【初学者向け】研修で得られるものとは【セキュリティー】
セキュリティーの重要性
現代はIoT化、つまりあらゆるものがインターネットにつながるようになりました。インターネットにつながるということは、外部に開かれているということです。まるで、家の扉を開けているようなものです。扉を開けっ放しのままでは誰でも好きな時に家に入れます。その中には空き巣のような悪い人たちも含まれます。そうならないように、我々は家に鍵を掛けます。
このようにインターネットによって外部とつながっていることは、便利である一方でリスクもあります。テレビやスマホなどでは『機密情報が抜き取られた』『サイバー攻撃によりシステムがダウンした』などといったニュースがたびたび報道されています。
我々は家に鍵を掛けます。オートロックや警備会社との契約までしている人も読者の中にはいらっしゃるかもしれません。もちろん、一般的な用語としての『セキュリティー』と、IT用語としての『セキュリティー』は厳密には定義が異なります[1]が、大切なものを悪い人たちから守り、我々が安心して利用するために必要であることには変わりありません。利用者が安心して使うためにも、また利用者が安心して使うものを作る提供者にとってもセキュリティーは重要なものとなっています。
なぜ研修を受けるのか
今回のテーマに限らず、我々はさまざまな研修を受けます。研修を受ける理由としてまっさきに挙げられるものは、『知識を学ぶため』でしょう。興味があること、業務に必要なこと、自己投資のためなど細かい理由はさまざまですが、要は知りたい分野を理解するために受講します。
しかし我々は学習の方法を他にも知っています。参考書や技術書といった書籍、動画配信サービスやオンライン教材といったe-learning、またまた近くの先輩に相談することもできます。研修以外の方法があるにも関わらず、研修という形が選択される理由は何でしょう?
1つ目は、『人から学ぶため』です。独学の場合、どうしても理解が及ばないこともあります。自力で解決できることもありますが、そうでない場合は助けを求めて相談や質問をします。最近は生成AIに訊くこともできますが、AIはハルシネーション、つまり嘘をつくことがあります。得られた回答を自力で精査できるほどの理解が伴っていない場合、扱いには注意が必要です。回答の確からしさを求める場合は、まずは書籍や専門家の力を借りましょう。自分が知らなかった知識や考え方を知ることで、わからなかった内容を理解することができます。わからないことは、その場ですぐに解決したいものです。場合によってはチャットやメールでの問い合わせで解決する場合もありますが、返信まで時間がかかったり認識のすり合わせが難しかったりします。それに対し、対人で質問や相談をするとき、我々は会話をすることができます。質問や相談のやりやすさ、そして回答をすぐに得られるという点は、対人ならではでしょう。しかし、この理由は研修の受講だけではなく、有識者へ質問や相談をすることでも達成できます。しかし、研修には他にも良いところがあります。
2つ目は、『まとまった時間で学ぶため』です。何かについて学ぶ際、どこまで学べば区切りになるのか、つまり学習のゴールを設定するのは難しいです。学び始めは、ゴールを設定するための知識や裏付けもないためです。ましてや、やればやるほど新しい謎や疑問が生まれ、学びには終わりがないものと痛感します。しかし、他にもやりたいこと、やるべきことがあるはず。どこかで区切りをつける必要があります。研修にはカリキュラムがあります。学ぶテーマがはっきりとしており、ゴールが定められています。また、研修中は学びに集中できるまとまった時間を確保できます。他の作業の割り込みを防ぐように調整することが可能です。また、研修中は質問や相談もしやすい空間です。仮に業務中の質問や相談を繰り返す場合、そのたびに細かい時間を何回も割いてもらう必要があります。そのたびに相手は質問や相談の内容だけでなく、内容に至った背景の把握もしなければなりません。また、対応のたびに自分が行いたかった作業の手を止めなくてはなりません。一度や二度であれば問題ないとしても、それが何十回、何百回となれば、塵も積もれば山となる、です。研修中は、学ぶ時間であり講師にたくさん質問してもOKな時間です。対人であれば、一問一答だけでなく、自分の考えと相手の考えについての議論もしやすいでしょう。1つ目の理由『人から学ぶため』でも述べましたが、質問や相談のしやすさは対人の強みです。強みは活かしてナンボです。
