クラウド型EDIシステムとは?オンプレミス型との違いや導入メリットを解説!
EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)は企業間取引を効率化する仕組みとして注目され、DX推進の流れもあり導入が進んでいます。従来のオンプレミス型に比べ、クラウド型EDIは初期投資を抑えやすく、導入や運用が容易であることから、中小企業を含め幅広い企業に広がっています。
本記事ではEDIの基本的な仕組みを確認した上で、クラウド型の特徴、Web-EDIとの違い、さらに導入に当たっての選定ポイントまでを整理します。
- この記事で分かること
- EDIの基本とクラウド型EDIの仕組み
- クラウド型と他方式(Web-EDI・オンプレ型)との違い
- クラウド型EDIシステムを選ぶ際のポイント
クラウド型EDIシステムとは?
まずEDIとは、受発注書・納品書・請求書など、企業間の商取引情報を電子データとして交換する仕組みです。これまで紙の伝票やFAXでやり取りしていた業務を電子化することで、取引の効率化や人的ミスの防止につながります。
クラウド型EDIシステムは、このEDIをクラウド環境で利用できるようにしたものです。従来のオンプレミス型のように自社サーバーを構築する必要がなく、ベンダーが提供するクラウド基盤を利用して運用できます。そのため、初期投資が比較的小さく、短期間で導入できる点が特徴です。また、保守やアップデートはベンダー側で対応するため、社内のリソースを割かずに済みます。
Web-EDIとの違い
Web-EDIとは、インターネットを経由して取引先と電子データを交換する仕組みです。ブラウザを通じて発注や納品の処理を行えるため、専用のソフトを導入せずに利用できる点が利点です。
クラウド型EDIと同じくインターネットを利用するため、両者は混同されやすいですが、運用方法や対象となる規模に違いがあります。主な相違点は以下の通りです。
クラウド型EDI | Web-EDI |
---|---|
●基幹システムとの連携を前提とし、自動化を重視している ●大規模な取引や多数の企業とのやり取りに対応しやすい ●システム連携や設定に準備が必要 |
●ブラウザから手動入力する形式が多い ●小規模取引や少数の取引先に向いている ●導入が比較的容易 |
中小企業が特定の取引先と限定的に利用するならWeb-EDIが適しており、取引量が多い企業やシステム連携を重視する企業にはクラウド型EDIが向いています。今後はクラウド型の普及がさらに進むと見込まれる一方、Web-EDIは簡易的な手段として残り続けると考えられます。
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オンプレミス型と比較したクラウド型EDIシステムの特長
前述のように、近年はオンプレミス型EDIシステムから、クラウド型EDIシステムへの移行が進んでいます。移行が進む背景としては、どのような要因があるのでしょうか。ここでは、オンプレミス型と比較したクラウド型EDIシステムの特徴についてご紹介します。
導入コストを抑えやすい
クラウド型EDIが注目される大きな理由の一つが、導入コストを抑えやすい点です。オンプレミス型では、サーバーやソフトを購入し、自社でインフラを構築する必要があります。そのため初期投資が大きく、導入に時間もかかります。
クラウド型EDIは、インフラを自社で準備する必要がありません。ベンダーが用意した環境を利用するため、比較的短期間で稼働を開始できます。多くのサービスはサブスクリプション型の課金体系を採用しており、月額費用として予算計画に組み込みやすいのも特徴です。中小企業にとっては、初期投資の負担が小さく、投資リスクを軽減できる点が魅力となります。
導入までの流れはシンプルで、契約後に設定を行えば利用を開始できるケースがほとんどです。必要に応じて試験運用を経て本稼働に移行させることもできます。
保守・運用の負担が小さい
オンプレミス型の場合、自社でサーバーを管理し、セキュリティ対応や法改正への対応まで行う必要があります。これはIT部門にとって大きな負担となり、専門知識を持った人材を確保しなければなりません。
クラウド型EDIでは、保守や運用に関わる多くの業務をベンダーが担います。セキュリティ更新や法改正に伴うシステム対応も基本的にベンダー側で実施されるため、利用企業は安心してサービスを利用できます。また、システム障害が発生した場合にもサポート窓口を通じて対応が受けられるため、自社で一から原因究明や復旧作業を行う必要はありません。
