古いEDIが「足を引っ張る」? データ活用時代にサービスとしてのEDIが求められるワケ

商取引を始めとするデータを交換する仕組みの「EDI」。企業間取引を効率化する仕組みとして長い歴史を持つが、近年、データ活用やビジネスのスピードアップの重要性が叫ばれ、"レガシー化した"EDIを刷新しようとする機運が生まれている。しかし、業種、業態ごとに最適化されたEDIの刷新は一筋縄ではいかない。データ活用時代に求められるEDIとはどのようなものか、探ってみよう。

ビジネスの急激な変化で高まるデータ連携のニーズ

 商品の受発注や発送処理、あるいは店舗のレジ端末から本社のサーバに売上情報を送ることや、銀行の振込といった情報のやり取りに至るまで、企業間取引における「EDI」(Electronic Data Interchange:電子データ交換)は、大量のデータ交換を正確に、スピーディに行う仕組みとして、長く発展してきた。

 近年、ビジネスのスピード向上や、さらなるデータ活用の必要性が高まり、「よりリアルタイムにデータ交換したい」「業種や業界の垣根を超えて使いたい」「受発注データだけでなく多種多様なデータを交換したい」といったニーズが高まっている。

 しかし、長く使われてきたゆえにツギハギでアップデートされ、「レガシー化」してしまったEDIは、容易にリプレースできるものではない。データの量と種類が増えるにつれ、運用の負荷も無視できないレベルにまで膨らんできた。企業のEDIにはさまざまな課題が残っている。これはともすれば、ビジネス自体のボトルネックになりかねない問題だ。

運用負荷もネックに...このままEDIに振り回されたままで良いのか?

 たとえば、社内に資料が残っていない、担当者がすでに定年退職などでわかる人がいないといったケースはよくある。EDIのパッケージソフトを導入する際には、自社の要件に合わせたカスタマイズが必要だが、そもそも自社システムを把握することができないのだ。ほぼ一から作り直しとなるとコスト面が見合わないため、リプレースを断念したという企業もある。結果、古くて高いコストの仕組みをそのまま使わざるを得ないわけだ。

 クラウド化の流れの中で、基幹システムをクラウドに移行した企業の中には、EDIをリプレースできなかったがために、取引先とのデータ交換の部分はアナログ回線のまま利用しているというケースもある。

 運用の壁も厚い。業界で規格化された「標準EDI」であっても、業種や業界の垣根を超えて利用できるものは少ない。企業ごとの「個別EDI」もまだまだたくさんある。ISDNなどの終了に伴う「2025年問題」でWeb-EDIへの移行が進んでいるが、Web-EDIは個別EDIと同じだ。複数の取引先とデータ交換を行う企業の場合、企業ごとに異なるEDIにアクセスしなければならない。

 こうした運用負荷を嫌い、「今のFAXを用いた受発注の仕組み、運用フローを変えてまでメリットが得られない」と、EDIの導入を見送る企業も多いだろう。

 これからますますデータ活用が重要となる時代に、このままEDIやアナログなデータ交換に振り回されたままで良いのだろうか?

多様な取引先に対応したアウトソース型の「EDIサービス」とは

 そこで注目されるのが、大阪ガスの子会社であるオージス総研の「EDIアウトソーシングサービス」だ。ソリューションの概要について、同社の奥野 公彦氏は「運用の手間なくすべておまかせで、取引先ごとの仕様に合わせたデータの送受信が可能になるアウトソーシングサービスです」と説明する。

オージス総研 プラットフォームサービス本部 クラウドサービス部 部長 奥野 公彦氏

オージス総研 プラットフォームサービス本部 クラウドサービス部 部長
奥野 公彦氏

「自社でEDIを運用する場合は、さまざまなEDI方式への対応や取引先からの問い合わせのほか、EDIサーバの運用管理や障害対応など、すべて自社で行わなければなりません。フルアウトソース型である『EDIアウトソーシングサービス』を活用いただければ、お客さまは弊社のEDIセンターと接続するだけで、面倒なEDI運用から解放されます」(奥野氏)

図 アウトソーシングサービスを活用した場合

EDIアウトソーシングサービスは、EDIをすべておまかせできるフルアウトソース型のサービスだ。
取引先との各種取引業務におけるデータ送受信・変換等がワンストップで提供される

 「EDIアウトソーシングサービス」の特徴は次の3点だ。

 1つ目は、「ワンストップ提供」。すなわち、EDIの導入から運用までスピーディにサービス提供できる点だ。2点目は「幅広い対応力」。細かな業界仕様に対応したEDIのほか、FAX送受信や帳票印刷、郵送までをカバーする。企業のビジネスニーズに合わせてカスタマイズしてサービスを提供することが可能だ。

 そして3点目が「信頼の実績」である。30年以上のサービス提供と2,500社以上の利用実績がある。同社の松井 宏樹氏は「以下の5つの主要機能を柔軟に組み合わせ、自社のビジネス課題に合致したEDIをアウトソーシングしていただくことができます」と説明する。

