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レポート

寝かせて使うソフトウェアコンテスト 本選レポート

本選の様子と受賞作品のご紹介
株式会社オージス総研 OSCA事務局 木村 めぐみ
2023年12月20日

オージス総研主催のソフトウェアアイデアコンテストOGIS-RI Software Challenge Award 「寝かせて使うソフトウェアコンテスト」の本選と最終審査を2023年11月15日(水)に当社東京オフィスで開催しました。本レポートでは受賞作品と本選の様子をご紹介します。

第14回 OGIS-RI Software Challenge Award「寝かせて使うソフトウェアコンテスト」

osca

OGIS-RI Software Challenge Award(OSCA)は今年で14回目を迎えるオージス総研主催のソフトウェアアイデアコンテストです。本コンテストは毎年異なるテーマを設定し、テーマに関連したアイデアを募集しています。今年は「寝かせて使う」をテーマに設け、このテーマと関連するソフトウェアのユニークで革新的なアイデアを募集しました。

今回は応募資格を中学生以上に広げ、中学、高校、高専(1年生~3年生)生を対象にした「ひらめき部門」を新設しました。「ひらめき部門」は従来の応募枠である「一般部門」に比べて独創性や面白さを重視して評価するアイデア優先の部門で、アイデアに自信はあるけれど技術にはまだ自信がない…という方にもチャレンジしていただきたく設立した部門です。

今年度はこの「ひらめき部門」と従来の「一般部門」の二つの部門でアイデアを募集し、両部門合わせて102件ものご応募をいただきました。

「ひらめき部門」は書類審査で受賞作品を決定、「一般部門」は書類審査を通過した5作品が最終ステージとなる本選にてプレゼンテーションを行い、厳正な審査のもと受賞作品が決定しました。

本選の一日

本選は2023年11月15日(水)オージス総研東京本社にて開催しました。

本選会場の様子
オージス総研東京本社の本選会場


本選には「一般部門」の本選出場チーム 5 チーム 11 名が東北、近畿、四国から参戦しました。「ひらめき部門」は書類審査で受賞作品が決定しているため審査はありませんが、作品の発表を動画で行っていただきました。

本選会場の様子
本選出場チームと審査員の方々


定刻になり本選の開幕です。まずは審査員のご紹介です。ゲスト審査員には株式会社RATH CEO 原田 謙一様をお迎えしました。原田様には昨年度に引き続き2回目のゲスト審査員をお願いしました。今年も本選出場チームに対して沢山のフィードバックと応援のメッセージをいただきました。

原田様
ゲスト審査員 株式会社RATH CEO 原田 謙一様


本選の審査はゲスト審査員に加えて、当社社長と社員審査員の全5名が行いました。

審査員のご紹介に続いてプレゼンの順番を決定しました。数字が書かれた札を各チーム代表者が引いて発表順を決定。2番! 1番! と数字が引かれていき、札を引く方も見守る方もドキドキの瞬間でした。発表順が決まると、早速プレゼンの準備に移りました。

本選では、各チーム25分の持ち時間でプレゼン準備、発表、質疑を行いました。途中、「ひらめき部門」の受賞作品が動画で発表されました。

全チームの発表後、審査員は別室で審査に入り、受賞作品を決定しました。

受賞作品の発表と表彰は当日同会場で行いました。審査員長より受賞作品が一点ずつ発表され、当社社長、ゲスト審査員より受賞チームに表彰状、トロフィーまたは盾、目録が授与されました。

表彰式
オージス総研社長 中沢正和より最優秀チームへの表彰状授与


本選の一日も残す時間あとわずか。表彰式後は、審査員と本選出場チームの交流の時間を持ちました。短い時間でしたが受賞作品に関する話を中心に、審査員と出場メンバの間で話に花が咲きました。

富士山
休憩時間、夕焼けの向こうに小さく富士山が見えてしばし観賞

交流会
交流会
交流会
交流会の様子


半日に渡って開催したコンテスト本選、出場された皆さんお疲れさまでした。そして受賞おめでとうございます。本選への参加が少しでも皆さまの経験の場となれたなら幸いです。

