【ルールエンジン コラム】
日本企業のグローバルビジネスにむけた挑戦
~ITテクノロジーとデジタルの活用~
第3章 10年後存続するためのIT利活用戦略

基幹システムのモダナイゼーション~戦略的投資へコスト構造変革~

ビジネスと並走する基幹システムの在り方について議論が収束せず、基幹系レガシーシステムの手当を先送りにして塩漬けとする企業もあるが、どんな手段を使って延命しても、刷新する時期は必ず来る。
いかに再構築するかの結論は、ビジネスの戦略面やコスト構造面で避けて通れないのである。

従来、システムの新たな再構築のことを総称してマイグレーションと呼ぶが、レガシーシステムの再構築の目的を考えると、「単なる移行を指す」マイグレーションではなく、「移行+近代化」を示すモダナイゼーションと呼び、明文化して意識するべきだと考える。

このモダナイゼーションの意義は、将来にむけて存続可能な企業であり続けるために、現在ある自社のビジネスの価値を維持し、新たなビジネス価値も創出するITシステムを目指すところにある。

言い換えると、革新的で有効なITテクノロジーを導入して、ビジネスにおいてその恩恵を得ること、および従来のITシステムのコスト構造を戦略的投資に切り替えることである。

業務に対する日本固有の特性

さて、基幹系レガシーシステムをどのようにモダナイゼーションするかを具体的に考える前に、システム開発における業務に対する日本固有の特性について認識しておきたい。

日本企業が基幹システムの業務パッケージを選定した場合、国内ではアドオンといった追加開発を伴うが、海外拠点ではパッケージに業務を合わせて、ほぼ追加開発をせずに導入している例が多い。
日本企業が安い人件費を求めて海外進出した時代であれば、海外事業の規模がまだまだ小さいため、複雑性も少なく業務自身がシンプルで、追加開発するほどではないのだろうと推測できるが、海外の売り上げシェアが日本国内を上回った今も同様に続いている。

このエピソードは、端的に日本固有の特性を表している。

日本の企業では、時間をかけて業務改善を絶え間ない努力で繰り返し、高品質な業務を成し遂げてきた歴史や業務自身がノウハウの塊だという現場認識もあり、システムを刷新する場合、現行業務をベースとして追加開発していくことが多い。

これらに起因してボリュームや複雑度が増し、不便、不合理、不備などのデメリットが潜在的に含まれることになる。
当然、そのような中で開発されたITシステムは、工期が長期化し、使い勝手が悪く、効率や生産性を妨げて事業損失の一端を担ってしまう。

シンプルかつスリムな業務設計を目指さなければならないが、現実的には一朝一夕では変わらないことを理解しておきたい。
モダナイゼーションする際に、これらに具体的な工夫をしておかなければならないのである。

多くのメディアでは、業務のシンプル化やスリム化を完璧にしなければならない、というトーンで提唱されていることが多い。
効率や費用対効果を考えながら業務設計を整理し、無駄をそぎ落とす努力は継続すべきであるが、完璧を目指せば、それだけで何十年といった時間がかかる。むしろ、この日本固有の特性をふまえて対処できるITテクノロジーはないのか、探求したい。

日本企業の変革の方向性~可視性が劣化するとすべてのパフォーマンスが劣化する~

日本固有の特性とともに、基幹システムの再構築を繰り返してきた歴史の中で、お客様と課題点を詰めていくと、ハードウェア・プラットフォームに依存する、固有のソフトウェア・ハードウェア技術、セキュリティに関したものを除けば、いつもどの企業も共通する苦労点は、可視性が劣化したブラックボックス・システムによるシステム品質や開発スピードの低下、コスト悪化、属人性の蔓延に集約されていく。

