昨年11月13日に開催したオージス総研主催のソフトウェアアイデアコンテスト第9回 OSCA(OGIS-RI Software Challenge Award) 「入れ替えスイッチソフトウェアコンテスト」で優勝したラピュタチームへのインタビューをお届けします。関西大学 高槻キャンパス(大阪府高槻市)にある総合情報学部を訪問し、優勝者インタビューに加えて、チームメンバーが在籍する研究室の米澤朋子教授にもお話を伺いました。
優勝チーム「ラピュタ」メンバーご紹介
チーム「ラピュタ」
関西大学 総合情報学部 辻ノ 翔子さん 佐々木 志織さん
関西大学大学院 総合情報学研究科 何 一澎さん 上野 楓さん 北岸 佑樹さん
―― コンテストの優勝、おめでとうございます。今日は皆さんの優勝までの経緯を中心にいろいろお話を伺おうと思っています。まずは自己紹介をお願いできますか。
辻ノ- 学部4年の辻ノです。今回のコンテストではリーダーをさせていただきました。
北岸- 大学院修士2年の北岸です。コンテスト本選当日は別の用事があっていけなかったのですが、今回のコンテストでは主に原稿や発表の準備をサポートしました。
上野- 同じく修士2年の上野です。コンテストでは全体的なサポートに入っていました。プレゼンでは主にシステムの部分を担当し、執筆では北岸さんと協力しながら全体の直しをしていました。
何- 大学院の何 一澎(カ イチホ)です。今回のコンテストでは、システムの組み立てと執筆をしました。本選の発表では一人の研究者という役割でシステムの実験について説明しました。
辻ノ- それから今日は都合がつかず参加できないのですが、チームメンバーにはもう一人佐々木さんがいます。今回のコンテストは、佐々木さんと一緒に学部で共同研究をしているテーマに基づいて応募したのですが、そのテーマを修士の皆さんにサポートしていただいたという形です。
研究内容が応募テーマにぴったりだった
―― コンテストに応募した動機は何だったのでしょうか。
辻ノ- もともとコンテストの存在を知らなかったのですが、米澤先生から「こういうコンテストがあるんだけど、やってる研究と近いんじゃない?」とお声掛けいただきました。コンテストのテーマが入れ替えスイッチだと聞いて、研究と近いテーマだし出してみようかなと思ったのがきっかけです。
―― 研究内容というのは簡単に言うとどのようなものでしょうか。
辻ノ- 半透明パーティションを用いてデスク環境を切り替えるというものです。デスクに半透明パーティション型ディスプレイを設置してそこにユーザーの作業状況や気分に応じた映像をプロジェクタで投影し、その映像を切り替えます。複数の人で使えば遠隔コミュニケーションも可能です。
―― なるほど。入れ替えというテーマに近いですね。そもそも、半透明パーティションを用いたデスク環境の切り替えという研究テーマはどこから着想されたんでしょうか。
辻ノ- もともと米澤先生と佐々木さんの間でデスク環境の切り替えというのが研究テーマとして面白いねっていう話をされていたんです。カフェで作業するときでも、作業内容や気分によって環境を切り替えられたらいいね、と。ちょうど私も個人の研究をどうしようか悩んでいたときだったので、そのテーマ面白いね、と乗っかった形でした。佐々木さんは環境の切り替えの部分を担当されていたのですが、私はその環境を用いたコミュニケーションの部分をやりたいな、と一緒に研究を進めていきました。
―― そうですか。先生からコンテストのことを聞かれたときは、研究を始めてどれくらいの時期だったんでしょう。始めたところだったのか、もう既に結構研究されていたのか。
辻ノ- 3年生のうちに研究テーマを決めて研究を進めていて、3年生の終わり頃に一度学会で発表したのですが、そのときに今回のテーマについて深く詰めていたんです。その後コンテストの話を聞いたので、コンテストの時には結構詰めていた内容をベースに応募できました。
