業務組み込みとAI・データ分析(後半)

本コラムは、業務組み込みとAI・データ分析(前半)に続く後編になります。

3.困難を乗り越えるチーム形成(前半からの続き)

  • ③フィードバック至上主義のススメ

 変化の激しい環境の中で、「暫定解の模索」と「方向転換」を活発に実施する必要があります。そして、チームのアウトプット品質の向上にフィードバックを行うことが有効な手段であるということを前回述べました。
 本コラムでは、フィードバックの質を高めるポイントである、「フィードバックを行うメンバー」、「フィードバック環境」の2点についてお話ししたいと思います。

 1点目は「フィードバックを行うメンバー(出し手)」です。出し手となるメンバーは「十分な知識」と「異なる視点」を持っていることがポイントとなります。社内のステークホルダーに説明するAI・データ利活用資料をレビューするシーンを例に挙げます。

 まず、出し手が関連知識を十分に保有していることが重要であり、AI・データ利活用の一般的な知識、ステークホルダーの業務に関する一般的な知識、説明先のステークホルダーが過去に実施した分析内容を事前に把握しておくと良いでしょう。

 次に、出し手が資料作成者(受け手)とは異なる視点を持っていることが重要です。異なる視点からのフィードバックは、考えや検討の大きな抜け漏れを低減したり、新しいアイデアをもたらしたりします。異なる視点を確保するための有効な手段の1つとして、受け手とはバックグラウンドや仕事の役割(ロール)が異なるメンバーにフィードバックしてもらう方法があります。
 我々のチームを例に挙げると、データサイエンティストだけではなく、データエンジニアやデータ分析戦略コンサルタントが在籍しており、異なるロールのメンバーからフィードバックをもらうことができます。こういった技術をメインとしたロール以外では、業界や業務のドメインといった切り口もあります。

 2点目は「フィードバック環境」です。出し手がいくら良いフィードバックをしても、受け手が素直にフィードバックを聞くことが難しい環境である場合、十分な効果を得られなくなってしまいます。また、こういった望ましくない環境では、フィードバックを行うメンバーが安心して発言することができなくなってしまい、フィードバックが減少するという悪循環に陥ります。

 あまりうまくいっていないユースケースとして、業務改善を検討する現場での打ち合わせの様子をご紹介します。打ち合わせの時刻、場所、アジェンダは設定されているのですが、持ち込まれた資料の読み合わせをしているだけで、活発なディスカッションはほとんどない状態でした。その要因として以下のようなことが考えられます。

●受け手がフィードバックに対して理由を付けて、受け入れない
●フィードバックが感謝されないことから、出し手は気づいた点をだんだんと指摘しなくなる
●受け手と出し手が入れ替わらず、固定されている
●日々の業務の中で気づいたことをすぐに共有できないため、打ち合わせに持ち込む際には削ったり、忘れたりしている

 このような状況への対策の1つとして、「心理的安全性」を組織に備えていく方法があります。心理的安全性とは、「自分の考えや気持ちを、誰に対してでも安心して発言できる状態かどうか」を指す言葉です。
 心理的安全性が確保された組織では、発言に対して理不尽な文句や圧力がかかるという恐れがないため、多少厳しい指摘だったとしても、気づいた改善点をはっきりと相手に伝えることができます。また、受け手から出し手に感謝の気持ちを都度伝えることで、出し手もモチベーションを高く保つことができ、周りへの貢献が続きます。一方で、受け手には心理的柔軟性が必要となります。

  • ④自分は心理的に柔軟か ~受け入れること/いったん忘れて今に集中すること~

 心理的柔軟性は、個人が新しい状況や困難に対応する度合いを指します。心理的柔軟性を高めるために特に重要だと考えているのは、「現在の状況を否定せずにそのまま受け入れること」、「過去の不安、将来の不確実性にとらわれることなく、目の前の状況や体験に全力で集中すること」です。

 「心理的柔軟性」に関する我々の過去の体験として、お客様向けのトレーニング・サービスがあります。我々は長年、業務で細部まで定義済みのデータ分析に関するトレーニングをお客様向けに提供していました。データ分析をうまく進めるためには、定義された手順に則って、そこから外れることなく進めなければならないという認識のもと、受講者に内容を伝えることに全力を尽くしていました。