オージス総研 プラットフォームサービス本部 クラウドサービス部 クラウドサービス第一チーム リーダー 松井 宏樹氏

オージス総研 プラットフォームサービス本部 クラウドサービス部 クラウドサービス第一チーム リーダー
松井 宏樹氏

  • 機能1:データ伝送サービス
  • 機能2:データ変換サービス
  • 両機能により、データのきめ細かい加工、変換から、実際のデータ伝送の運用までをワンストップで行うことができる。

  • 機能3:EDI回線接続サービス
  • 特に機微なデータをやり取りするケースにおいて専用線敷設やVPN構築などを行うサービスだ。

  • 機能4:FAX/BPOサービス
  • 入力代行、発送代行などを行うBPOサービスだ。

  • 機能5:Web EDIサービス
  • Web EDI導入から運用までをワンストップで提供するサービスだ。

図 サービスメニュー

EDIアウトソーシングサービスは、5つの主要なサービスから構成されており、業務に合わせて柔軟に選択することができる

 さらに付帯サービスとして、導入コンサルティングや設計支援、実際の運用でのレポーティングや、有事の際のBCP構築オプションなどが用意されている。

 競合優位性について、松井氏は「きめ細かい対応力」を挙げる。たとえば、工場から送られてくる各種データを蓄積、連携する複数のシステムの締め時間に対応し、必要な計算処理を行い、異なるフォーマットに変換、連携するところまで対応することが可能だ。

「単に受け取ったデータを、決められたフォーマットに加工して伝送するだけでなく、複数のシステムに対応したデータの集計などの処理までをサービスとしてカバーしているソリューションは少ないと思います」(松井氏)

 業界標準化活動にも積極的に関わっており、あらゆる業界のデータフォーマット、標準に精通している点も大きな優位性といえる。

 さらに、同社の永壽 拓宏氏は、オージス総研の独自価値として、「大阪ガスの子会社であることによる高い品質」と「システムインテグレーターとして幅広い領域をカバーしている」点を挙げる。

オージス総研 プラットフォームサービス本部 クラウドサービス部 クラウドサービス第一チーム リーダー 永壽 拓宏氏

オージス総研 プラットフォームサービス本部 クラウドサービス部 クラウドサービス第一チーム リーダー
永壽 拓宏氏

 公共料金の振替など、公共性の高いシステムを数多く手がけてきた点や、オープンソースをはじめとする最新テクノロジーをいち早く取り入れ、より低コストで信頼性の高いシステムを提供できる点は同社ならではの強みといえる。

IoTを見据え、多様なデータ連携のニーズにも応えていく

 こうした点が評価され、さまざまな業種で導入が進んでいる。たとえば、ポリプロピレン樹脂の研究、技術開発、生産、販売を手がける化学メーカーでは、EDIやFAXなど、社外とのインターフェースのためのインフラを「自社保有」から「サービスとして利用」することでTCO削減を実現した。細かいデータフォーマットの差異などをオージス総研側で吸収することで、受発注業務の90%以上を自動化することができた。

 また、大手商社でも、30年以上の運用実績をもつEDIについて「IT統制に伴う業務の増大」という課題解決に「EDIアウトソーシングサービス」を採用。システムの自社運用から脱却することで、EDIサーバやFAXサーバなどのインフラを自社保有する必要がなくなり、コストの圧縮と運用負荷軽減を実現した。さらに、数多くの外部との接続仕様の変更、接続先の増減にも柔軟に対応する体制を構築できた。

 そして、ベビー用品の製造、販売を手がけるメーカーでは、基幹システムのAWS化に伴い、それまでのアナログ通信を利用していたEDIを「EDIアウトソーシングサービス」にすることで、取引先企業との連携を確保。併せて、2024年のINSネットの提供終了への対応も不要となった。

 今後は、IoTなど、企業内のデータを活用して新たなビジネス価値を生み出すニーズにも対応したいと奥野氏は語る。

「IoT進めるためには、企業間でデータを共有する必要があります。そうした基盤づくりに、長くEDIを手がけてきた当社のノウハウを活用することも一つの方法です。受発注に限らず、さまざまなデータ連携、活用というビジネスニーズにも応えていくために、新たなサービス領域に応えるサービス基盤の整備を進めているところです」(奥野氏)

 デジタル化が進み、ビジネスが一つの企業で完結することはなくなってきた。そうした状況下で取引先とのデータ連携のニーズはますます高まっていくだろう。奥野氏は「従来のバッチ処理では対応できない、リアルタイムの少量データの連携というニーズにも、われわれのサービスが解決策を提供できます」と語ってくれた。

 従来の締め処理、バッチ処理などの方式が適している領域はそのまま残し、リアルタイムのデータ連携が必要な新たな領域については、「EDIアウトソーシングサービス」を利用するというようなハイブリッドな利用形態も、選択肢の一つとなるだろう。


2021年9月16日
※本記事は2019年2月22日にビジネス+ITに掲載された転載です。
※記載している情報は掲載当時のものです。
※本文中に記載されている事項は、予告なく変更することがあります。


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