本選参加者集合写真
本選出場チームと審査員

受賞作品のご紹介 <一般部門>

ここからは受賞作品をご紹介します。まずは一般部門の作品を、本選の発表内容をもとにご紹介します。各作品の詳しい内容については、受賞チームの方々のご了承を得て「アイデアを説明する文書1」を掲載していますのでご覧ください。

なお、本レポートでは各チームの発表内容を元に筆者の理解で受賞作品をご紹介しています。見出しも筆者がつけたものです。ご了承ください。

最優秀賞 <一般部門>

最優秀賞

チーム:DC.DC.(デコデコ)
作品名:HearZ
香川大学 横田 一晟さん、新田 宗史さん、奥野 唯織さん


DC.DC.チーム
DC.DC.チーム

離れて暮らす恋人に送る声のメッセージを寝かせる

本アイデアは遠距離恋愛をしている恋人たちがターゲット。遠距離恋愛をしていてもお互いすぐ側にいるような存在感を感じるために、寝落ち通話やリモート同棲があるそうですが、プライバシーの確保が難しかったり、生活リズムの違いですれ違いが生じたりする問題も。それらを踏まえて、相手の存在を感じつつ、時間的なすれ違いを解決する「HeartZ」を提案したのがこの作品です。

「HeartZ」は照明型のプロダクト。恋人同士が1つずつ「HearZ」を家に置いて使います。メッセージを送りたいAさんは、照明の上部のカップにメッセージを吹き込みます。カップを戻すと恋人のBさんの家にある「HearZ」にその声が送信されます。Bさんの「HearZ」はメッセージを受信すると点灯。帰宅したBさんは「HearZ」が点灯していることでAさんからメッセージが届いていることが分かります。Bさんは寝る準備を整えてから、「HearZ」の消灯ボタンを押すと…Aさんのメッセージが再生されて照明の光がそっと消えます。

デモの様子
「HearZ」からメッセージが流れるデモの様子


恋人の声を聞いて安心して眠れるリラックス効果を期待しています。メッセージはラジオみたいに長い話でも、「おやすみ」の一言だけでもOK。遠距離恋愛の恋人たちだけでなく、単身赴任の親と子のコミュニケーションにも使えると考えているそうです。

プレゼン最後の「HearZ」のデモでは、暗くした会場で、恋人のメッセージが流れた後にそっと消える照明を、会場のみんなで見つめました。

アイデアを説明する文書

アイデアの詳細は応募の際に提出いただいた以下の文書をご覧ください。
アイデアを説明する文書「HearZ」 (PDF: 約 2.8MB)

ゲスト審査員賞 <一般部門>

ゲスト審査員賞

チーム:Soli(ソリ)
作品名:おとねだり
香川大学 高橋 怜生さん、吉森 日菜さん


Soliチーム
Soliチーム

楽器を寝かせるとライバルが出現?寝かせず練習して上達しよう!

楽器を始めたものの上達せず挫折した経験のある方はいらっしゃるのではないでしょうか。本アイデア「おとねだり」は楽器を上達したいけれど練習が続かない初心者から中級者をターゲットとしたソフトウェアです。

プレゼンの様子
プレゼンの様子


「おとねだり」の特徴はキャラクターの存在。練習しなさいと単に促すのではなく、人間の心理をうまく突いて自発的に練習したいと思えるような仕組みを、キャラクターを登場させることで実現しています。

「おとねだり」は1台の楽器を仮想空間と現実空間でキャラクターとユーザが共有するソフトウェアです。ユーザが楽器を練習していない時、ライバルである画面内のキャラクターが楽器の練習を始めます。その音がユーザを触発し、自ら練習しよう!という気持ちを引き起こしてユーザは練習を始めることができます。ユーザが練習を始めると、画面内のキャラクターがうらやましがり、それを見たユーザは更に触発され練習を継続するという仕掛け。

ユーザの演奏はソフトウェアが解析し、ライバルであるキャラクターが演奏するときはユーザより少しだけ上手に弾く、など細かなところに楽器の練習を継続するためのエッセンスが散りばめられている作品でした。