3つ目は、『学習レベルの担保を得るため』です。研修とは、それを1つのカリキュラムとして、仕事として提供されています。つまりプロの技です。難関学校を目指す学生が、有名な学習塾や予備校に通うように、どうせお金を払って学びのであれば、学びのレベルが担保されているほうが安心です。
以上の3点の他にも、演習で実践的に学べる、グループワークにより受講者同士で議論できる、その他裏技や裏話が聞けるなど理由はありますが、独学では難しいことも安心して理解を深めることが期待できることに、研修受講の意義があるでしょう。
なぜセキュリティーの研修を受けるのか
前章で研修を受ける主な理由として、『知識を学ぶため』を軸に考えました。しかし、研修を通して得られるものは知識だけではありません。それは観点、そして発想です。
研修に限らず、勉強全般布いては趣味などあらゆるものにも通じますが、知らなかったことを新たに知るということは、自分の世界の見方が変わります。筆者は、これは比喩ではなく言葉通りの意味と捉えています。知った以前とは、同じものや同じことに対する感じ方や捉え方が変わります。例えば、家でよく見る黒い鳥が、実は海を渡って旅をしていると知れば、ただの黒い鳥は渡り鳥になります。長旅を労う気持ちが湧くでしょう。また、旅の理由が子育てとあれば、育児に奮闘する親は親近感を持つかもしれません。このように、観点や発想を新しく獲得することは、同じもの同じ状況でもこれまでとは異なる解釈を与えてくれます。このような新しい視点の獲得は、セキュリティーを学ぶ上で、特に初学者にとっては大きな意味を持ちます。
セキュリティーは安全(セーフティとは区別)を得るためのものです。セキュリティーを考える上で必ず現れるもの、それは攻撃者です。攻撃を仕掛ける相手に対し、どのように対策を取るかを考えます。攻撃者は、開発者でも経営者でもユーザーでもありません。想定されていない利用により、想定されていないことをされた結果、機密情報の漏洩や動作の不具合の発生が起こるのです。つまり、提供側と利用者とは異なる見方や発想をもって考えなければいけません。また、攻撃者の視点は専門的な知識や経験が求められます。日常生活だけでは精度を上げることは困難です。普段システムへの攻撃を趣味としているようなハッカーでない限り、攻撃者視点での思考はイメージしづらいでしょう。それに加えて、攻撃者がどこから攻撃し、どのように攻撃するかは、攻撃者からの発想がなければ気づけません。日常生活で培われづらいものであるため、意識的に学び意識的に気づく必要があります。
視点または発想はどのように得るのでしょうか。それは勉強しかありません。しかし、専門的な内容は難度が高いことが多く、独学で理解するのが難しい領域もあります。その場合、有識者から学ぶのが一番でしょう。しかも、研修という形であれば、カリキュラムに沿って受講者の目線に立ってわかりやすく作られた教材を用いて学ぶことができます。技術書では、特定の技術については詳しくなるかもしれませんが、その技術がどのように関わるのかを複合的に組み合わせて理解するには知識をただ学だけでは難しいです。講師がわかりやすく、時には自らの経験をもとに話を聞くことができ、学びを深めることができるでしょう。
学びの第一歩として、特にセキュリティーの分野においては研修の受講をお勧めします。受講後に興味や危機感を覚えたのであれば、更に学習を深めていきましょう。
■脅威分析ハンズオン研修
→【初級編】脅威分析ハンズオン研修
→【実践編】脅威分析ハンズオン研修
■組み込み機器へのセキュリティ対策講座
→【入門編】組み込み機器へのセキュリティ対策講座
→【実践編】組み込み機器へのセキュリティ対策講座
■制御システムセキュリティ
→制御システムセキュリティ