―― タイミングがよかったですね。
辻ノ- はい。すごくよかったです。
優勝したアイデアの詳細は以下の文書からご覧いただけます。
アイデアを説明する文書「【46】半透明パーティションを用いた環境切り替えシステム」 (PDF: 約 0.9MB)
―― 先ほど実験室で実物のシステムを見せていただきましたが、農業用のビニールシートを使ったり結構ユニークですよね。作品として仕上げる上で、どの点が大変だったのでしょうか。
何- 実装する部分が大変でしたね。どうやってポリッドスクリーンを張るのかいろいろ試しました。最終的には2本の鉄パイプを立てて、その上にシートを引っ張るため、棒で支えました。
―― 実物を見ても、工夫されていてすごくいいと思いました。
一次審査後、検証して気付いた課題を改善
―― コンテストに取り組む中で、新たな発見や気付きはありましたか。それとも大体思い通りに作品ができたという感じでしょうか。
何- 新たな気付きはありました。クロマキー合成を使うところですね。
辻ノ- はい。コンテストに向けて取り組んでいく中で、遠隔の相手と会話するコミュニケーションの部分で、相手から送られてくる映像をそのまま投影すると、自分の環境と相手の環境を同じにできないという問題点が明らかになったんです。そこで、クロマキー合成技術を使って、相手の背景を入れ替えたらいいんじゃないか、という発想が出てきました。そこが、それまでの研究からプラスアルファで加わった部分です。
―― それは時期的にはいつぐらいのタイミングだったのでしょう。
北岸- クロマキーは一次審査が通った後の話です。二次審査の原稿を書いている段階だったと思います。
―― 結構、そのタイミングで方向転換があったり、いろいろなドラマがあるチームが多いような気がします。
上野- 他には、環境切り替えの種類の検討をしっかり話し合いました。リラックスしたい時はどんな環境にするか、集中したいときの環境はどうか、など。もともとそこまで詳しく固まっていなかったのですが、その辺りを詰められてよかったと思います。
一方的に話すプレゼンからインタラクティブなプレゼンに大きく方向転換
―― 本選のプレゼンは、辻ノさんと佐々木さん二人のテンポのよい掛け合いから始まり印象的でした。辻ノさんがシステムを提供する側、佐々木さんが要望を出す側という設定のやりとりでしたね。システムの説明では何さんと上野さんが白衣姿の研究者という設定で発表されていました。なかなか作り込まれたプレゼンだったと思いますが結構練習はされましたか?
辻ノ- はい。たくさんしました。
―― やはりそうですか。あれだけの内容だと練習しないとちょっと難しそうですね。
辻ノ- もともとは私が一人で一方的に話すようなプレゼンを準備していたんです。でも、本選前に米澤先生に見ていただく機会があって先生の前でプレゼンすると「もっとインタラクティブな部分を入れた方がいいんじゃないか」とアドバイスをいただきました。それで、プレゼン資料も変えて、一人で話す内容からみんなで役割を分担して役決めもする内容に変えて、全く最初に思っていたものと違ったプレゼンになりました。
―― そうだったんですね。くじ引きで1番目に発表していただきましたが、本選スタートから会場の雰囲気を温めてくださったと思います。楽しいプレゼンでした。プレゼンではデモもされましたが、うまくいくか緊張しませんでしたか?
何- デモ機は最初3Dプリンターでデスクを作って展示しようと思っていたのですが、3Dプリンタで作るには時間がかかるので、最終的には木でデモ用の小さいデスクを作って、それにポリッドスクリーンを張りました。
―― 本番でデモをするとき、思わぬトラブルが起きたりするものですが、大丈夫でしたか?
