IP網とは|移行の影響、INS補完策、EDIに関するQ&A

IP網とは、インターネットで使用されているIPと呼ばれる通信手順によるネットワークを指します。「IPネットワーク」とも呼ばれます。

従来の固定電話は、公衆交換電話網（PSTN）と呼ばれるネットワークで結ばれていました。このネットワークは旧式のため、交換機などの設備が2025年にも寿命を迎えるとされています。そのためNTT東日本並びにNTT西日本（以下「NTT東西会社」）は、PSTNから、インターネットでも使用されているIP網（IPネットワーク）への切り替え（IP網化）を2024年1月に行いました。
詳しくは弊社コラム「2024年1月 ISDN（INS）終了。企業への影響と代替サービスについて解説」をご参照ください。

「INSネット」は、NTTが長年提供してきたISDN回線サービスです。アナログ電話回線を使ったデジタル通信網であるISDN回線は、1つの回線契約で電話回線2つ分の働きをすることから電話とFAXやデータ通信を同時利用が可能で、企業で活発に利用されてきました。

2017年10月に正式に固定電話網のIP網切り替えが発表されました。2021年1月から携帯電話会社など他事業者との接続はIP接続に切り替えられました。2024年1月には固定電話サービスの契約一斉引き継ぎが行われ、INSネットディジタル通信モードの提供が終了いたしました。

固定電話は廃止されません。電話番号も変わることはなく、2024年1月以降も通常通り使用できます。現在使用されている電話機もそのまま使用できます。

INSネットはNTT東西会社が提供するサービス総合ディジタル網（ISDN）による加入電話サービスの一つであり、利用者は音声通話とディジタル通信の両方が使用できます。
ディジタル通信モードはデータ通信で使用されるモードですが、固定電話のIP網への移行によって、このモードが使えなくなります。
なお「INS廃止」「ISDN廃止」などと呼ばれることがありますが、正確ではありません。INSネットのサービスは2024年以降も継続され、音声通話に限れば引き続き利用できます。

電話回線（固定電話）を用いたEDIでは、INSネットディジタル通信モードでの通信が主流です。そのため、この通信モードの提供が終了することにより、多くのEDIは使用できなくなります。

NTT東西会社は、INSネットディジタル通信モードの提供終了後に「メタルIP電話上のデータ通信」サービスを提供しています。これはディジタル通信モード終了までに対応が間に合わなかった加入者向けに、従来のINSネット用の通信設備を継続使用してデータ通信を行えるサービスとなり、2027年ごろまで提供される予定です。しかしディジタル通信モードと比べて通信品質は同等ではなく、JiEDIA（インターネットEDI普及推進協議会）による検証では通信に時間がかかることが判明しました。可能な限り早めに他のEDI方式（インターネットEDIなど）に移行することをお勧めいたします。
なお、EDIのインターネット化対応として、弊社ではEDIアウトソーシングサービスをご用意しております。

いいえ、影響があります。固定電話がIP網化されると、通信にわずかな遅延が発生するようになります。たとえば、すぐ横にいる人と携帯電話で会話したとき、電話の音声が少し遅れて聞こえた経験はないでしょうか。音声通話では少しの遅延はほとんど影響ありませんが、データ通信では時間がかかったり、通信エラーが起きやすくなる可能性が高く、EDIには不向きになります。ですので、やはり電話回線を用いない別のEDI方式に切り替える必要があります。

「全銀協標準通信プロトコル（TCP/IP手順・広域IP網）」（以下「広域IP網版全銀手順」）は2017年5月に全国銀行協会（全銀協）が公開したEDI用の通信プロトコルです。従来の全銀TCP/IP手順をインターネット経由でも利用できるように、暗号化や認証の規定が追加されています。
なお、全銀協では、従来の全銀手順と全銀TCP/IP手順のサポートを2023年12月末をもって終了しました。