アイデアを説明する文書

アイデアの詳細は応募の際に提出いただいた以下の文書をご覧ください。
アイデアを説明する文書「おとねだり」 (PDF: 約 0.4MB)

優秀賞 <一般部門>

優秀賞

チーム:SKYYTH(スカイース)
作品名:Chrono Capsule
和歌山大学大学院 謝花 匠さん、湯浅 眞太さん、樋尻 琉希さん、北林 悠河さん、田中 和希さん、米田 優斗さん


SKYYTHチーム
SKYYTHチーム

SKYYTHチーム
SKYYTHチーム メンバーの皆さん(写真提供:SKYYTHチーム)

形のない大切な思い出を寝かせる

タイムカプセルと言えば、手紙やおもちゃなど形のある思い出を容器に入れて埋めるものですが、長い期間保存するため劣化の心配がある写真や電子機器を保存するのには向いていません。また、タイムカプセルを埋めた場所や、そもそも存在自体を忘れてしまうこともあり、せっかくの思い出が取り出せなくなることもあります。

本アイデアはこれまでのタイムカプセルでは保存できなかった写真や動画、音声をデジタルデータで保存し、加えて当時の流行語やSNSのトレンドも残してくれるサービス。従来のタイムカプセルと併用することを想定しています。

Chrono Capsuleのデモ画面
Chrono Capsuleのデモ画面


デモでは、「Chrono Capsule」を開封する時間を3分後に設定して、プレゼンの最後に開けるという演出がありました。ChatGPT4で生成したという「Chrono Capsule」の画像からタイムトラベルが思い起こされ神秘的でした。

アイデアを説明する文書

アイデアの詳細は応募の際に提出いただいた以下の文書をご覧ください。
アイデアを説明する文書「Chrono Capsule」 (PDF: 約 0.9MB)

特別賞 <一般部門>

特別賞

チーム:ゆるふわたまご
作品名:PAKYU
東北大学大学院 鎌田 夏央輝さん


ゆるふわたまご
ゆるふわたまごチーム

夢を書いて宣言したら寝かせて夢の実現へ

自分の夢を持ち、なおかつ、その夢をどのように実現すればよいか具体的な道筋が見えている若者は非常に少ないそうです。夢を実現する方法論は存在せず、無数にある夢実現の道筋のうちどれが適切なのか選ぶことは難しいからです。

本アイデア「PAKYU」は夢実現のメソッドを4つのステップで分かりやすく提言し、夢の実現をサポートするスマートフォンアプリ。ターゲットは就職活動をしている学生です。まず自分の夢を書き出し、次に期日を設定、そして夢実現までの道のりとして、具体的にどう行動するか小目標を設定します。道のりのマップができたら夢広場で宣言。夢広場では他のユーザの夢を検索したりいいねやメッセージを送ることができます。

夢の宣言ができたら準備完了。PAKYUというキャラクターに夢を食べさせると画面上でPAKYUは深い眠りにつきます。夢を寝かせた後、アプリを操作する必要はありませんが、PAKYUから期日の通知などを受け取ることができます。

プレゼンの様子
プレゼンの様子


夢を形にする仕組みを提供し、誰もが夢を通じて自己表現できる社会を目指す、というメッセージでプレゼンが締めくくられました。

アイデアを説明する文書

アイデアの詳細は応募の際に提出いただいた以下の文書をご覧ください。
アイデアを説明する文書「PAKYU」 (PDF: 約 1.2MB)

特別賞 <一般部門>

特別賞

チーム:イデア
作品名:アイデア寝る練る
和歌山大学大学院 上林 隼さん、伊達 幸希さん、先曽 末来也さん、石村 隆博さん、中野 祐介さん、福元 春弥さん


イデアチーム
イデアチーム

イデアチーム
イデアチーム メンバーの皆さん(写真提供:イデアチーム)

