Web-EDIとは?移行後の課題と対応策をわかりやすく解説
2024年のISDN終了により、多くの企業がWeb-EDIへ移行しましたが、運用面で新たな課題に直面するケースも増えています。本記事では、Web-EDIの基本から移行後によくある課題、対応策を解説いたします。
Web-EDIとは何か?あらためて基礎から解説
Web-EDIの基本的な意味と位置づけ
Web-EDIとは、インターネットを介して企業間取引(BtoB)の情報を交換する電子データ交換方式の一つです。従来のEDI(Electronic Data Interchange)が専用回線や特定の通信プロトコル(JCA手順や全銀手順など)を使っていたのに対し、Web-EDIはWebブラウザ上で取引情報(注文書・請求書など)を送受信できる点が特徴です。
たとえば、取引先からの注文データを受注システムに取り込んだり、請求書をPDF形式で送信したりといった業務を、Webブラウザ上でログインして操作できるため、パソコンとインターネット環境があればどこからでも利用できます。
ISDN終了とWeb-EDI普及の背景
2024年のNTT東日本・西日本によるISDN回線サービス「ディジタル通信モード」の提供終了(いわゆる「2024年問題」)にともない、旧来のEDIを利用していた企業の多くが新しいEDI方式への移行を迫られました。特に中小企業にとっては、専用線の廃止や既存システムの非対応化が事業継続に直接影響する深刻な課題となりました。
そのため、導入コストが比較的少なく、設定が簡単なWeb-EDIが採用され始めたのです。Web-EDIは特別なソフトウェアや機器が不要で、既存の基幹システムや業務フローに組み込みやすく、導入のハードルが低いソリューションとして注目されています。
Web-EDIと他方式との比較
Web-EDIは、専門的なIT知識がなくても扱いやすく、中小企業をはじめ幅広い企業にとって導入しやすい方式として位置付けられます。
項目 | 従来型EDI(JCA手順/全銀手順等) | Web-EDI |
---|---|---|
通信方式 | 専用回線(電話回線など) | インターネット(HTTPS) |
必要機器 | モデム、専用ソフト等 | パソコン+Webブラウザ |
導入コスト | 高い | 抑えやすい |
セットアップ | 煩雑(通信設定・端末整備等) | シンプル(ID発行・ログイン) |
Web-EDIでは暗号化通信(HTTPS)によりセキュリティー対策も実施されており、通信速度や遅延への対応も年々改善されています。ただし、取引先ごとに仕様が異なるケースもあり、その際は運用上の管理・整備に注意が必要です。
利用の注意点と今後の動向
Web-EDIの導入は、中小企業にとっても業務の効率化につながります。特に、受注から請求までの一連の流れを標準化し、手作業や紙ベースでのやり取りを削減することで、ミスの削減や作業時間の短縮をすることができます。
一方で、「自動化」「基幹システム連携」「セキュリティー」など、業務の性質に応じた要件整理が不可欠です。企業ごとに最適なWeb-EDIの構築には、導入事例を参考にしたり、信頼できるソリューションベンダーと連携したりすることが成功の鍵を握ります。
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Web-EDIのメリットと導入で期待できる効果
業務効率とコスト削減に直結する利点
Web-EDIの最大の特長は、Webブラウザを利用したEDI運用により、従来の専用ソフトや回線が不要になる点にあります。これにより、導入の初期費用や通信環境整備にかかるコストを大幅に抑えることができます。
また、Web-EDIは多くの中小企業にも適した方式として認識されており、インターネット環境さえあれば、事業所ごとに専用機器を導入することなく利用が可能です。設定作業も少なく、運用開始までのリードタイムが短いのも特長です。
たとえば、製造業や小売業の企業が複数拠点で商品を受注・発注する際、従来のFAXや電話による手作業をWeb-EDIに置き換えることで、作業の自動化や入力ミスの削減、業務の効率向上が期待できます。
データの標準化と情報共有のしやすさ
Web-EDIは、紙やFAX、電話に頼った取引と異なり、デジタルデータとして情報をやりとりできるため、業務データの標準化と情報共有を進めやすいという特長があります。
たとえば、注文や請求の情報を電子データとして定型フォーマットでやりとりすることで、発注書や請求書の記載項目を統一しやすくなり、社内システムへの転記や管理も効率化されます。
また、ファイルのやりとり履歴や帳票のダウンロード記録などをWebブラウザ上で確認できることが多く、取引内容の共有やトラブル対応にも役立ちます。
こうした業務ルールの標準化や業務手順の明確化は、属人化の防止につながり、業務の安定運用に寄与します。
