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「<オージス総研をとりまく>人工知能技術の過去と現在(2)」
2017.05.19 株式会社オージス総研 乾 昌弘
1.はじめに
(2)学生時代にAIの技術を知能ロボットシステムに組み込んだことがあるため、1984年に大阪ガス本社に呼ばれて、「人工知能がバイオテクノロジーやファインセラミックスなどとともに、これから重要な技術になる」ということで、人工知能の研究開発を始めることになりました。
(3)日本国内では充分に環境が整っていないということで、米国に拠点を移して独自性のあるソフトウェアの開発をめざすことになりました。
(4)ここでは、CSRL(Conceptual Structure Representation Language)を用いた非破壊検査エキスパートシステムとルールベースを用いた電力系統操作訓練システムにテーマを絞って概要を紹介します。
2.非破壊検査エキスパートシステム
2-1.CSRLの特徴
(2)米国 Ohio State Universityで考え出されたCSRLは分類型エキスパートシステムに特化したツールである。
(3)基本構造はSpecialistと呼ばれ階層構造になっている。Depth-First-SearchでSpecialistの中にある複数のKnowledgeを評価していく。
(4)Specialistは前号で紹介したFrameのようなものである。Knowledgeは独自のフォーマットを持っており、それに従って作成すればよいようになっている。
図1.CSRLの構造
2-2.非破壊検査エキスパートシステムへの適用
(2)次にJISと社内基準に基づいて、専門家の知識をルール化した。
(3)Specialistは、全部で37個になった。それぞれのSpecialistの中に欠陥に関するKnowledgeが記述されている。
2-3.考察
(2)当時のエキスパートシステムでは限界があり、前号で紹介した(画像を対象に教師あり学習をおこなう)CNN(Convolutional Neural Network) あるいは、欠陥が複数ある場合R-CNN(Regions with CNN features)を応用すると、うまく行く可能性がある。
3.電力系統操作訓練システム
3-1.ICAI(Intelligent Computer Aided Instruction)とは、
(2)特に (A)誤りを見つけ (B)どういう誤りかを分類し (C)それに応じて適切な指導、あるいは次の教材を提示すること に力が注がれた。
(3)研究の目的は、インストラクタがいなくても教育ができることをめざしていたが、実用的にはインストラクタによる教育の補完的な役割を果たした。インターネットの発展に伴いe-Learningに繋がっていく。
3-2.電力系統操作訓練システム
(2)画像、音声合成及びシミュレーションという強力なインターフェイスも効果的な役割を果たした。
(3)専門のインストラクタの知識をもとに、ルール化して (A)操作の誤りを見つけ (B)誤りの分類をして (C)適切な指導が表示できるようにした。なお課題なしで、シミュレーションだけでもできる機能になっている。
(4)実際に5か所の都市ガス工場に設置され使用された。
写真1.オージス総研(前身)のパンフレット(1989年)
3-3.Authoring System
(2)インストラクタは、まずModel Builderを使ってアイコンを選択しながらシミュレーションモデルを作成する。このModel Builderは、オブジェクト指向言語で構築されている。
(3)次にサブゴールごとに操作をしながら、教材を作成していく。
(4)ちなみにプラント操作誤りを分類すると (A)無関係 (B)冗長性 (C)順序性 (D)操作性(タイミングの悪さなど)(E)正確さ(絶対量、偏差の誤り)になる。
3-4.考察
(2)エキスパートシステムを専門家の代わりに現場で使うのは難しく、マルチメディアやシミュレーションが実用化されていく中で、教育システムが現実的なソリューションであると考え、教育システムの開発を継続していくことになる。
4.オージス総研の状況
(2)エキスパートシステム、ニューラルネットワーク、ICAI、画像処理・画像認識などの開発が行われた。また、沖電気と日英・英日機械翻訳システムの共同開発が行われた。
(3)エキスパートシステムは計画型が中心であった。
(4)「1989年12月1日:第5世代コンピュータの開発の中心人物であるICOTの淵一博氏がAIセンターで講演をされた」旨の社内記事が残っている。
「参考文献」
1. | 乾昌弘「訓練用非破壊検査ESの開発」大阪ガス社内技術報告会(昭和62年) |
2. | Tom Bylander, Sanjay Mittal: "CSRL", AI Magazine Vol.7,No.3 |
3. | S. Mahalingam, D.D. Sharma: "WELDEX", 7th Conf. on AI Applications (1985) |
4. | M. Inui, et al,: "Development of a Model-Based Intelligent Training System", Future Generation Computer Systems 5 Elsevier Science Publishing B.V., (1989) |
5. | M. Inui, et al,: "Development of a Model-Based Intelligent Training System and Authoring System" The Transaction of The IEICE, VOL. E 73, No.3, March 1990 |
6. | M. Inui: "Fundamental Research on Simulation Based Intelligent Tutoring Systems" The World Conf. on Expert Systems 1991, Florida USA. (余談:Session Chair も引き受けた) |
7. | 乾昌弘、他「プラント操作を教える」コンピュータ科学 Vol.2 No.5 1992 |
(謝辞)CSRLに関して御指導いただいた米国 Battle Memorial Institute、及び、電力系統操作訓練システムのプロトタイプの開発に協力していただいた米国 Vanderbilt Universityの関係者の方々に感謝いたします。
図2.掲載テーマ及び予定(御参考)
「余談」
(1) | 第2次AIブームに伴って、頭文字にIの付く技術が出てきた。Iはinternetではなく、Intelligentの意味で使われた。ICAD(Intelligent Computer Aided Design)もそうである。 |
(2) | 1980年代の後半、東大の坂村健氏が提唱したTRONの一種であるBTRONを、文部省は教育用パソコンの標準規格として採用する予定であった。優れたOSで、私は大変期待したのだが、米国が自国製OSを脅かすとして非常な圧力をかけてきた。結局、日本は屈して、その後のWindowsやUNIXに独占されることになった。自動車の輸出自主規制などと合わせ、悔しい思いをした技術者は多かったと思う。 |
(3) | つい最近のことであるが、画面の前に立つと瞬時に男性・女性の判別と推定年齢が表示されるシステムが展示されていたので、試してみた。事前の話によると、アメリカ人をモデルにしているので、若く判断されるということであった。 結果は5歳年上に判断されたので、気分を害して帰宅したという記憶がある。女性であったら、どうなっていたことか! |
*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。
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