【ルールエンジン コラム】
日本企業のグローバルビジネスにむけた挑戦
~ITテクノロジーとデジタルの活用~
第1章 同時多発的に起きるグローバル経済の不確実性の増大
厳しい世界状況~より多種多様で不確実な時代へ~
2023年、日本では新型コロナウイルス感染症も5類に移行し、ウィズコロナのニューノーマルの時代となった。コロナ禍による経済への負の影響が残り、厳しい経営状態となる中、ロシアによるウクライナ侵攻により世界は分断し、今や経済大国となった中国も不動産バブルが崩壊するなど、ますます今後のグローバル経済の不確実性が増している。
そのような状況下で、日本の企業は、どのような事業を展開していくのか?
今やドメスティックなローカル経済だけでは成り行きたたず、グローバル市場へ展開しなければならない現状で、戦後70年にわたる経済モデルはどのように変化し、次のグローバルな市場経済へ日本企業が進めていくべきことはなんなのか?
バブル崩壊後の「失われた30年」ともいわれる長期におよぶ経済停滞の中、今後、日本の企業はどのように変化し、追随しなければいけないのかを考える。
現状の意識、状況~海外企業とは異なる日本企業~
世界と日本のCEOの感覚の違いがわかる興味深い統計がある。2023年にPwCがCEO意識調査として公開したアンケートで、世界105ヶ国4,410名のCEOからアンケートを採っており、日本のCEOも175名が答えているものがある。
各国のCEOが世界的脅威の上位として答えたものに、インフレ(40%)、マクロ経済の変動(30%)、地政学的対立(25%)がある。世界的なインフラの懸念や資金調達などの環境が大きく変化していることに警戒感を高め、ロシアによるウクライナ侵攻は世界の経済に影響を与える地政学的対立として懸念を強めていることがわかる。
アンケートの中で、「貴社は現在のビジネスのやり方を変えなかった場合、経済的にどの程度の期間存続できるとお考えですか」という、面白い質問項目がある。現在のビジネスのやり方を継続した場合に、世界105ヶ国のCEOの40%が10年後に自社は経済的に存続できないと考えているのに対し、日本のCEOの答えは、なんと72%にも達した。今のままでは10年後に自社はない、と72%が考えているのだ。日本企業が、将来に対する危機感を極めて強く持っていることがわかる。
引用:PwC第26回世界CEO意識調査より「貴社は現在のビジネスのやり方を変えなかった場合、経済的にどの程度の期間存続できるとお考えですか」
このCEO意識調査の他の質問項目と合わせて読みとれるのが、今後の世界的な経済の変調とその成長を不安視する見方である。今後12ヶ月間において世界の経済成長(GDP)は減速すると、世界のCEOの73%が回答し、日本のCEOも65%が、そのように回答している。その一方で、自身の自社業績はむしろ底堅く推移して、今後12ヶ月間において、人員削減や採用凍結の用意はないとする回答の割合が、世界各国と比較しても高い水準にとどまるアンケート結果となっているようだ。ということは、現状の直近における業績には自信があるが、10年後にはからっきし自信がないということになる。
引用:PwC第26回世界CEO意識調査より「今後12ヶ月間において、世界の経済成長(GDP)はどのように変化するでしょうか」
日本CEOの12ヶ月後と10年後のアンケート回答となった背景には、前述の各国CEOが答えた世界的脅威である、インフレ(40%)、マクロ経済の変動(30%)、地政学的対立(25%)などのメガトレンドが関係していると推測される。
前述した各国のCEOが世界的脅威の上位として答えたもの以外に、世界的な経済に影響を与える要素として、脱炭素のエネルギー危機や世界的な気候変動と新たな疫病によるグローバル・サプライチェーンの混乱、先進国と発展途上国の人口構成の変化により再編されていく世界的なポジショニングの変化や新たな政治的対立ルールの発生、破壊的変化と称される革新的テクノロジーなどの要素が加わり、不確実性を増大させている状況下にある。
我々は、今まで経験したことのない事象が同時期に発生し、それらは相互依存して影響範囲を拡大しつつ経営環境をより複雑にして難化させている。
いつの時代も先が見えず経営の難しさはあるものの、ニューノーマルとなった直近3年ほどのパンデミック期間の経験を振り返ると、顕著にやっかいであると思われるのは、同時多発であることだ。
そして、世界同時多発的に発生する問題たちは、絡み合って複合的な問題となり複雑性が増すものの、グローバル単位の経営では、よりスピードを求められることである。
日本の企業は、時間をかけて調和型文化の中で経営環境を整えることが多く、日本のCEOは、この経営環境の厳しく難化する変化をとらえた回答をしているものと推測する。
世界的に絡み合った問題に対して、いかにスピード感のある経営判断を行うかが課題となるが、日本においては、戦後70年における高度経済成長、バブル景気、その後の景気低迷をたどった過去の経験は、ガラパゴスと揶揄されるように、グローバルへ対応する策のリファレンスになり得ない状況にある。
世界同時多発的に発生する問題に対して、スピードのあるグローバル単位の経営判断は、今の日本の企業がもっとも苦手とするものである。
苦手とはいえ、それを克服していかねばならず、10年後に自社が経済的に存続可能であるように、グローバルな市場経済にむけて日本企業が進めていくべきことはなんなのか?
次回コラム「第2章 グローバルな市場経済を意識して10年後存続可能な企業が進むべき展望」に続く。
2024年7月31日公開
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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