上野- プロジェクターさえ動けばなんとかなるようなデモなので、そこはそんなに心配ではありませんでした。
本選の様子は「入れ替えスイッチソフトウェアコンテスト本選レポート」でご覧いただけます。
他チームの本格的なデモが刺激だった
―― 本選で他のチームの発表を聞いてどう思われましたか。印象に残ったり、すごいなと思ったチームはあったでしょうか。
辻ノ- 私が面白いと思ったのは、騒音を検知するとエフェクトが壁にプロジェクションされる作品です。
―― はこだて未来大学「!kie」チームの作品「NO=EE(ノイジー)」ですね。集合住宅で隣の部屋から聞こえてくる不快な騒音を検知したら、壁にエフェクトを投影してイライラをワクワクに替えるというアイデア。本選のデモでは壁をドンと叩くと、壁に「ドン!」という文字が投影されました。
辻ノ- プロジェクターを使うところが似ていると思いましたし、実際に使ってみたいと一番思ったのがこの作品でした。他には乾杯で飲み物が入れ替わる作品が印象に残っています。
―― 信州大学「kbylab2018」チームの「switcheers」、グラスを持って乾杯するとお互いの飲み物が入れ替わるというアイデアですね。乾杯で飲み物の色が入れ替わるデモは会場も盛り上がりましたね。
辻ノ- はい。本選後の懇親会で実際に使わせてもらえるということだったんですけど、実際にはちょうどエラーが出てしまってできなくて。残念でしたが、面白そうだったので使ってみたかったです
!kieチームとkbylab2018チームのアイデアの詳細はそれぞれ以下の文書からご覧いただけます。
!kieチームのアイデアを説明する文書「【4】NO=EE」 (PDF: 約 0.5MB)
kbylab2018チームのアイデアを説明する文書「【33】switcheers」 (PDF: 約 0.6MB)
―― 懇親会ではお互いデモを見せ合ったり、盛り上がってましたよね。そういう意味ではコンテスト本選は面白かったですか?
辻ノ- 面白かったですね。
―― よかったです。本選のプレゼン発表が終わり、表彰式で入賞チームが次々と発表されました。そのときはどんなお気持ちだったんでしょう。自信はあったのでしょうか。
辻ノ- いえ、私はそんなポジティブには考えられずに、逆に、もう何も賞を頂けないんじゃないか、みたいな気持ちでした。なので、優勝で名前を呼ばれたときには、本当に頭の中が真っ白になってしまいました。
―― 他の方はどうでしたか?自信はありましたか?
何- 最初は自信なかったです。でも自分たちの発表をした後はいけそうな感じがしました。
上野- 私は、さっき話に出た!kieさんとkbylab2018さんには勝てないかなと思っていました。
何- あのチームはすごかったですよね。
上野- はい。デモの作り込みの努力が多分違っていて、当日のデモがすごくよくできていたので、そういう意味では自分たちのチームは危ないかもしれないと思いました。私たちは当日のプレゼンに力を入れていて、デモ機は割と簡単なものだったので。
―― デモの完成度だけで審査するわけではありませんが、出場チームはお互いに他のチームのデモが印象に残ったかもしれませんね。
コンテストで結果が出て自信につながった
―― 優勝した後の反響はいかがでしたか。
辻ノ- 私はアルバイト先にもコンテストに出る話をしていたんです。実装に時間がかかってお休みを頂くことになるので事情をお話しして。そうしたらずっと気にかけてくださって、優勝したと言ったら自分のことのように喜んでくださいました。うれしかったです。
―― それはよかったですね。他の皆さんはどうでしたか?
上野- この研究室の人はまさか優勝するとは思っていなくて、優勝したと言ったら「ほんとに?」みたいな反応でした。思ってもみなかった結果だったという感じです。
北岸- 私はこっちで当日優勝したって連絡を受け取ったのですが、研究室のみんなは信じられない感じでした。
上野、何- 両親に知らせると喜ばれました。
―― コンテストに出てよかった点はありましたか?
辻ノ- 私は実はコンテストでリーダーをするのは2回目なんです。前回は心残りのある終わり方をしてしまって、自分に自信が持てないままずるずると引きずっていたのですが、今回いい結果が出たので少し自信につながったかなと思います。
―― 受賞コメントの際も涙を流されてましたよね。達成感を感じられたのでしょうか。
辻ノ- はい。
上野- 私は辻ノさんが涙してくれたのが、優勝したことよりうれしかったです。達成感を得てくれたんだなと。これまで他の機会でもサポートに入ることが多かったのでずっと見てきましたが、しんどいこともあったけれど努力が報われて成功体験を得られてよかったなと思っています。
―― 何さんはどうでしたか?
何- いろいろ頑張って疲れましたけど、全体的に言うと楽しかったです。プレゼンで製品紹介みたいな口調で説明したのもとても楽しかったです。
―― 北岸さんは本選には参加できませんでしたが、大変なことは多かったですか?