ただし、Web-EDIの仕組みは事業者や提供サービスごとに異なるため、業界標準規格(例:ebXML -MS、JX手順)への対応や、他システムとのリアルタイム連携など、さらに高度な標準化・自動化を目指す場合は、導入前に仕様を確認し、自社の業務に適した方式を選ぶ必要があります。
業務負担の軽減と属人化の防止
従来の紙ベースやメール添付型の取引業務では、社内の担当者が手作業で注文書を転記し、請求書を手入力で作成する運用が多く見られました。Web-EDIでは画面上での入力やファイルアップロードでこれらの工程を一元管理できるため、業務の属人化や転記ミスの発生リスクを少なくできます。
また、RPA(Robotic Process Automation)などの業務自動化ツールと連携すれば、注文から請求までの処理を大部分自動化することも可能です。これにより、人的リソースをコア業務へ集中させることができ、業務全体の効率と精度の向上につながります。
中小企業こそ導入しやすい仕組み
中小企業にとってWeb-EDIは、導入や維持にかかる費用が比較的安価で、パソコンとWebブラウザ、IDとパスワードの設定のみで運用が始められる点が特に魅力的です。専任の情報システム担当者がいなくても運用可能な設計となっており、業務規模や予算に応じた柔軟な導入が行えます。
また、最近ではクラウド型のWeb-EDIサービスも数多く登場しており、セキュリティー対策(SSL暗号化、ログ管理、通信制御など)があらかじめ施されているため、自社での煩雑な設定や対策が不要です。
Web-EDI導入後に発生しやすい課題とは?
ISDN回線の終了や基幹システムの刷新などを背景に、Web-EDIへの移行は中小企業を含め広く進みました。しかし「導入して終わり」ではなく、運用開始後に新たな課題に直面する企業も少なくありません。ここでは、よくある4つの課題とその背景を解説します。
1. 手入力作業が残り、ミスや業務負担が増える
Web-EDIはwebブラウザを使って注文・受注情報を確認・入力できる便利な仕組みですが、自社の基幹システムと連携していない場合、受注データを手作業で転記する必要があります。たとえば、Web-EDI上でダウンロードした注文情報を、パソコンで開いた販売管理システムに再入力するという「多画面運用」が発生します。
このような運用では、入力ミスの発生や確認漏れ、作業の煩雑化が問題になります。特に注文件数が多い業種や、取引先が多様な業態では、大きな非効率要因となります。
2. 取引先ごとの仕様の違いで業務が属人化しやすい
Web-EDIは通信プロトコルや利用環境がある程度共通化されている一方で、取引先ごとに注文項目や入力ルール、画面構成が異なることもあります。たとえば、ある企業では納品予定日が必須、別の企業では不要といった違いが発生します。
そのため、業務ごとに個別対応が必要となり、標準化が進まず属人化しやすくなるのです。対応の難しさから、新任担当者への引き継ぎや教育に時間がかかるという課題もよく見られます。
3. 運用方法のばらつきで効果が発揮されにくい
Web-EDIを導入しただけでは、すぐに効果が出るわけではありません。特に課題となるのが、社内での運用ルールや手順のばらつきです。たとえば、「誰がいつログインして処理するか」「入力ミスやトラブルが起きた際の対応はどうするか」といった基本的な業務ルールが明文化されていなかったり、部門ごとに運用方法が異なっていたりするケースがよくあります。
その結果、業務が属人化しやすく、引き継ぎや教育が難航する、あるいは使い方に差が出て一部の業務でしかメリットを実感できないといった問題が発生します。特に複数拠点や複数事業部でWeb-EDIを運用している企業では、全社的に標準化された運用ルールの整備が必要不可欠です。
4. セキュリティー対策や管理体制が不十分なまま運用されている
Web-EDIはインターネット経由での通信を行うため、通信内容の暗号化やアクセス制御、ログ管理などのセキュリティー対策が不可欠です。しかし中小企業を中心に、ID・パスワードの共用やログイン履歴の未管理など、基本的な管理体制が整備されていないケースが見受けられます。
不正アクセスやデータ漏えいのリスクは、企業間取引における信用問題にも直結します。Web-EDIの運用にあたっては、社内でのセキュリティポリシーの策定と徹底が重要です。
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Web-EDIの課題を解決するための具体策とおすすめの進め方
Web-EDIは、従来のレガシーなEDI方式に比べて導入しやすく、通信速度やコスト面でも優れたソリューションです。しかし、運用フェーズでは「手作業の多さ」「属人化」「セキュリティー対策の不足」など、企業ごとに異なる課題が生じます。
ここでは、そうした課題を乗り越えるための具体策と、Web-EDIを業務改善につなげる進め方を紹介します。
1. 基幹システム連携やRPAを活用し、入力作業を自動化する
Web-EDIと社内の販売管理システムや会計システムをCSV連携やAPIでつなぐことで、注文情報や請求データの二重入力をなくし、業務効率を大きく向上させることができます。
