第21話 真言
‘なにかが村’では、昔からの言い伝えの儀式の準備がそろいました。
ここで唱える真言ですが、新年寅年の守り神は虚空菩薩の真言で「オン バザラ アラタンノウ オンタラク ソワカ」、それと「虚空蔵求聞持法」で用いられる「ノウボウ アキャシャ ギャラバヤ オン アリキャ マリ ボリ ソワカ」。
この二つを、唱えることになります。
日が落ち始めた頃から、色々な地方へ、‘草’としていっていた村人を含め、全員が結界の中に入り、太鼓、鐘、拍子木などを打ち鳴らしながら、全身全霊をこめて、真言を唱え始めたのです。
それを見ていた幸村の見張りは、この村ではこいう新年の迎え方をするのかと、思って見ていました。
時がたち、日が変わろうとする頃、結界のあたりにもやが立ち始め、どんどん濃くなっていきました。
やがて、それのもやは、隣の人間さえ見えなくなるほどでした。
それでも、熱狂的な真言は続きます。
「オン バザラ アラタンノウ オンタラク ソワカ」、「ノウボウ アキャシャ ギャラバヤ オン アリキャ マリ ボリ ソワカ・・・・・・」
しばらくして、だんだんもやが薄くなり、周囲が見えるようになってきました。