つまるところ、「良好な可視化の工夫」のソリューションがあれば、ブラックボックス化せずに他のデメリットの発生を抑えて、すべてのパフォーマンスも劣化しないのである。

ちなみに、一般的にブラックボックス・システムは次のように作られる。

基幹システム構築の初期に、システム全体におよぶ開発ガイドラインやコーディング規約などを規定し、プロジェクトの統制やコミュニケーションをとり、生産性や品質の確保に努める。
長期化した構築末期には、一部守られていないソースコードが存在し始めるが、この時点の品質には特段の問題はなく、迫る納期の時間との闘いもあり据え置かれてしまい、最終的には完成後も対応されずに残存してしまう。
そして、大切なロジック部分は、度重なるエンハンス開発の変遷をたどる。人の入れ替わりとともに設計思想も引き継がれず、つぎはぎ的ソースコートが多くなり、重複であったり冗長であったりと崩れてゆき、ブラックボックス化していく。

この解決には、適切なタイミングでのリファクタリングが有効な手段であるが、リファクタリングは、あくまでソフトウェア開発においてプログラムの動作を変えることなく、内部の設計や構造を見直してソースコードを整理することである。
外部からはその状態を図り知ることができないため、お客様にはこの作業対価のご理解がいただけず、未実施の場合が多い。

こうやって、ブラックボックス・システムができているのである。

ソースコードは、いずれにしてもコーディングされた時点から経年劣化が始まってしまうと考えた方が良く、上流工程のシステム構想企画段階からアプリケーション・アーキテクチャーの要件として劣化防止の工夫が必要となる。
特に、判読性が著しく劣化する業務ロジック部分の防止策が最も重要となる。

可視性を担保するITテクノロジー

ここで、可視性を担保するITテクノロジーをご紹介したい。

業務アプリケーションのロジックからビジネスルールを分離し、疎結合として扱える「ルールエンジン」を導入することである。

「ルールエンジン」をアプリケーション・アーキテクチャーに取り入れて実装することで、前述したブラックボックス化して、パフォーマンス劣化が著しくなる業務ロジック部分を保護するのである。
アプリケーション・アーキテクチャーと「ルールエンジン」を上手く利活用することで、可視性や判読性をクリアに確保することができる。

従来、この「ルールエンジン」を導入せずとも、一般的なプログラミング言語とデータベースで頑張ってプログラミングをすれば、同様に動作するシステムを作ることができたため、特殊なものとしてあまり着目されてこなかった。
作りっぱなしであればこれで事足りるのかも知れないが、ITシステムが初期構築された後の第二ライフサイクル以降も多種多様なビジネスに追随できることを目標とした場合、この「ルールエンジン」のアドバンテージはITシステムのコスト構造を戦略的投資に変えるものとして再認識され、導入のモチベーションが促進されるものと考える。

「ルールエンジン」を利活用することで、業務優先で作りこんでいく日本固有の特性に対処でき、不確実性が増大するグローバル経済においても、ビジネスに追随するスピードのあるITシステムの構築とITテクノロジーの恩恵を受けることができる。

詳しくは、下のコラム群を一読して欲しい。
ここに現実解として具体的なソリューションがある。

【ルールエンジン コラム】ビジネスルール可視化のメリット1 DMNの活用
【ルールエンジン コラム】ビジネスルール可視化のメリット2 デシジョンテーブルの活用
UMEZOコンサルティング ルールエンジンまとめサイト(外部サイトへ移動します)

さて最後に、第1章で72%もの日本企業が10年後に自社が存続していないと回答したアンケート結果に触れたが、悲観的観測ばかりではないと考える。
ある統計データでは、世界的に創業200年以上の歴史をもつ企業はその約60%が日本にあるといわれているのである。
本来、バブル崩壊後の「失われた30年」といわれる長期におよぶ経済停滞の時期に、日本の企業は自らのグローバル経済における差別化要素を発掘し、アドバンテージとしてより研ぎ澄ましていくべき時期であった。ただし、日本の古くからの文化や社会インフラを代表とする日本の技術力、おもてなしのサービス精神など、海外からも評価を得ている、秀でた点も多くあり、それらとバランスをとりながらグローバル経済の中で成長し続けていきたいものである。

2024年11月13日公開
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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