もし基幹システム側に連携機能がない場合でも、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールを活用して、「Web画面からのダウンロード」「システムへの入力」などの定型作業を自動化することが可能です。
このような自動化による手作業削減は、入力ミスの防止にもつながり、担当者の負担軽減と業務スピードの向上を同時に実現します。
2. 操作ルールと業務フローを明確化・文書化する
属人化のリスクを防ぐために、システムの操作ルールや運用手順を標準化し、関係者間で共有することが重要です。具体的には以下のような対応が求められます。
- 処理担当者や対応時間帯の明確化(例:午前中に注文確認・入力を完了)
- トラブル発生時の対応フロー(例:通信エラー時の取引先連絡手順)
- マニュアルやQ&Aの整備(画面操作やダウンロード手順など)
こうした文書化により、担当者の交代や繁忙期にも安定した運用を維持でき、属人化リスクの軽減にもつながります。
3. 取引先ごとの仕様差異を「見える化」して管理する
Web-EDIでは、取引先によって入力ルールやフォーマットが異なることが多く、これらの違いを管理できていないと、処理ミスや遅延の原因となります。そこで有効なのが、「仕様の見える化」です。
- 取引先ごとの注文書フォーマット一覧
- 必須入力項目や注意点のリスト
- 月次や四半期ごとの運用チェック表
このように「ルールを表にしてまとめる」「定期的に更新・共有する」体制を整えることで、業務の標準化が進み、スムーズな運用に直結します。
4. セキュリティー対策と管理権限の設定を見直す
Web-EDIは、webブラウザ経由で利用できる手軽さが利点ですが、その反面、情報漏えいや不正アクセスといったリスクも存在します。これを防ぐためには、次のような対策が必要です。
- ID・パスワード管理の徹底
パスワードの定期変更は、かえってリスクを高める場合があります。むやみな定期変更よりも「推測されにくい強固なパスワードを設定する」ことが望ましいとしています。 - 利用者ごとのアクセス権限の設定
「誰がどこまで操作できるか」を明確にし、管理者・操作担当者・閲覧専用などの権限分離を実施しましょう。 - ログの取得と監視体制の整備 操作履歴(ログ)を取得し、定期的に確認することで、不正操作や誤操作の早期発見につながります。
- 通信の暗号化と接続元制限
SSL/TLSによる通信の暗号化に加え、IPアドレスや端末制限など、接続元を限定するセキュリティー設定も重要です。
これらの基本的なセキュリティー設定を行うだけで、多くのリスクを未然に防ぐことができます。
5. 自社の業務規模・取引形態に合った仕組みを選ぶ
Web-EDIは有効な手段の一つですが、すべての企業や取引パターンにとって最適というわけではありません。次のようなケースでは別の選択肢も検討する必要があります。
- 注文・請求件数が非常に多く、個別入力では追いつかない
- 海外企業との取引があり、標準化された国際規格に対応する必要がある
- 自社開発や基幹連携が難しく、運用が煩雑になっている
こうしたケースでは、API連携型EDIやEDIアウトソーシングの活用がより現実的です。
6. 導入支援・運用サポートを活用する
社内リソースだけで課題をすべて解決しようとせず、導入支援や運用サポートのあるベンダーを選ぶことも、成功のカギです。初期設定から取引先ごとの個別対応、稼働後の問い合わせ対応までを一括して支援するサービスであれば、Web-EDI導入を円滑に進められます。
外部パートナーの力を借りることで、業務の早期立ち上げと安定運用を同時に実現可能です。
Web-EDI導入に向いている企業・業務の特徴(導入判断のポイント)
Web-EDI導入に向いている企業・業務の特徴
1. 小~中規模の取引件数で、多くが定型業務である Web-EDIは、画面操作での注文確認・ダウンロード・アップロードといった作業が中心のため、大量データの処理には向きません。一方で、1日数十~数百件程度の注文が継続的に発生するような業務には、最も効率的なEDI手段となります。たとえば、製造業や卸売業など、定型的な企業間取引(BtoB)が日常的にある業種に適しています。
2. 取引先が複数あり、それぞれに異なるフォーマットが存在する
汎用EDIや全銀手順では、通信環境やデータ仕様を厳密に合わせる必要がありますが、Web-EDIであれば「取引先ごとに画面や入力内容を分けて対応できる柔軟さ」があります。そのため、標準化されていない取引や、業界横断的な企業とのやり取りにも向いています。
3. 導入コストやシステム開発の手間を抑えたい企業
Web-EDIは、専用のEDIソフトや専用回線が不要で、Webブラウザ上で利用できるため、初期費用・維持費用ともに比較的安価に導入できます。また、複雑のシステム開発を避けたい中小企業にも適しています。
4. 社内のIT人材や予算が限られている企業
