ITシステム運用とは?ITシステム保守との違いや仕事内容、業務効率化の方法を解説
ITシステム運用とは?その役割とは?
ITシステム運用はどういう運用のことか、運用することの役割はどういうことをかを解説いたします。
ITシステム運用とは?
ITシステム運用とは、企業が使うITシステムを安定して動かすための管理や対応を行う業務のことです。たとえば、サーバーやネットワークの管理、システムの監視、トラブル対応、データのバックアップ、セキュリティ対策などがあります。
システムが正しく動かないと業務に支障が出るため、ITシステム運用はとても重要です。近年はクラウドの活用が増え、運用の方法も変化しています。また、AIや自動化ツールを使って、運用の負担を減らす取り組みも進んでいます。
企業がスムーズに業務を進めるために、ITシステム運用は欠かせない役割を果たしています。
ITシステム運用の役割と目的
企業のITシステム運用は、システムを安定して稼働させ、業務がスムーズに進むよう支える役割を持っています。システムの監視や障害対応、データ管理、セキュリティ対策などを行い、トラブルを未然に防ぐことが重要です。
また、ITシステム運用の目的は、業務の効率化や生産性向上、コスト削減などに貢献することです。近年では、AIや自動化技術を活用し、より効率的な運用が求められています。企業の成長を支えるためにも、適切な運用管理が欠かせません。
運用自動化の進め方やAIOpsの推進事例

運用自動化やAIOpsに関連する主な資料
● 運用自動化やAIOpsを支援するCloud Archの概要資料
● AIOpsの2つの推進事例
● オージス総研のAIOps推進事例「進め方と得られた効果を解説」
運用対象となる情報システムの例
ITシステム運用の対象となる情報システムは多岐にわたります。企業の業務内容や規模に応じて、その運用対象もさまざまですが、代表的なものには以下のようなシステムが挙げられます。
以下に、主な運用対象システムの例と、それぞれに求められる運用内容を一覧で示します。
システム名 | 主な運用内容 |
---|---|
基幹システム(ERP) | 日次・月次バッチ処理の監視、業務スケジュールに沿った処理の自動実行、障害発生時のリカバリ対応 |
販売管理システム | 監視、構成管理、自動化、障害対応受発注データの処理確認、外部連携バッチの監視、エラーデータの調査・修正 |
Webサイト/ECサイト | サーバー稼働状況の監視、アクセスログの取得と分析、夜間バッチ処理の管理 |
社内ポータル・グループウェア | アカウント管理(ID追加・削除)、定期的なセキュリティパッチの適用、システム稼働状況の確認 |
ファイルサーバー・ストレージ | ディスク容量の監視、アクセス権限の管理、バックアップ・リストアの実施 |
メールサーバー | メール配送の正常性確認、スパムフィルタ設定の保守、障害発生時のログ調査 |
仮想基盤(VMware、Hyper-Vなど) | 仮想マシンのリソース監視、スナップショット取得、自動再起動やフェイルオーバー設定の管理 |
クラウドサービス(IaaS/PaaS) | 利用リソースの最適化、コスト管理、スケーリング設定、API連携の稼働監視 |
これらのシステムはいずれも、安定した稼働を求められます。そのため、24時間体制での監視や障害対応、自動化による業務効率化が求められるケースも多くなっています。
ITシステム運用エンジニアの業務と仕事内容「何をするかわかりやすく解説」
ITシステム運用エンジニアは、企業の情報システムが安定して稼働し続けるよう、さまざまな業務を担っています。ここでは、代表的な仕事内容をわかりやすく解説します。
システムの監視と障害対応