セキュリティー学習のモチベーション
セキュリティーは、マイナスをゼロにする分野です。セキュリティーが機能し、効果が出ている(攻撃から守られている)場合は何も起こりません。攻撃されているのかいないのか、攻撃された結果防ぐことができているのかの区別がハッキリとは見えづらいです。充分に機能していたとしても頑張りの報酬が見えづらく、モチベーションの維持ができなくなることも時にはあるでしょう。ゆえに、セキュリティーに取り組む我々は、わかりやすい報酬といった外発的なモチベーションだけではなく、興味や取り組む意義といった内発的なモチベーションを持つことが重要です。セキュリティーの重要性に共感し、縁の下の力持ちとして泥臭く誇りをもって頑張っていくためには、自分なりのやる気スイッチを見つけることが肝要です。やる気スイッチが自分で押せるようになれば、セキュリティスペシャリストへの第一歩はクリアです。
まとめ | セキュリティー研修を受けてどう変わるのか
本コラムでは、研修、特にセキュリティーの研修を受講する意義について考えました。学びによって知見が深まるだけでなく、観点や視点を新しく獲得できることを述べました。セキュリティーを考える際は、攻撃者の立場で考えることが重要です。攻撃者の視点は、提供者目線や利用者目線とは異なる世界観であり、日常生活で自然に身につくものではありません。「攻撃者ならどう攻撃するか」といった攻撃者の立場からの思考を想像する第一歩として、まずは研修を受講してみることをお勧めします。
■脅威分析ハンズオン研修
→【初級編】脅威分析ハンズオン研修
→【実践編】脅威分析ハンズオン研修
■組み込み機器へのセキュリティ対策講座
→【入門編】組み込み機器へのセキュリティ対策講座
→【実践編】組み込み機器へのセキュリティ対策講座
■制御システムセキュリティ
→制御システムセキュリティ
参考
[1]https://www.weblio.jp/content/%E3%82%BB%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC(外部サイト)
2026年1月7日公開
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。
関連サービス
-
セキュリティソリューション
組み込み機器、制御システム、IoTデバイスを対象とした、お客様の課題に応じたセキュリティソリューションをご提案します。
-
つながる組み込み機器のセキュリティ研修
近年、これまで単独で動いていたさまざまな組み込み機器がネットワークにつながり、セキュリティに真剣に取り組まなければなりません。 この研修では、つながる組み込み機器のセキュリティ上の課題や対策を、具体的にわかりやすくお伝えします。
-
【初級編】脅威分析ハンズオン研修
脅威分析の経験がセキュリティに取り組むきっかけとなる研修をご提供します。
-
【実践編】脅威分析ハンズオン研修
セキュリティ対策に必要な脅威分析作業をリードする実践スキルを身につけていただきます。
関連記事一覧
Black Hat発表から学ぶ!フィッシング詐欺とアカウント復旧の新たな課題
MBSEとは?ドキュメントベースの開発の違いやメリット、期待される効果について解説
工場の制御システムを守るためのセキュリティ対策ガイド
【脅威分析・TVRA】効果的なセキュリティリスク評価のステップ
IoTセキュリティガイドラインとは?目的や概略、推奨されるセキュリティ対策を解説
セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度(JC-STAR)とは?概要や評価基準を解説
製造業がMBSEを導入する前に知るべき課題と対策
複雑化する開発にMBSEを。いまこそ導入すべき3つの理由
TinyMLとは?基本概念や実装方法を解説
エッジAIとTinyMLが切り開く可能性
時系列分析について実際のデータを例にモデルや活用事例をご紹介
エッジAIとは?活用事例や導入方法、メリット・デメリットを解説
IoTのセキュリティ対策とは?3つのセキュリティリスクとその対応策