特に中小企業では、社内に専門の情報システム部門がない、もしくは専任者が1名~数名であるというケースも珍しくありません。Web-EDIであれば、パソコンとWebブラウザがあれば運用を開始でき、サービスの設定も比較的シンプルであるため、少人数体制でも運用が可能です。
慎重な検討が必要なケース(他方式との比較検討を)
以下のような場合は、Web-EDIだけでなく、他のEDI方式やアウトソーシング、システム連携型のソリューションとの比較検討が望まれます。
1日に数千件以上の受発注データを処理する必要がある
処理件数が膨大な場合、手動操作中心のWeb-EDIでは対応しきれない恐れがあります。API連携型のEDIや全自動化を前提としたアウトソーシングが適しています。
リアルタイム性・連携性が重要な業務(在庫、配送など)
Web-EDIはバッチ処理が中心で、リアルタイム連携が必要な場合は、基幹システムとの密な統合が必要となるため、標準化されたAPIや業界VANを検討する方が適しています。
セキュリティポリシーが厳しい企業・業界
特定業界(金融、医療など)では、Webベースの通信を制限している場合もあります。通信プロトコルや暗号化方式の確認が不可欠です。
導入判断時のポイント
Web-EDIの導入を判断する際は、以下のような観点で検討すると、失敗のリスクを抑えることができます。
チェック項目 | 検討ポイント |
---|---|
取引件数 | 月間何件程度あるか。手作業で処理可能な範囲か? |
取引先数 | 仕様のばらつきが多いか?標準化できているか? |
社内リソース | IT部門の体制、運用可能な人員の有無 |
システム連携の有無 | 販売管理、会計など基幹システムとつなぐ必要があるか |
コスト感 | 初期費用、運用費用、教育にかかる負担 |
迷ったら導入支援付きサービスを活用するのがおすすめ
判断が難しい場合は、導入前のコンサルティングや運用支援を提供しているサービスベンダーを選ぶことをおすすめします。オージス総研の「eCubenet」は、要件整理から、取引先ごとの対応支援、稼働後のフォローまでを包括的に支援しており、Web-EDI初心者の企業にも安心して導入いただけます。
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Web-EDIの導入を成功させるための注意点とチェックリスト
Web-EDIは、比較的導入しやすい仕組みである一方、運用フェーズでつまずいてしまう企業も少なくありません。ここでは、導入前後に注意すべきポイントと、成功に向けたチェックリストを紹介します。
1. 単なるサービス導入で終わらせない
Web-EDIはあくまで取引を電子化する手段です。導入すれば自動的に効率化できる、というわけではありません。むしろ、運用方法やルールが不明確なまま導入すると、使い方が定着せず形骸化してしまうケースもあります。
- 導入前に必ず、以下を明確にしておく必要があります。
- 誰がいつ、どのような手順で操作するか
- 社内システムとの連携をどうするか(手作業/自動化)
- 取引先とのデータ交換において気をつけるべきルールや制約は何か
こうした業務設計が不十分だと、導入後に「結局手作業が増えただけ」という事態にもなりかねません。
2. 社内の関係部門と事前に合意・連携しておく
- Web-EDIの導入は、情報システム部門だけでなく、営業、購買、物流、経理など複数部門にまたがる業務に影響します。
- 操作担当者の選定と責任範囲
- エラーやトラブル時の対応フロー
- データ管理の体制とセキュリティールール
そのため、導入時は「各部門の担当者が目的を共有し、必要な業務調整を行う体制」が不可欠です。
現場任せにせず、部署を横断したプロジェクトとして推進することが成功への近道です。
3. 取引先との調整・合意形成も忘れずに
- Web-EDIは一方的に導入しても成立しません。取引先の協力があって初めて成立するため、「取引先との仕様調整」や「切り替えスケジュールの調整」など、丁寧なコミュニケーションが重要です。
- 利用開始日と移行スケジュール
- 使用するWeb-EDIサービスの概要(操作方法、推奨環境など)
- テスト期間の有無
- 不具合時の連絡先や対応ルール
以下のような内容を事前に整理し、説明できるように準備しておきましょう。
相手企業の事情や環境も考慮したスケジュールと導入支援体制が不可欠です。
4. セキュリティー・管理体制を初期から設計する
- Web-EDIはインターネット経由で取引データをやり取りするため、セキュリティーと運用管理の体制を最初から明確にしておく必要があります。
- パスワード管理とアカウントの権限設定
- 操作ログの記録と定期点検
- データの暗号化(SSL/TLS対応)
- 外部からの不正アクセス防止策
以下の観点での設計が必要です。
サービスによっては、こうした機能があらかじめ備わっているものもありますが、運用する側の意識・ルールがなければ十分な効果は発揮できません。