このように、クラウド型EDIを利用することで、社内リソースを本来の業務に振り分けやすくなります。特にIT人材不足が課題となっている中小企業にとっては大きな利点です。ただし、全てをベンダーに任せきりにできるわけではありません。ユーザー権限管理や利用ルールの徹底など、利用者側の責任も残ります。こうしたリスクを理解した上で導入することが大切です。
事業の成長に対応しやすい
クラウド型EDIは、事業の拡大や取引量の増加に合わせて柔軟に拡張できる点も大きな魅力です。オンプレミス型の場合、最初に構築したサーバー容量に依存するため、想定以上の取引が発生するとシステム更改が必要になります。
一方、クラウド型EDIではWeb上での手続きにより、スピーディーにスケールアップが可能です。新規取引先の追加や取引件数の増加にも柔軟に対応でき、海外拠点やリモート環境に広がるケースにも適しています。さらに、会計システムや販売管理システムなど他の基幹システムと連携しやすい点も、将来的な業務拡張に役立ちます。
ただし、利用規模が拡大すればその分利用料金も上昇します。コストと利便性のバランスを見極めることが重要です。
クラウド型EDIシステムの選び方
クラウド型EDIシステムは各ベンダーによって仕様や機能が異なるため、導入前に選定基準を明確にしておくことが重要です。ここからは、システム選びで注目すべき具体的なポイントを解説します。
通信プロトコルの種類で選ぶ
EDIでは、自社と取引先が同じ通信プロトコルを利用することが前提です。取引先との間で合意が取れていないとデータ交換自体が成立しないため、システム導入時には必ず確認しておく必要があります。
プロトコル選定を誤ると、取引先とのデータ連携が不可能になったり、追加費用が発生したりするリスクがあります。そのため、複数の通信方式に対応できるシステムを選んでおくことが望ましいでしょう。
業界内での導入実績で選ぶ
EDIは業界ごとに取引プロセスやデータ形式が異なるため、業界での導入実績は大きな判断基準となります。例えば、小売業ではPOSデータとの連携が重視され、製造業では部品調達や在庫管理との統合が必要になるなど、業界特有の要件があります。
実績の多いベンダーは、その業界ならではの商習慣や法規制に精通しているケースが多く、スムーズな導入と運用が期待できます。システムを選ぶ際には、公式サイトで導入事例を確認したり、問い合わせを通じて自社と近い業界での実績を確かめたりすることが有効です。
他のシステムとの連携性で選ぶ
クラウド型EDIシステムは、それ単体で完結するものではなく、販売管理や在庫管理、会計といった基幹システムとの連携を前提に設計されています。そのため、導入前に既存システムと連携できるかを確認しておくことが重要です。
連携によって得られる効果は大きく、例えば受注データを自動で販売管理システムに反映させることで、手入力作業を省き、人的ミスを減らすことができます。また在庫数が自動的に更新される仕組みがあれば、リアルタイムでの在庫管理が可能になります。
APIや標準インターフェースを備えたシステムであれば、将来的な拡張にも対応しやすいでしょう。逆に、連携が難しいシステムを導入すると、手作業が増えたりデータの二重管理が発生したりする恐れがあります。導入前に自社の既存環境との相性を必ずチェックしておくことが求められます。
無料トライアルを活用して選ぶ
月額料金や取引可能な社数などの基本条件は事前に確認できますが、実際の操作性やサポート体制は使ってみないと分からない部分が多くあります。そのため、無料トライアルを活用して確認することが重要です。
具体的には以下のような点をチェックしましょう。
- ユーザーインターフェースが直感的で使いやすいか
- エラーが発生した際にどのようなサポートが受けられるか
- 必要な機能がそろっているか
- 拡張性は十分か
これらを確認することで、導入後の運用イメージを具体的に持つことができます。トライアルを通じて得られたフィードバックを社内で共有し、最終判断に活かすことが大切です。なお、無料トライアルがない場合でも、デモ環境の提供やベンダーへの問い合わせを通じて、使用感を確認できる場合があります。