全銀手順は、主に電話回線を使用してBSC手順と呼ばれるプロトコルにより通信を行います。「全銀BSC手順」「全銀ベーシック手順」などと呼ばれることもあります。
一方、全銀TCP/IP手順は全銀手順をTCP/IP上に置き換えたもので、ダイアルアップルータを用いて、INSネットで通信する方式が主流です。全銀TCP/IP手順をそのままインターネットで使うことは技術的には可能です。しかし、暗号化されていないため、盗聴や改竄が容易であり、また認証も不十分なため、不正アクセスもたやすくできます。
そこで、インターネット上でも安全に利用できるよう、暗号化や認証を規定したものが広域IP網版全銀手順です。
センター確認コードや全銀ファイル名、ファイルアクセスキー、レコード形式、レコード長といったパラメータは、全銀手順の規定を引き継いでおり、また通信データのフォーマットを変更する必要もありませんので、移行は比較的容易です。

はい、固定電話のIP網化の影響を受けます。JCA手順は日本チェーンストア協会が策定した通信プロトコルで、全銀手順と同じように電話回線を使用するEDI方式です。
流通業界では、JCA手順から流通BMSへの移行を推奨しています。しかしJCA手順と流通BMSでは規定されるビジネスプロセスやスキーマ、データ形式などが大きく異なっており、流通BMSへ移行するには、基幹システムの見直しを含めた大規模な改修が必要になります。
取引先（小売業）側の対応にもよりますが、JCA手順から広域IP網版全銀手順への移行も選択肢の1つと考えております。

まずEDIソフトウェアが広域IP網版全銀手順に対応しているかどうかの確認が必要です。対応していない場合はバージョンアップあるいは製品の乗り換えが必要になります。
通信を行うソフトウェアは、新たな脆弱性が発見されると修正パッチが提供されますので、脆弱性の情報は常時確認する必要があり、パッチが提供されれば速やかな適用が必要です。
次にネットワーク設定の変更です。ベーシック手順（サーバー間通信）を採用する場合、サーバーをインターネットに公開する必要がありますので、サーバー攻撃から防御するため十分なネットワークセキュリティを考慮する必要があります。
一方、パソコン手順（クライアント－サーバー通信）を採用する場合は、社内からインターネットへ出るためのポートを開放する必要があります。
広域IP網版全銀手順はセキュリティ強化のため、クライアント証明書認証を採用するケースがあると思われます。クライアント証明書には有効期限が設定されており、期限を1秒でも過ぎると通信できなくなります。そのため、期限が切れる前に証明書を更新する必要があります。複数の取引先とEDIを行う場合は、クライアント証明書も複数になることもありますので、有効期限管理は欠かせなくなります。

貴社と取引先様の間にサーバー機能を持たせる必要があります。弊社では広域IP網版全銀手順のサーバー機能をサービス提供しておりますので、弊社サービスを経由することでEDI接続が可能となります。なお、サーバー機能に対応したソフトウェアの導入で対応することは可能かと思われますが、ネットワークセキュリティの担保や証明書（サーバー証明書・クライアント証明書）の管理などの対応が必要になりますので、その点もあわせて検討する必要があります。
弊社では、全銀TCP/IP手順TLS対応版 EDIサービスをご提供しております。レガシーEDI（全銀手順、全銀TCP/IP手順、JCA手順）からの移行作業もサポートいたします。

NTT東西会社は2027年ごろまで補完策として「メタルIP電話上のデータ通信サービス」を提供すると発表しております。ただし、使用状況により2027年よりも前に終了する可能性もありますので、可能な限り早めに他のEDI方式（インターネットEDIなど）に移行することをお勧めいたします。

EDIをアウトソーシングする、というのが解決策の1つです。EDI設備を自社構築、自社運用されている企業にとって、それを社外に委託するのは不安に思われることでしょう。しかしEDI設備を構築し、維持運用するためどれだけのコストと要員が費やされているでしょうか。
EDIはITの世界でメジャーな分野ではなく、そのためEDIのスキルを持った要員は決して多いとは言えません。一企業の中でEDI要員を育成していくことも今後は困難になると思われます。それに加え、インターネットを使用することを前提とした広域IP網版全銀手順ではセキュリティの確保、クライアント証明書管理など、これまでのEDIではあまり考慮する必要のなかった対応も必要になります。
長いスパンで捉えた場合、EDIのアウトソーシングは必ず効果の出る解決策であると考えております。
弊社では、お客様のEDIを丸ごとアウトソーシングいただけるサービスを提供しておりますので、是非ともご相談ください。
弊社が提供するEDIアウトソーシングサービスの詳細はこちらをご参照ください。

電話回線を用いた伝送サービスは「2023年12月末」で提供を終了しています。