もっとも基本的かつ重要な業務のひとつが「システムの監視と障害対応」です。システムやサーバーが正しく稼働しているかを24時間体制で監視し、異常を検知した際には速やかに原因を調査して対応します。たとえば、CPU使用率やメモリ使用量、ネットワークトラフィック、アプリケーションログなどを監視し、閾値を超えた場合には自動通知やアラートが発生します。
障害対応では、該当システムのログ確認やリスタート処理、必要に応じてベンダーとの連携なども行います。迅速な一次対応と影響範囲の把握、復旧対応が求められるため、高い判断力と手順化された運用プロセスが重要になります。
作業依頼(定常作業)
ユーザー部門や他部署からの作業依頼に対応するのも、ITシステム運用エンジニアの重要な仕事です。代表的なものに、アカウントの追加や削除、定例のデータ抽出作業、バッチ処理の実行、設定変更作業などがあります。
こうした作業は手順に基づいた定型業務として定常的に発生するため、手順書の整備や自動化の工夫も求められます。また、ヒューマンエラーを防ぐためのレビューやダブルチェック体制を整えることも、信頼性の高い運用を実現するうえで欠かせません。
情報システムの運用管理
システムそのものだけでなく、運用に関わる「仕組み」や「ルール」の管理も運用エンジニアの役割です。たとえば、ジョブスケジューラによる処理の自動化、バックアップポリシーの策定と実施、アクセス権限の管理、定期的なセキュリティパッチ適用などが含まれます。
また、システムの変更や障害、作業履歴などを記録・報告し、トラブル防止や改善活動に活かす運用報告書の作成も業務の一環です。属人的な対応を避け、組織として安定的な運用を続けるためには、こうした運用管理の仕組みが欠かせません。
ITシステム運用の仕事内容まとめ
ITシステム運用の業務は、「監視・障害対応」「定常作業の実行」「運用管理の仕組みづくり」の3つに大別されます。どれも企業活動の根幹を支える重要な業務であり、表に出ることは少ないものの、ITインフラを支える縁の下の力持ちとも言える存在です。
ITエンジニア人手不足の昨今では、これらの業務に対し「自動化」や「効率化」が強く求められており、ツールの活用やスクリプトによる省力化、クラウドサービスとの連携などが積極的に進められています。
ITシステム運用とITシステム保守の違い
ITシステム保守とは
ITシステム保守とは、システムが安定して稼働し続けるように、点検や修正、更新などを行う業務のことです。具体的には、ソフトウェアのバージョンアップ、セキュリティ対策、ハードウェアのメンテナンス、障害発生時の修復などが含まれます。
保守業務の目的は、システムのトラブルを未然に防ぎ、万が一の障害にも素早く対応することです。これにより、企業の業務が滞るのを防ぎ、安定したIT環境を維持できます。クラウドやAIの活用が進む中、保守の在り方も変化しており、自動化やリモート対応の重要性が高まっています。
ITシステム運用とシステム保守の違い
ITシステム運用とシステム保守はどちらもシステムを安定稼働させるための業務ですが、それぞれの目的や役割が異なります。
ITシステム運用
システムが日々正常に動くように管理・監視し、障害対応や最適化を行う業務です。具体的には、システムの監視、パフォーマンス管理、データバックアップ、セキュリティ対策などが含まれます。
ITシステム保守
システムの維持・改善を目的とし、修正や更新を行う業務です。たとえば、ソフトウェアのバージョンアップ、ハードウェアの修理、セキュリティパッチの適用などが該当します。
運用は「システムを日常的に管理・最適化する業務」、保守は「問題が起きたときの修正や定期的なメンテナンス業務」と言えるでしょう。
ITシステム運用とサーバー運用の違い
サーバー運用とは?
