外見として服装を与えたらユーザーはどういった印象を持つのかというような研究です。ロボットが消防員や警察官の服を着たときに、偉そうとか怒られそうとか、そういった印象を持たせることができないかといった未知の領域を研究しています。
-- 小林研究室の研究内容は、幅広いですね。
地獄のアイデア出しから始まるコンテスト
-- 研究内容をお聞きしたのは、今回のアイデアがみなさんの研究と重なるところがあるのかと思って質問しました。直接は関係なさそうですね。
優勝したアイデアの詳細は以下の文書からご覧いただけます。
アイデアを説明する文書「Gott sun」 (PDF: 約 1.4MB)
吉原- アイデアとしては本当に新規のアイデアです。技術的な面では画像処理をやっている学生がいたりしますが、アイデアとしてはまったく新しく考えました。先ほど少し話が出ましたが、うちの研究室は毎年オージス総研のコンテストに応募していて、毎回、地獄のアイデア出しから始まります。基本的に研究室のメンバー全員でコンテストに取り組むというコンセプトがあるので、10人全員でアイデア出しから始めました。
-- やはりしっかりアイデア出しをされているのですね。アイデア出しは大変でしたか。
丸山- 週に1回は集まってみんなでアイデアを出していくというのを2か月くらいはやったと思います。毎週1人あたり1個か2個のアイデアを出していると、4週目くらいになると10人でやっているのでかなりの数が出ます。そこからさらに新しいアイデアを考えていくというのが大変でした。多分、全部のアイデアを数えたら100個近くは出ていると思います。
-- アイデア出ししていくと数が出ますからね。難しいのは、出たアイデアを絞っていくところだと思いますが、どうされたのですか。
吉原- 単純に面白いか面白くないかですね。あと、ぱっと見たときに面白いと思えるようなインパクトは重視したと思います。
平岡- 昨年応募したアイデアが複雑だったので複雑過ぎてもよくないなという話は出ていて、シンプルなアイデアを採用しました。昨年は一次審査で落ちたんです。
-- それでも、今年もチャレンジしてくださってありがとうございました。私たちとしても、とても嬉しく思います。
編集注:コンテストの審査は一次、二次と2回の書類審査がある。二次審査を通過した作品が本選でプレゼンによる発表を行い、プレゼンの評価に基づいて最終的な賞を決定する。
実装は4年生が中心となって頑張った
-- 本作品はアイデア自体も良かったですが、それをプロトタイプとして作ってあるところも素晴らしいと思いました。本選での発表では、皿の認識や料理の認識、映像の生成などをデモで見せていただきましたね。いろいろな要素がありましたが、この10名でどのようにアイデアをカタチにしていったのでしょうか。
丸山- まず、この10人でグループを分けました。皿を認識してデータとして出力するグループと、そこにどう映像を落とし込むかというグループです。
-- やりたい事を、どんな手段で実現すればいいのかを考え、グループ分けして進めたらできそうというのは、皆さんで考えたのでしょうか。
丸山- 吉原さんに一任だった気がします。
吉原- 感覚的に実装できそうというのは最初の段階から想定はしていました。技術を組み合わせればいけるかなと。今回、実装は4年生たちが頑張ってくれて、M1、M2は後ろから口を出していただけという感じもあります。4年生を信頼して、頑張ってもらいました。
-- なるほど。すでに頭の中に実現するための絵が描けていたんですね。では、このあたりで4年生にお聞きしましょうか。実装ではどのような部分を担当されていましたか。
本堂- 僕は主に、皿認識と料理認識の部分のシステムの設計を担当していました。
上田- 僕は映像を生成するグループにいて、使えそうだなという映像を調べて取ってくるということをしていました。
-- 実装していく中で難しかったところはありますか。
本堂- 個人的には、撮影したカメラの映像とプロジェクターから出力する映像の大きさをまた別で合わせるキャリブレーションというものを使わないといけなかったのですが、そこで思った以上にみんな時間を取られてしまって、カメラ合わせのようなところが大変な印象でした。
-- ちょうどぴったりお皿の上に映すという加減?
本堂- そうです。
-- それを、がりがり実装していたのは、いつ頃なのでしょう。
平岡- 本当に必死になったのは二次審査の結果が出てからなので、10月くらいです。
吉原- 10月時点でパーツごとでは結構ちゃんと動いていて、その後の組み合わせの作業が二次審査後という感じでした。
-- 短期間で、個人の研究もしながらチームでコンテストの作品をゼロから作られたというのはすごいですね。
途中の変更が大変だった
-- M1、M2の方で大変だったところはありますか。
平岡- 料理認識は初めは料理だけに映像を当てる予定だったのですが、後になって料理だけではなく、料理には別の色を投影してその周りの皿に映像を投影しようという変更があったのが大変でした。
吉原- 内容的には微細な変更に思えてもシステム的には大規模な修正が必要で。
-- そうでしょうね。
吉原- 修正すると聞いたときには、まじかよって4年生は思っていたと思います。そこは先生からのアイデアだったのですが。審査用の資料を出す直前だったのでなかなかハードなスケジュールでした。
-- でも、いいと思ったら取り入れる姿勢が凄い。他に大変だったところはありましたか。
堀- 開発は4年生に任せきりだったので僕たちは資料作りやアイデア集めに従事していたのですが、それをまとめるのが大変でした。自分の価値観だけで遂行するものでもないですし、みんなの意見を取り入れながら進めるところがかなり大変でした。最終的には多数決のようにもなりますが、その上でどうブラッシュアップしていくか、翌週集まる時までにどのような方針にするかは結構考えたところだと思います。
-- 今回のアイデアはレストランなどお店ではなく家で普段の食事をおいしく見せるものだったと思うのですが、そのようなコンセプトやターゲットはどのように考えられたのですか。
平岡- 二次審査向けの資料を作成する際に、どんな人だったら使いたいと思うかターゲットを考えていました。具体的な利用シーンをイメージする中で、今のようなコロナ禍では家で使うほうが多いよね、みたいな感じで考えていきました。
タイトルの名前にもこだわった
-- 本選の話も聞いてみたいのですが、他のチームの発表を聞いてすごいなと思ったようなアイデアはありましたか?