 我々はたくさんの受講者にトレーニングを繰り返し提供していましたが、ある時、気になって受講を完了した方々がその後、データ分析でビジネスや業務に貢献しているかどうかを確認しました。その結果、ほとんどの人々がデータ分析を継続的に実施していませんでした。

 その結果を出し手から指摘された我々はショックを受けましたが、「せっかくトレーニングを受けてくれたお客様がその成果を活用してくれていないことは残念だけど、ここで諦めずにサービスを改善していこう」とアドバイスをもらいました。それを受けて、トレーニングのことはいったん忘れて、受講後に分析をしない理由を考察しました。そして、業務課題からデータ分析テーマを導出するコンサルティング・サービスを開発し、従来のトレーニング・サービスと組み合わせて、「データ分析業務活用道場」という新しいサービスを作り上げました。

 「定義された手順がない中でも、お客様と寄り添って、課題からビジネス・業務に貢献する分析テーマを導出する」ということを受け入れ、トレーニングではなく、コンサルティングのセッションという形にサービスを変えることで、より大きな価値をお客様に届けることができるようになりました。

  • ⑤ステークホルダーの分析・構造化 ~円の中心と周り、どちらから考えるか~

 AI・データ分析を用いて、実際に業務を改善していく際は、業務担当者に提案された改善案に対し聞く耳を持ってもらう必要があります。今回はボトムアップ・アプローチで考えてみます。

 一番重要なステークホルダーが事業部門の担当者です。業務を実際に行っている人であり、この人々が改善案に納得しないことには、業務は改善されません。分析側としては、分析で発見した自信のある知見かもしれませんが、それを押し付けることは自分中心(円の中心)の考えであることをしっかりと認識しておく必要があります。

 自分を取り巻く人々(円の周り)である事業部門の担当者に、AI・データ分析のアウトプットを聞いてもらうためには、分析者側から担当者に密なコミュニケーションを取って、AI・データ分析に対する理解を深めてもらう必要があります。人はよく知らないものを不安に思い遠ざける性質を持っているからです。不安と説明の例を以下に挙げます。

  • ✓不安:「何かめんどくさい仕事だけが増えて、何もうれしくないのではないか?」
    説明: AI・データ分析は、現場担当者の仕事における判断・意思決定を助けるものとして使われるものが大半であり、効率化にも貢献することから、皆さんの大切な時間を創造的な仕事により使っていただけます。
  • ✓不安:「中身が何をやっているか、よく分からないから怖くて使えない」
    説明: AI・データ分析は、皆さんの業務知見や仮説を重要な示唆とし、関連データの傾向やデータ間の関係性をベースにして作られたものです。また、詳細な分析手法や数学・統計の専門用語を使用せずとも、その内容を説明することが可能です。

 円の周りは担当者だけではありません。現場組織の上長、情報システム部門、さらには経営層への説明が必要なこともあるでしょう。それぞれのミッションや立場に応じて、注目ポイントやチェックポイントが異なります。円の周りに立っているさまざまなステークホルダーの考えと思いを想像し、可能であればコミュニケーションを通して把握する必要があります。
 このように人々に説明していく際に、我々が経験上、最も重要だと考えているのは、"分析テーマのスジの良さ(ビジネスインパクトがあり、実現可能性の高いテーマかどうか)"と、"現場組織の方針との関係"となります。

まとめ

 AI・データ分析を業務にしっかり組み込んでいくことで、激しく変化するビジネス環境を乗り切る力を大きく高めることができます。そのためには、業務担当者と分析者が信頼関係を構築し、お互いに有益なフィードバックを遠慮なく行えるよう心理的安全性を確保します。そして、その関係の円環を組織に広げて、文化を変えていくことで、AI・データ分析を活かした業務改善は永続化していきます。

 当社が提供するサービスの「データ分析業務活用道場」「データ分析サービス」「DataRobot 機械学習を自動化するAIプラットフォーム」、「データエンジニアリングサービス」は、このような考え方をベースとし、お客様のビジネス成果獲得の可能性を最大限、高める形になっています。

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2023年8月10日公開
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