5. 【導入チェックリスト】成功のために確認すべき10の項目
チェック項目 | 内容 |
---|---|
①目的は明確か | 業務効率化、コスト削減など導入理由が整理されている |
②対象業務は決まっているか | 受発注、請求など具体的な範囲が定義されている |
③サービス選定の条件が明確か | 操作性、導入費用、対応OSなど |
④システム連携の可否を確認済みか | CSV出力、API連携、基幹システムとの接続性 |
⑤関係部門の合意が取れているか | 現場への影響や対応体制を共有済み |
⑥取引先との調整が進んでいるか | スケジュール、テスト、利用環境の確認 |
⑦社内ルールは整備されているか | 操作手順書、マニュアル、責任者の設定 |
⑧セキュリティー体制が整っているか | アクセス管理、暗号化、ログの運用など |
⑨教育や研修の計画があるか | 操作方法のレクチャーやQ&Aの用意 |
⑩導入後のフォロー体制があるか | 運用サポート、問い合わせ対応先の確認 |
Web-EDIは、導入手順そのものよりも「導入後の運用体制の設計」が成功のカギを握っています。サービスの機能や費用だけで比較するのではなく、自社の業務特性に合った仕組み・体制を整えることが導入成功のポイントです。
まとめ | Web-EDIは"導入後"が本番。成功のカギは運用力
Web-EDIは、2024年に完全終了したISDN回線の代替手段として、中小企業をはじめ多くの企業が注目している柔軟かつ導入しやすいEDI方式です。専用回線や特殊なソフトウェアを必要とせず、Webブラウザから簡単に操作できる点は、まさに現代のBtoB取引に適したソリューションといえます。
- しかし、導入そのものはあくまでスタート地点であり、本当の意味での"成功"は、導入後に業務にしっかり定着し、成果が出て初めて得られるものです。
- 手作業が残り、想定したほどの効率化が実現できない
- 部門や拠点ごとに運用ルールがばらつき、トラブルの原因になる
- 取引先との連携が不十分で、運用開始が遅れる
- セキュリティー管理が甘く、情報リスクが高まる
よくある課題としては、次のようなケースが挙げられます:
これらは、いずれもシステムそのものの問題というより、「導入の仕方」「運用の工夫」に起因するものです。
だからこそ、システム選定だけでなく、「運用設計」や「部門間連携」、「導入支援体制の構築」を重視することが、成功への近道となります。
- オージス総研が提供する「eCubenet」は、Web-EDIのメリットを最大限に引き出すために、以下のような運用支援サービスを展開しています:
- 初期導入時のカスタマイズ支援
- 取引先ごとの個別対応(仕様調整、設定代行)
- 稼働後の問い合わせ対応やエラー対応支援
- 基幹システムとの連携
このような一貫したサポート体制があるかどうかが、Web-EDI導入の成否を分ける大きな要素となります。
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2024年8月8日公開
2025年8月5日更新
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。
関連サービス
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WebEDIサービス「WebEC for SellSite」
石油化学工業協会が策定したビジネスプロトコル標準「JPCA-BP」を基にした受発注業務用サービスです。JPCA-BPに規定されるデータ種別に対応しています。
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EDIアウトソーシングサービス
オージス総研のEDIアウトソーシングサービスは、お客様のEDI(電子データ交換)を当社にお任せいただけるフルアウトソース型のサービスです。受発注業務をはじめとする、お客様と取引先の各種取引業務において、データの交換や変換等の各機能をご提供します。
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eCubenetデータフロー
大容量伝送・リアルタイム連携・クラウド連携とEDIにおける環境の変化・課題に対応していくのが「eCubenetデータフローサービス」です。取引先や協業先と早く・手軽に連携することができるので、事業拡大のデータ基盤としてご利用いただけます。
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データ伝送サービス SecureEC
取引先とのデータ送信/受信時のセキュリティの不安を、インターネット通信の暗号化とクライアント証明書による認証で解決するのがオージス総研のデータ伝送サービス「SecureEC」です。
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