平岡- 面白かったチームとしてはニジマスさんですかね。
吉原- タイトル(名前)と作品のアイデアの組み合わせもなかなか面白くて、なるほどなと思いました。
アイデアを説明する文書「ニジマス」 (PDF: 約 0.3MB)
-- 今回、名前にこだわるチームが多かったですね。ニジマスも、Gott sun(ごっつぁん)も。
吉原- Gott sunは1時間かけて考えました。アイデアが出て、その後どうにか面白いタイトルにしようと。
平岡- 方言からでしたね。
吉原- 「ごっつぉうさん」から連想してうまくアルファベットに置き換えられないか考えたような気がします。
最優秀賞が決まって雄たけびを上げた
-- 表彰式で順番に受賞チームが発表されたときはどう思われていましたか。
吉原- 表彰式でカメラに映っていたのは頼富さんで、実はその後ろのカメラに映らないところで他のメンバーがずらっと並んでいました。他のメンバーは別の大きな画面で表彰式を見ていたのですが、ゲスト審査員賞のニジマスさんが発表された時点でだいぶ盛り上がりました。
平岡- もう、来たかなと。
吉原- これは最優秀賞取れるんじゃないかと盛り上がりましたね。
-- じゃあ最優秀賞が発表された瞬間はものすごく盛り上がった?
吉原- 男ども全員、もう、雄たけび上げてました。
平岡- カメラに映っていた頼富さん達は冷静だったと思うのですが、周りはすごい盛り上がりで手を掲げたり、たたいたり。
-- そうなんですか。最優秀賞なのに落ち着いていらっしゃるなと思っていたのですよ。
平岡- 周りが騒ぎ過ぎていたので、自分たちは冷静にならないと、と思っていたんじゃないでしょうか。
頼富- はい。マイクはミュートにしていたので本選会場には聞こえなかったと思いますが、こちらでは廊下の向こうまで声が聞こえていて、うるさくてすいませんという気持ちでした。
-- でもこれだけ頑張ってこられての最優秀賞ですし、それはうれしいですよね。
将来したいこと
-- 最後に、このインタビューシリーズの恒例なんですけども、将来どんなことをやっていきたいのかを教えていただけますか。では、平岡さんから順によろしくお願いします。
平岡- 今回チームリーダーを担当したのでこの経験を生かして、将来、会社でも他社のエンジニアの管理などマネージャーの方面にも力を入れていきたいと考えております。
久保- 僕はエンターテインメント系のほうに行きたいと思っています。ゲームとか映画を作る職業に携わっていけたらなと思っています。
堀- 僕の将来的なイメージですが、この研究室での研究活動や今回のコンテスト応募に際したアイデア交換で、いろいろな人のいろいろな視点からのアイデアをもらえたと思うので、仕事に就いた後でもアイデアマンとしての立場は大事にしていきたいです。いいアイデアを出すことがいかに重要かというところは身に染みたので、今後もそういったところを心掛けていきたいと思っています。
吉原- M2のメンバーに関して言えばコンテストで過去2回落ちたのですが、今年初めて本選まで出場できた上に最優秀賞という結果も出ました。毎年、挑戦することによってよい結果が得られたので、こういう挑戦を忘れずに今後もやれたらいいかなと思います。
-- 落ちたのは残念!でも、新しいアイデアに3回チャレンジして1回ヒットするって、すごいことですよ!
ZHAO- 人々の生活をもっと楽しく、もっと良くなる仕事をしたいです。人々の生活をもっと楽しく、もっと便利に、もっと良くなりたいです。あるいは貧しい人にお金などの福祉を与える仕事をしたいです。
本堂- 自分の代わりに仕事・家事をやってくれるAIを作りたいです。自分はその間、世界一周旅行に行きます。
-- それいいですね!欲しいww
二村- 将来は、自分も含め多くの人を幸せにできるような意義のある仕事に携わっていきたいと思います。そのためにも、今回のコンテストに挑戦したように失敗を恐れずいろいろなことに挑戦していきたいと思います。
上田- 今回のコンテストを通して、ものづくりの面白さを再認識しました。将来の夢はまだ固まっていませんが、社会の課題や需要を把握して人々に喜んでもらえるものを作れる人間になりたいです。
頼富- 地元に貢献したいので地元就職がしたいです。
丸山- 今後やりたいことは、今回のコンテストを通してチームでの案出しや開発の重要性や楽しさを実感できたので、チームワークを重視した職や活動に携わることです。将来的には、チームリーダーとしてメンバーを引っ張っていけるようになりたいと考えています。
-- ありがとうございました。どれも素敵な内容ですね。このコンテストによって、面白いことや楽しいと思うことが見つかった方もいらしたことが分かりました。私たちにとって、これほど嬉しいことはありません。コンテストを続けてきて本当に良かったと思います。ありがとうございます。最後になりましたが、今後の皆さんのますますのご活躍をお祈りしています。長時間のインタビューありがとうございました。