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「<Part 2>人工知能技術の過去と現在(2)」
株式会社オージス総研

2018年07月号
  • 「<Part 2>人工知能技術の過去と現在(2)」
株式会社オージス総研   乾 昌弘

1.はじめに

人工知能技術に関して今までは主に原理的な説明でしたが、ここでは、まず推論の種類について紹介し、自動運転への応用を中心に説明します。

2.推論

2-1.推論とは、

推論 (Inference):既知の知識・データをもとに未知のことを予測する。主に3種類の推論方法がある。

2-2.3種類の推論方法

(1)Deduction:「演繹推論」規則を繰り返し適用して結論を導き出して。3段論法も一つの手法。ルールベースにおけるForward Chaining、Backward Chainingがそれにあたる。BRMS(Business Rule Management System)が応用例である。
※ルールベースを用いて推論する機構は「推論エンジン (Inference Engine)」と呼ばれている。

以下も参考のこと
2.エキスパートシステム、BRMS

(2)Induction :「帰納推論」特定の事実、経験から規則を作りだす。一般的に機械学習がそれにあたると考えられる。

以下も参考のこと
3.機械学習
2.ニューラルネットワーク、ディープラーニング

(3)Abduction :「経験から直感(Intuition)でひらめく推論
いろいろな説があると思いますが、以上のように定義したいと思います。

3種類の推論方法
図1.3種類の推論方法

3.自動運転

(1)鉄道車両の自動運転に関しては古くから実用化がなされています。例えば、ATS(Automatic Train Stop)やATC(Automatic Train Control)です。鉄道車両の場合は比較的容易で、
  1. Operations:プロが運転している
  2. Guide:レールがガイドしている
  3. Obstacles:障害物がない前提である
  4. Services:計画的に運行されている
などが理由です。

(2)それに対して、自動車の場合も古くから自動運転の研究がなされてきました。前方の障害物や自動車を瞬間的に認識して、判断する。ということが、コンピュータの能力不足などで、実用化に至らなかったと考えられます。
(3)なお鉄道車両や自動車の走行性能に関しては、古くから研究されています。例えば、40年前に大学院で以下の科目を履修しました。
「車両工学特論B」自動車の走行安定性、自動車の操縦、鉄道車両の走行安定性、軌道システムの操行誘導性能、連節車両の走行安定性など

3-1.自動車の自動運転に対する基本的な考え方

(1)自動車の自動運転は、コンピュータの能力向上や人工知能の発展などにより、実用化に向けて開発が行われています。
  1. 自動車、障害物(人など)の認識、車線の認識、信号の認識
  2. スピード調整、方向転換、車線変更などの制御
  3. 目的地までのNavigation
など多くの課題があります。

(2)この自動運転は「ルールベースにロジックを書き込む」と「(ディープラーニングをはじめとする)機械学習」の組み合わせで実現しようとしていると言われています。ロジックで書けるものは書いて、そうでないものは機械学習するというのは、ごく自然な考え方です。
前者が「deduction 」で後者が「induction 」と考えられます。それに対して「abduction 」は現在の人工知能では難しいと思います。

(3)自動運転は、多少の変化には対応できるが予期せぬ事態に対処ができません。これは、機械学習の課題でもあります。
 それに対して人間は常識を持ち、深い理解力がある。従って、人間に対する「運転サポート」が実用的であると考えます。

自動車の自動運転に対する基本的な考え方
図2.自動車の自動運転に対する基本的な考え方

3-2.自動車の自動運転の課題

(1)例えば「左車線に入る時に、左後ろの車に目配せして、左に少しハンドルを切って威嚇。スピードを落としたら入る」ということが、自動運転にはできない。
(2)ドライバーを寝かせないことも重要。
※(1)(2)は「Denso IT Laboratory講演」を参考にしました。

(3)そもそも、インフラやルールは、人間が運転する前提で作られているので、自動運転のハードルは高い。
(4)「人間による運転と自動運転が混在する社会」を越えて、すべて自動運転になるとハードルが低くなる。 

混在する車社会
図3.混在する車社会

(5)「トロッコ問題」;ブレーキが利かなくなったら、5人が乗っている対向車とぶつかるか、ハンドルを切って横道を歩く1人の犠牲を選ぶべきか?判断が難しい
(2017年7月号でも触れました)

トロッコ問題
図4.トロッコ問題 (画像は「いらすとや」より)

(6)人工知能が人間を圧倒しているゲームの世界(Games World)とは大きく事情が異なる。

 以下も参照の事
「<オージス総研をとりまく>人工知能技術の過去と現在(7)」

3-3.コンピュータシステムの階層化

(1)自動車の自動運転「Cloud & Edge Computing(車載)
 すぐに対処が必要な情報処理は、車載のコンピュータで対応し、多少時間がかかってもよい情報処理は、クラウドで対応するといった方法が採られます。

自動運転でのCloud & Edge Computing(車載)
図5.自動運転でのCloud & Edge Computing(車載)

(2)このような方法は、大昔から採られている方法で、大学院時代の研究内容(1979年~2年間)でのコンピュータシステムの階層化を図6に示します。

詳細は下記を参照のこと
3.大学院時代の研究内容(1979年~2年間)

知能ロボット制御でのコンピュータシステムの階層化(約40年前)
図6.知能ロボット制御でのコンピュータシステムの階層化(約40年前)

「補足」自動運転のレベル分けについて

国土交通省公開資料より
図7.国土交通省公開資料より

「参考文献」
1.東京大学大学院工学系研究科「講義要目 授業時間表」昭和55年度
2.乾昌弘、吉本助教授「M12 移動ロボットの計算機制御に関する研究」東大機械工学研究報告 第16巻(1981)
3.乾、吉本「移動ロボットの計算機制御に関する研究」第24回自動制御連合講演会(昭和56年)

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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