サーバー運用とは、サーバーが正常に稼働し続けるように管理・保守を行う業務のことです。具体的には、サーバーの監視、定期的なメンテナンス、セキュリティ対策、障害対応、ソフトウェアの更新などが含まれます。サーバーが適切に動作しないとシステム全体に影響が出るため、安定した運用が求められます。
ITシステム運用とサーバー運用の違い
ITシステム運用は、システム全体の管理や最適化を行う業務であり、サーバー運用はその一部としてサーバーの管理に特化しています。
ITシステム運用では、ネットワークやアプリケーション、データベース、セキュリティ対策など、システム全体のパフォーマンスや安定性を維持する業務が含まれます。一方で、サーバー運用はサーバーそのものの監視・保守を中心に行い、ITシステム運用の一部として位置付けられることが多いです。
つまり、サーバー運用はITシステム運用の中の一要素であり、ITシステム全体の安定稼働を支えるために不可欠な業務と言えます。
ITシステム運用の課題
システム運用の現場では、上記のように業務が多岐にわたるため、さまざまな課題が生じます。運用管理者や運用担当者からは、以下のような声がよく聞かれます。
- 作業量が多く、オペレーションミスがたびたび発生する
- 日々の作業に忙殺され、改善活動にまわせる時間がとれない
- 社内外から運用コストの削減を求められる
- システム環境の変化に対応できていない
- 運用手順書、ドキュメントが形骸化している
- 一部の担当者しか知らない属人化した作業がある
- 人が育たない、人が定着しない
- 運用現場のモチベーションが上がらない

これらさまざまな課題をすべて解決することは容易ではありません。ただ、多くの現場では、運用要員に恒常的に高負荷がかかっている職場環境が一番の要因ではないでしょうか。そこで、作業負荷のかかる日々の定型作業に対しては、運用要員が手作業で実施している業務をRPAやRBAといったツールを使って運用を自動化することで、その負荷を軽減するアプローチが有効です。
ITシステム運用の業務課題を解決する「運用自動化」
現代のシステム運用は、業務量の増加や属人化、突発的な障害対応による負担が課題となっています。これらの課題に対処するため、「運用自動化」は効果的な手法として注目されています。自動化は、業務の効率化だけでなく、ミス削減や運用品質の向上を実現します。また、自動化を通じて運用プロセス全体を見直し、業務改善にも繋げられます。
運用自動化とは?
運用自動化とは、日常の運用業務における反復作業や定型作業をツールやスクリプトで効率化するプロセスです。例として、システムの監視、アラート対応、バックアップ作成、レポート生成が挙げられます。これにより、人的作業に頼らず、正確かつ迅速にタスクを処理することが可能になります。
運用自動化は、ツールの導入だけでなく、業務フローを可視化し、最適化することも含まれます。
運用自動化で解決できる業務課題
運用自動化は、以下のような課題解決に役立ちます。
- 属人化の解消
自動化により特定の担当者に依存する作業を軽減。業務の標準化を促進します。 - 作業ミスの削減
手作業でのミスを防ぎ、業務品質を向上。 - 対応スピードの向上
障害対応や処理時間を短縮し、迅速な対応を実現。 - 作業負担の軽減
反復作業を削減し、担当者が重要な業務や戦略的なタスクに注力可能にします。
このように、運用自動化は単なる効率化にとどまらず、システム運用の全体的な改善をもたらします。
まとめ
システム運用における定型作業を自動化することは、作業負荷削減といったコスト面、ヒューマンエラーの抑制といった品質面といった両側面から見ても非常に有効な施策です。しかし、やみくもにツールを導入して自動化を進めても失敗するリスクが高く、課題解決に繋がらないことが多いです。そこで、運用組織内部の全作業の洗い出し、業務プロセスを見える化(可視化)することが重要になってきます。運用の現場では、属人的な作業プロセス、曖昧なルールなど、管理者が把握していない隠れコストが多く潜んでいます。これらが自動化導入の障壁のひとつになります。
自動化を導入する際の具体的な課題については、次回のコラム「運用自動化のメリットと導入までの課題」についてご説明します。
運用自動化の進め方やAIOpsの推進事例

運用自動化やAIOpsに関連する主な資料
● 運用自動化やAIOpsを支援するCloud Archの概要資料
● AIOpsの2つの推進事例
● オージス総研のAIOps推進事例「進め方と得られた効果を解説」
2021年10月13日公開
2025年6月5日更新
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。
関連サービス
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運用自動化ソリューション「Cloud Arch」
オンプレミスシステムやプライベート / パブリッククラウドの複数サービスを利用しているシステム環境に対し、シームレスな運用自動化と統合監視の環境をご利用いただくことで複雑化するシステム運用の負担低減を実現します。
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