アイデアを寝かせて新たなアイデアを発想

アイデア創出をする機会が多い方もいらっしゃると思います。すんなりアイデアが出れば良いですが、新規性や独創性のあるアイデアを出そうとするとなかなか難しいですね。

本作品はアイデア創出をサポートするサービス。「イデアちゃん」というマスコットがユーザのアイデア創出を支援してくれます。

プレゼンの様子
プレゼンの様子


サービスを利用するには、入力画面で素材にする単語を入力、寝かせる時間を設定し、処理方法を選びます。処理方法には例えば何もせずに置いておく「保存」、類義語や対義語へ変化させる「寝かす」、単語を入れ替える「混ぜる」などがあります。時間が来て出力されたアイデアは、今までになかった組合せや自分だけでは思いつかない新しいアイデアかもしれません。もし、アイデアが気に入らなければ「やり直し」を選択すると、イデアちゃんが再びアイデアを寝かせて処理してくれます。

単語はWord2vecやWordNetを使って変換、文章で生成する時にはChatGPTを利用するそうです。

アイデアを説明する文書

アイデアの詳細は応募の際に提出いただいた以下の文書をご覧ください。
アイデアを説明する文書「アイデア寝る練る」 (PDF: 約 0.3MB)

受賞作品のご紹介<ひらめき部門>

続いてひらめき部門の受賞作品をご紹介します。各作品の詳しい内容については、受賞チームの方々のご了承を得て「アイデアを説明する文書1」を掲載していますのでご覧ください。

特別賞 <ひらめき部門>

特別賞

チーム:LED電球
作品名:crane tool
沖縄工業専門高等学校 田村 晃穏さん


自分が行った善行がポイントになって他者から評価される、まるで果報を寝て待つように… 人との関わりが減少している昨今、困っている人を見かけても助けることがかえって迷惑になるのではないか、助けたいけれど勇気がいる、と考えて行動に移すことができない人も多いと思います。

「crane tool」はいいことをすればいいことが返ってくるサービス。人にいいことをするとその人からポイントがもらえ、もらったポイントは提携店で使うことができます。

「crane tool」を使うことで、多くの人と関わるきっかけが増え、いいことをするとポイントという形で感謝されることで自分の善行を実感できます。地域にとっては、人との関わりが増えて地域全体の雰囲気がよくなり、クーポン利用をきっかけに地域経済の活性化が期待できます。

アイデアを説明する文書

アイデアの詳細は応募の際に提出いただいた以下の文書をご覧ください。
アイデアを説明する文書「crane tool」 (PDF: 約 0.9MB)

特別賞 <ひらめき部門>

特別賞

チーム:Dream
作品名:ドリームシェアリング


就寝時間が0時以降という夜更かしする中高生が多い事に着目。スマホやゲームが楽しいため寝るのが遅くなるのなら、睡眠したくなるアイデアを、と考えたのが本作品「ドリームシェアリング」です。

ヘッドデバイスを着けた利用者が寝ているときの脳波から夢をデータ化し、クラウド上に保管することで夢を他者と共有します。共有された夢は、感覚を再現する技術を用いて、五感を通じて他の人が体験できます。

どのような夢を見るのか自分では決められないもの。独創的な夢のコンテンツが生まれることもあり、それが魅力となって睡眠への関心につながることを狙います。寝る事に積極的になり、寝不足や睡眠障害の改善を目指します。

アイデアを説明する文書

アイデアの詳細は応募の際に提出いただいた以下の文書をご覧ください。
アイデアを説明する文書「ドリームシェアリング」 (PDF: 約 0.9MB)

おわりに

本レポートでは2023年度に開催したソフトウェアアイデアコンテスト OGIS-RI Software Challenge Award の本選の模様と受賞作品をご紹介しました。コロナ禍でオンライン開催やハイブリッド開催が続いた本コンテストも4年ぶりに会場での開催となりました。遠方から来ていただいた方も多く大変だったかもしれませんが、主催側としては、本選出場チームの方々と直接お会いできたことは非常にうれしく、プレゼン発表や本選にのぞまれる姿勢に多くの刺激を受けました。本選出場チームの皆さんにとっても良い一日になっていればうれしいです。

最後に、コンテストにご応募くださったすべての皆さんに改めてお礼を申し上げます。本コンテストが今後の皆さんのご活躍の一助になれば幸いです。


  1. 「アイデアを説明する文書」は応募時にお送りいただいた書類審査対象の文書です。