北岸- いえ、そうでもないです。楽しくサポートしていました。本選の時もうまくいきそうかなと思って送り出したら優勝を引っさげて帰ってきてくれたのでサポートしたかいがあったと思います。実は2年前のコンテストに上野さんと1件ずつ応募して、でもその時は残念ながら一次敗退だったので、今回はサポートという立場でも優勝という形でリベンジできてよかったです。
将来の夢
―― それでは最後に、皆さんの将来の夢は何でしょうか。どんなことをしたいか教えていただけますか?
辻ノ- 今は卒業して自立がしたいです。今は実家から通っているのですが、将来的には一人暮らしをして自立したいと思っています。
北岸- 私は、なれるなら大学の先生になりたいです。米澤先生を見ていると、大変ですがすごく楽しそうなのでやってみたいなと思っています。そのためには、まだまだ頑張らないといけないんですが。
上野- 私は直近の夢なのですが、就職先が決まっているのですが今はまだ開発の力があまりないと思っているので、もっと実装についてたくさん学んで力を付けたいと思っています。夢というか目標でしょうか。
何- 今のところ考えているのは、いろいろな技術を身に付けて、いろいろなシステムを開発できる技術的なコンサルタントになりたいです。
―― 分かりました。ありがとうございます。
米澤研究室の研究テーマ
―― ここからは、チームメンバーの皆さんが所属する米澤研究室の米澤朋子教授にも加わっていただいて研究内容やコンテストについて伺いたいと思います。
―― 先生の研究室は、バーチャルコミュニケーションデザインというテーマで研究されているということですが、どのような研究なのでしょうか。
米澤- 研究には二つ柱があって、一つはロボットやエージェントなどの生きているような対話相手になれる存在をつくるというもの。もう一つは、人間を取り巻く環境にメディアをつくるというものです。この先、食べ物は潤沢にあるけど人間の周りに誰一人いない生活になったとしても、これらがあれば人間の心を満たしつつ、かつ、いろんな知的欲求を満たしていけるような環境ができる。それは人間と人間を最終的に切り離すかもしれないけれど、人間と人間をつないでいく新しい情報メディアになるんじゃないか、と思ってその二つを研究しています。
―― 研究室のホームページを拝見すると、すごく多彩な研究をされていますね。テーマがいっぱいあります。
米澤- そうなんですよ。
―― そのテーマはどのように発掘、というか、生み出されるんでしょうか。
米澤- 学生さんがやりたいと言ったことがコアになってそこから何か面白いことができないか、研究室のテーマにどうつながるか考える進め方もあります。あとは、いろいろやりたいことが寝る前なんかにふと思いつくのですが、私の手は限られているので、学生さんがそのアイデアに興味を持ってくれたらやってもらうこともあります。
佐々木さんの研究テーマ(半透明パーティションを用いた環境切り替え)の場合は、東京の科学未来館で住空間の中にものづくりができるような場所があって、それを見たときに自分の研究室だったら4分の1の大きさでいいからもっといろいろな頭の使い方ができる場所が欲しいと思っていたところに、佐々木さんがカフェと情報処理みたいな研究をしたい、と。でも、カフェだけじゃなくて、くつろぎたいときはもっと暗くしたいとか、同じカフェでもうるさく感じるとか、いろんな状況で自分の頭の中の状態違いますよね、という話をされて、それだ、と。じゃあそれやらない?と話をしました。
辻ノさんが最初に興味があったのは、私が昔研究していた音声付箋でした。音響空間の音源定位を使った音声メモというものをシステムに組み込んでコミュニケーションに活かすというものです。それなら佐々木さんの研究テーマに組み込めるから二人でチームを組んだら?と言ったら嫌がらずにやってくれて助かってます。
何さんは、ラーニングコモンズをデジタル化する仮想世界の研究をしています。知的な生産をする場として、自分の話している内容に合うような論文を自動的に提示してくれるシステムをやっていたのですが、でもこれ話しててもリラックスしないよね?お茶欲しくない?と私が言って。システムを使ってディスカッションしているときに、少し緩いコミュニケーションができるようなものを作りましょう、と話をしたのですが、彼は今のシステムだけでも大変な中で、やります、と。
そんな感じで自分が思いついたことがふわふわとつながっていって研究テーマができています。みんな頑張り屋で、私が言ったアイデアの面白さが分からないという顔はせず、面白さがどこなんだろう、とちゃんと聞こうとしてくれる学生さんが多いです。
―― すごい相互作用ですね。面白い。
米澤- 今、私がやっている研究は全然違うことで、ぬいぐるみロボットの触れる様子によって、ぬいぐるみの感情が起こるというのを作っています。AR、VRの話とは離れていて、もうちょっと主体的に考えたりする存在が何を考え、感じるのか。それを環境型のメディアと組み合わせると何が起こるのか、というのを将来やりたくてしょうがないです。
応募作品を見て
―― 先生は今回応募された作品を途中でご覧になりましたか?