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クラウド型EDIシステムの導入に当たって必要な準備
クラウド型EDIシステムをスムーズに稼働させるには、導入前の準備が欠かせません。ここでは、導入前に押さえておくべき具体的な準備内容を解説します。
取引先企業との調整を行う
クラウド型EDIシステムを導入する際には、社内だけで準備を進めるのではなく、取引先との事前調整が必須です。特に重要なのは、どの通信プロトコルを利用するかを合意しておくことです。EDIは双方が同じプロトコルで通信する必要があるため、取引先が既に利用している方式を確認し、それに対応したシステムを選ぶことが求められます。
また、新規取引先との契約段階でもEDI対応を確認しておくと、後のトラブル防止につながります。人同士でも相手との共通言語がなければ意思疎通が難しいのと同じで、プロトコルの合意がなければEDIは機能しません。導入初期に丁寧な確認と合意形成を行うことが成功の第一歩です。
既存の社内システムと連携させる
クラウド型EDIシステムは、販売管理や在庫管理、会計といった基幹システムと連携することで本来の効果を発揮します。連携によって、受発注データが自動で取り込まれ、手入力の手間を減らし、ヒューマンエラーを防ぐことが可能です。
導入に当たっては、自社で利用しているシステムが連携可能かを事前に確認することが重要です。特にAPI連携や標準フォーマットを備えたシステムは、将来的な拡張にも柔軟に対応できます。逆に、連携が難しい場合は入力作業が二重になったり、データの齟齬が生じたりする可能性があり、業務効率化どころか負担増につながりかねません。
例えば、受注データが販売管理システムに自動反映される環境が整えば、担当者が入力作業に追われることなく、分析や顧客対応に時間を割けるようになります。導入を成功させるためには、単にEDIシステムを導入するのではなく、自社の基幹システム全体とどう連携させるかを考慮しておくことが重要です。
従業員への周知・教育を行う
どれほど優れたシステムを導入しても、従業員が理解し活用できなければ成果にはつながりません。そのため、導入するシステムの概要や業務への影響を事前に周知し、従業員が安心して利用できる環境を整えることが必要です。
操作方法やセキュリティルールに関する教育は特に重要です。パスワード管理やアクセス権限の設定など、基本的なセキュリティ意識を高める取り組みを並行して行うと効果的です。また必要に応じてマニュアルを作成し、従業員が困ったときにすぐ参照できる仕組みを用意することも有効です。
導入初期には操作に不安を持つ従業員も出てきます。その際は研修やQ&A会を設けるなど、フォロー体制を整えることが定着を促進します。教育を一度実施すればすぐに定着するわけではなく、習熟には一定の時間が必要です。社内サポート体制を整えながら段階的に浸透させることで、システムを有効に活用できる環境が整っていきます。
まとめ
本記事では、EDIの基本からクラウド型EDIシステムの特徴、オンプレミス型との違い、導入メリットや選び方、さらに導入に当たっての準備事項までを解説しました。EDIは企業間取引の効率化に不可欠な仕組みであり、特にクラウド型は初期投資の軽減や短期間での導入、運用負担の軽減といった点で注目を集めています。
クラウド型EDIを活用することで、コスト削減や業務効率化を実現でき、事業の成長にも柔軟に対応できます。ただし、取引先との通信方式の調整や社内システムとの連携、従業員への教育など、導入前に行うべき準備を怠ると効果が十分に発揮されません。適切な準備と運用体制を整えることが成功の鍵です。
また、全てを自社で運用するのではなく、EDIアウトソーシングサービスを活用するという選択肢もあります。例えば「eCubenet」は、専門的な知識がなくても安定した運用を任せられるサービスであり、初めてEDIを導入する企業にとっても安心できる手段となります。EDI運用の手間とコストを削減したい場合には、まずはお気軽にご相談ください。
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2025年9月16日公開
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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