業務組み込みとAI・データ分析(前半)

1.解決策(出口)のケース分け

 AI・データ分析で得た分析アウトプットを活用してビジネスに貢献するためには、ユーザーにそのアウトプットを使ってもらう必要があります。そして1回だけ使ってもらうのではなく、継続的にそのアウトプットを使ってもらうことが重要です。
 繰り返し活用される分析アウトプットは、データから得られた知見だけではなく、業務知見も組み込まれたものであることが多いです。そして我々は、分析アウトプットの継続的な利用のためには、業務へのアウトプットの組み込み(業務組み込み)が必要だと考えています。

 データ分析の上流工程である「業務課題からの分析テーマの導出」では、我々は課題解決策のことを「出口」とも言いますが、この出口は大きく3つのケースに分けることができると考えています。


  • 出口①:「データ可視化」もしくは「AI予測モデル作成」を行うことで、出口として充足するケース

  • 出口②:「データ可視化」もしくは「AI予測モデル作成」を行うことだけでは出口として充足せず、ITシステムが提供する機能も必要になるケース

  • 出口③:「データ可視化」や「AI予測モデル作成」は特に不要で、ITシステムが提供する機能だけで充足するケース

図1

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 ここでポイントとなるのは、どの出口であっても「業務プロセス変更」が含まれていることです。業務課題を解決するということは、大小に違いがあっても業務のやり方を変更しなければなりません。
 業務のやり方の変更とは、ユーザーが何かを判断する時に参照する情報をより良いものに変えたり、出口によって新しく共有される情報や機能を利用して業務の一部を取り止めたり、といったことを行います。
 また出口③が生じる理由ですが、業務課題から検討をスタートするタイミングでは、解決策にAI・データ分析の必要性が明確に分からないためです。分析テーマ導出プロセスを実施して、初めてAI・データ分析が必須ではなかったと分かるケースもあります。

2.業務組み込みのハードル ~現場は何と言うか?~

 業務組み込みに最も大きな影響を与えるのは、実際の業務に関わる現場の方々が、分析者の作成した分析アウトプットをどのように捉えるかという点になります。
 現場の方々からすれば分析アウトプットを業務に活用するということは、その分析アウトプットを"受け入れて"、自分たちの業務のやり方を変更することを意味します。

 現場の方々の立場に立って考えてみると、急に現れた分析者ができたばかりの分析アウトプットを滔滔と説明し、「さあ使ってくれ」と言われても受け入れが難しいことは容易に想像できます。
 この対策としては、工程の上流である「業務課題からの分析テーマの導出」の段階から現場の方々に伴走し、課題解決策と業務上のハードルについて、口頭および書き出した文で意見を交換し、しっかりと認識を合わせておく必要があります。特に課題解決策については、現場の方々が出したアイデアがある場合は、データサイエンス視点からどのような「判断支援情報」をデータから作り出せるのかを考え、提案する必要があると我々は考えています。

 次に分析アウトプットの受け入れによる業務プロセスの変更で生じるデメリットを洗い出す必要があります。デメリットは大きく2つあり、1つは「分析アウトプットが出した情報が正しくないケース」、もう1つは「業務プロセスの変更により作業量が増加するケース」です。
 これらについては、現場の事情に合わせて、「業務プロセスおよびステップでのリスクヘッジ」や「ITによる自動化(データ収集・蓄積・加工・MLOps等)」で対策していく必要があります。

3.困難を乗り越えるチーム形成

 さてここからは分析者側、もう少し大きく捉えるとDXやAI・データ分析で会社を変えていこうとしているチームについて、今回と次回の2回のコラムに分けてお話していこうと思います。

  • ①激変する環境で必要な「暫定解の模索」

 皆様も想像がつくように、昨今の激変する環境では、解を構築するために必要な情報が十分に集まらないことが日常茶飯事になります。そして決断をむやみに遅らせることは、拙速よりもリスクを増加させる可能性があります。

 このような状況の中で我々が採るアプローチは、暫定解を出して、まずは始めてみる。そして少し進めてみて、望まない状況や結果が出てきそうであれば、速やかに方向転換するというものです。たとえるなら、道に迷いやすい人が、目的地に向かう時に地下鉄の出口から出て、少し歩いてからスマホの地図アプリで自分の向かっている方向が正しいかをあらためて確認するようなイメージです。
 ポイントはアプローチというよりも、暫定解を出すプロセスと方向転換のプロセスの「活性度合い」にあると考えています。どちらのプロセスでも、解出しや方向転換を行うには、1人が持つ情報量や気づきの数では不足しているため、複数名の情報や気づきを持ち寄って互いにフィードバックを行うことが有効な対策となります。このフィードバックは、「チームや場の心理的安全性」が確保されていないと十分に行われないのですが、こちらの詳細については次回のコラムでお話したいと思います。

  • ②最も難しいこと ~組織文化を変えること~

 前述の「業務組み込みのハードル」とも関係するのですが、AI・データ分析の活動を通してビジネス・インパクトを出していこうとすると、ビジネスや業務を変える必要があります。

 そしてビジネスや業務を変えるためには、「組織文化」を変えなければならないケースもあります。この変化を促すことは我々が最も難しいと考えているものの1つです。組織文化は、その組織が過去に積み重ねた経験がベースになっており、所属する多くのメンバーが共有している感覚や捉え方だと考えています。

 過去の経験をメンバーの思考から除外することは難しく、思考に影響を与える度合いも大きいため、活動推進者が変えたい方向を盛り込んだ新しい経験をメンバーに少しさせる程度では、慣性の力が働くように振れ戻ります。

 対象者には、感動まではいかずとも熱量が多く盛り上がったという経験を、ある程度の空白期間を設けながら複数回経験できる計画が必要です。また経験した対象者が現場に戻った後に「孤立しない仕組み」も必要です。
 たとえば、海外の視察により大いに刺激を受けた後は、間を空けずに「変革の計画」を出してもらい、その進捗を定期的に視察メンバーと経営層に発表してもらうようにする。進捗中も視察メンバーが継続的に気軽にコミュケーションが取れるように、仮想オフィスやチャット、イベントなどを事務局が用意する、といったようなイメージです。

 当社が提供するサービスの「データ分析業務活用道場」「データ分析サービス」「DataRobot 機械学習を自動化するAIプラットフォーム」、「データエンジニアリングサービス」は、このような考え方をベースとし、お客様のビジネス成果獲得の可能性を最大限、高める形になっています。


業務組み込みとAI・データ分析(後編)へ続く。

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2023年7月3日公開
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