米澤- はい。ちょっと不安だったので見ていました。せっかくいい機会を頂いているのに説明が不十分なところがあったらいけないと思って。もちろんマスターの3人が見ていましたし、技術的なところは進めてくれていましたが、プレゼンなど最終チェックはしました。
―― 先生がレビューされるというのは他のチームでも聞きます。先生の研究室では、2015年度にも本選に出場していただいたチームがありましたね。遠隔地にいる高齢者を見守る方法としてプライバシーと緊急度に応じた伝達方法を考えたアイデアでした。
米澤- 最初二人でチームModalityを組んでいたのですがもう一人が他のコンテストで忙しくて全く関われなかった。完全に別のコンテストにかかって優勝したんですよ。なので、結果的に中さんという方が一人で仕上げていました。
2015年度「時を○○するソフトウェアコンテスト」本選に出場された米澤研究室のチームModalityのアイデアの詳細と本選レポートは以下からご覧いただけます。
・アイデアを説明する文書「生活状況を伝えるモダリティボリュームによって時の感覚を変えるソフトウェア」 (PDF: 約 587KB)
・2015年度「時を○○するソフトウェアコンテスト本選レポート」
米澤- でも多分、プレゼンが研究発表になったんじゃないかな、と。もっと面白いソフトウェアがあるとか、そういう側面をプレゼンし切れなかったのはもったいないかなという反省を私もそのとき感じていたので、今回、彼女たちがとうとうと交代でしゃべっているプレゼンを見て、これはダメでしょ、と。交代でしゃべるのは面白くないから劇やろう、と言いました。ええっ?って顔をされたかもしれませんが、最後は楽しんでやってくれたのがうれしいです。
―― 今回、非常に面白いと思ったのは、ソフトウェアを作っている人はソフトウェアが動けばいいという感覚に陥りがちだと思うのですが、皆さんはハードウェアと一緒にシステムを作ってその中で実験されているところです。大学を志望されたときはソフトウェアを作りたいという学生さんが多いと思うのですが、そこからさらに実験に興味を持つというのはどういう過程を経るのでしょう。
米澤- 正直、実験には多分興味を持ってくれていなかったと思うのですが、作ったものの有用性を証明することは大学の卒業論文や修士論文で必要なことだということを徐々にゼミの中で学んでいっていると思います。ちょうどよかったのは、有用性を考えるタイミングでコンテストがあったので、実験もしながらコンテストの準備をすることができました。
―― 皆さんは、なんで実験が要るのか、など疑問に思われましたか?
辻ノ、北岸、上野- 先輩方がやっているので、実験はするものだと思っていました。
何- 研究室に入ってから、どんな実験をするのか、どんな方法でするのかは全然わかりませんでした。でも先輩方も助けてくれて完成しました。実験というのは、計画を立てて、実験の手順があって、データを分析して、と複雑で面倒なところもありますが、結果が出ると自分の仮説と合っているのかわかってどきどきします。
米澤- それはうれしい。
―― 今回優勝して、先生はどのように思われたでしょうか。
米澤- さすがに優勝は予想していませんでしたが、最後にプレゼンをチェックしたときいい感じにできていると思いましたし、結果はどうであれ、私は言えることは言ったし、あとはみんな頑張れる子たちだからと思っていました。ただ、本選会場からSkypeでちらっと報告が来るたびに状況が厳しいように感じたので、どちらにしろいい経験になっただろうと思っていたら、まさかの優勝で、素晴らしいと思います。ありがたいです。
―― コンテストがよい機会となったのならよかったです。こちらこそありがとうございました。
研究内容は多岐にわたりますが、主な研究として、仮想的(人工的)な環境と存在を扱うことによる、人間のcommunication/interaction支援を目指しています。