業務改善・効率化に役立つ「ECRS」、そのメリットと注意点

はじめに 業務改善・効率化に役立つフレームワーク

業務改善や効率化に取り組む際、先人の考案した各種のフレームワークを活用することが多いのではないでしょうか。例えば「PDCA(Plan-Do-Check-Act)」は非常に有名ですし、「QC7つ道具」というデータ分析・整理のためのものもあります。ほかにもKGI-KPIの設定が有効な場合もあり、SWOT分析を業務改善・効率化に役立てる場合もあります。

「ECRS」というフレームワークをご存じでしょうか。今回はこのフレームワークのご紹介を軸に、業務改善・効率化において留意すべきポイントについて考えたいと思います。

ECRSとは

ECRSは、業務改善・効率化を進めるための、シンプルかつ有効なフレームワークです。以下の4つのステップで構成されています。

Eliminate(排除): 業務プロセスの中で不要なステップや要素を取り除くことで、無駄を一掃し、貴重な時間とリソースの効率的な活用を強力に促します。
Combine(結合): 複数のステップを統合することで、業務の流れをなめらかにし、重複を排除し、一貫性を高めてプロセス全体のスピードを加速させます。
Rearrange(再配置): 業務手順や作業順序を見直し、最適な配置を実現することで、業務の効率性を最大限に引き出すために手順の順番や作業フローを再構築します。
Simplify(簡素化): 業務プロセスを極力単純にし、複雑さを減少させることで、業務の理解を容易にし、ミスの発生を劇的に低下させます。

E→C→R→Sの順に、改善・効率化の効果は大きいと言われており、プロセスや手順をこの4つの観点で見直していくことで、業務の透明性のアップ、リソースの最適活用を狙えます。

ECRSのメリット

導入のメリットを、もう少し具体的な例でご紹介します。

1. コスト削減

ECRSにより、無駄な業務やプロセスを削減し、コスト削減を実現することが可能です。
業務フローをこの4つの観点で見直し、不要なタスクを排除することで、業務遂行に必要なリソースが減少し、時間と費用の削減につなげることができます。

「Rearrange(再配置)」の例として、手作業によるデータ入力作業をITツールに置き換えて自動化することで、人的ミスを減らし手戻り業務にかかるコストを削減できます。また、「Combine(結合)」の例では、ワークローシステムを導入することで、起案・起票・申請・決裁・押印といった一連の業務を統合して、業務を円滑に進めることが可能になります。

2. 属人化の解消

一見無関係なようですが、ECRSによる業務見直しにより、属人化を効率的に解消することも可能です。属人化とは、特定の業務が特定の人物に依存してしまい、その人がいないと業務が進まない状態を指します。この状態が続くと、業務の停滞やミス、品質低下や引継ぎの困難さなどが生じ、組織全体の効率性を低下させてしまいます。

「Eliminate(排除)」により、無駄なプロセスを排除することで、単純に業務の効率化が図れ、個人に依存する業務は減少することになります。「Combine(結合)」では、複数の手順を一つにまとめることで効率化を図ると同時に、理解すべき業務工程が少なくなることで、属人化の領域を減らすことが可能です。「Simplify(簡素化)」では、その名の通り単純化することで他者でも習得しやすくなります(属人化した業務は複雑なものが多く、「簡素化」を適用できるケースは少ないかもしれませんが)。

3. ミスの防止

ECRSの適用により、業務プロセスの標準化が進み、ミスの発生を低減させることも可能です。業務の中で不要な手順を排除したり、工程を簡素化することで、従業員の混乱や手違いの可能性を減らすことができます。また、前述のように手作業をITツールに置き換えることでミスを抑えることが狙えます。

4. 生産性の向上

コスト削減によって生じた余剰リソースを活用することで、業務全体のスピードアップや品質向上を図ることが可能です。もしくは、余剰リソースを他の創造的な業務へ充てることで、新たに業務領域を拡大することも可能になります。

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ECRS導入時の注意点

では、ECRSの考え方で業務改善・効率化に取り組む場合の注意点はどのようなものがあるのでしょうか。他のフレームワーク活用の場合にも共通するものもありますが、以下に整理してみます。

1. 目的ややり方を明確にする

ECRSは業務の効率化を図る手法ですが、その本来の目的を見失っては、改善活動が形骸化してしまう恐れがあります。導入の目的、業務のどの部分を改善したいのかの明確化、具体的な目標設定などを定めておかなければ、局所的、単発的な改善に留まってしまい、大きな成果には結び付きません。
また、関係者全体で目的や方法を共有しておかねば、一丸となった改善活動を進められず、全体的、継続的な業務改善・効率化には結び付かないでしょう。

2. 成果が出るまでの長期的な計画を立てる

業務改善のプロセスは一朝一夕には完成しないため、長期的な計画と、段階的な目標達成が必要になります。まずは現在の業務プロセスを分析し、どの部分に改善の余地があり、その中で改善効果が大きそうな箇所はどこか、等を把握し、優先順位をつけて取り組む必要があります。また、優先順位を検討する際、手順の変更等といった「すぐにできる改善」、投資やテストが必要な「時間がかかる改善」といった分類を行い、計画的に進める必要があります。

3. 関係者との協力体制を整える

大きく俯瞰して見た場合、「結合(Combine)」や「順序変更(Rearrange)」は複数の部門をまたがって発生する可能性があります。取組みのスコープを設定すると同時に、関係者の協力体制を整えておかねば、インパクトのある改善が「絵に描いた餅」となってしまう場合があります。
その際、進捗状況や成果を定期的に共有することで、関係者のモチベーションを維持し、成果を組織全体で実感できるようにします。成功事例を共有することは、他の部署の刺激となり、全体の業務改善の推進力となります。

4. 従業員からの理解を得る

継続的な改善・効率化の活動とするために、現場の重要員の理解と参画は必須となります。日々の業務の中で、ECRSが可能なポイントを最も多く見つけ出せるのは、やはり現場の従業員であることが多いでしょう。そのために、従業員がその目的や必要性を理解し、自分たちの業務にどのように良い影響を及ぼすかを納得しておく必要があります。「Eliminate(排除)」の対象業務を担当する従業員の中には、「自分の仕事が無くなってしまう」という危機感を持つ方もいるかもしれません。それぞれひとりひとりの改善案を収集し、フィードバックを行い、動機づけを継続し続ける必要があります。

まとめ

以上、業務改善・効率化の手法「ECRS」のフレームワークについてご説明しました。
まずは業務の可視化を行い、その後は改善・効率化を継続的に進める。これはほとんどの業務において必要かつ重要な取り組みとなります。

先人の知恵を借り、現場の従業員の気づきを収集し、ある時は専門家の知見に頼るべきところは頼り、粘り強く継続することで、現場、組織、ひいては企業全体の持続的な成長が実現できると考えます。

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2025年4月22日公開

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