システムの「ブラックボックス化」の原因と対策

システムのブラックボックス化は、システムの仕組みや動作が不透明になり仕様や対応方法がわからなくなることを指し、システムの状況を特定の人しか把握していなかったり、マニュアルが整備されていないことで起こります。

このコラムでは、システムの「ブラックボックス化」の原因やリスクを明らかにし、対策方法をご紹介します。
ブラックボックス化の解決に役立つBRMS(ルールベース開発)の活用事例もご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

ブラックボックス化と属人化の関係

業務プロセスの効率化が重要視される中で、「ブラックボックス化」と「属人化」というキーワードが出てくることがあります。どちらも業務を効率的に進める上で大きな影響を与える要素になります。

属人化とは、特定の業務が特定の担当者の経験やスキル、立場などに依存してしまう状態を意味します。これは、特定の担当者がいないとその業務が遂行できない、または他の人が業務について十分に理解していないという状況を招きます。
ブラックボックス化は、属人化によって起こる状態で、属人化によって周囲から業務の実態がわからなくなる状態をブラックボックス化といいます。

ブラックボックス化を引き起こす原因

①優秀な人材に頼っている

優秀な人材に頼りすぎると業務が属人化して、その人が異動や退職した場合に、業務に関する知識やノウハウが残らず、業務が滞ってしまう可能性があります。

②業務の専門性や難易度が高い

専門的な知識や技術が必要な業務は、その知識を習得していない人にとっては理解が難しく、マニュアル化することも困難で、他のメンバーがその業務や意図を理解するのが難しくなります。

③マニュアルが未整備

が整備されていないことで、システムの状況が把握できずトラブルや改修の際に対応方法が不明確で問題解決に時間がかかる場合があります。また、マニュアルがあったとしても内容が随時更新されていないとブラックボックス化を引き起こしかねません。

④人員が不足している

人員が不足していると担当者は目の前の業務に追われて、マニュアル整備や知識を周囲に共有することが後回しになります。また、新しいメンバーが入っても、十分なコミュニケーションや教育が難しいいため早期に戦力化することが難しくなります。

ブラックボックス化がもたらすリスク

①業務が遂行できなくなる

特定の担当者しか業務内容を把握していない場合や専門的な知識や技術が必要な業務の場合、担当者以外のメンバーでは対応が難しく、業務に支障をきたしたりトラブルが起こる可能性があります。

②責任の所在がわからなくなる

システムのブラックボックス化が進むと、業務の透明性が失われ、責任の所在が不明確になるというリスクが生じます。この状況で問題やトラブルが発生した場合、メンバーが自分の役割や業務範囲を明確に理解していないため、重要なタスクが見落とされたり問題解決が遅れるだけでなく、再発防止策の策定も難しくなります。

③不正に発展する恐れ

業務を特定のメンバーしか把握できていない場合、不正やトラブルが起きても見過ごされる可能性があります。不正やトラブルが早期に発見できないと、システムの問題だけではなく、企業の信頼性を損なうリスクが高まります。

④社内で連携できなくなる

システムがブラックボックス化すると、部門間やチーム内での情報共有や意思疎通が大きく阻害される可能性があります。システムの詳細が特定のメンバーにしか理解されていないことで、他のメンバーはそのシステムの利用方法や問題解決の手段を十分に把握できず、結果として連携が滞ることになります。

システムのブラックボックス化の対策方法

①マニュアルを作成する

設計書や運用方法をマニュアルとして文書化することで、業務プロセスや運用手順を明確にします。文書化されたマニュアルは、引き継ぎや新しいメンバーの教育を効率的に行えるというメリットもあります。ただし、一度マニュアルを文書化して終わりではなく、業務プロセスやシステムの変更に応じて、定期的にマニュアルを見直し、常に最新の状態に保つことが重要です。

②フローチャートで業務を可視化する

フローチャートを活用することで、業務プロセスを視覚的に業務の流れや各ステップの関係性を明確にして、誰でも理解しやすく可視化することができます。これにより、個々の業務が全体の業務プロセスでどのように関係しているのか一目瞭然となり、業務の全体像を把握することができます。また、体制変更や担当者が変わった場合でも、業務がスムーズに引き継がれる環境を整えることができます。

③複数人体制の構築

特定の人に頼りすぎるとその人が異動や退職した場合に、業務が滞ってしまう可能性があります。こうしたリスクを回避するために、複数人体制が有効ですが、同じ業務を複数のメンバーで把握・担当できるようにして特定の人に業務が偏らず柔軟に対応できる体制が整います。また、メンバー間の連携を強化し、メンバー同士の意見交換を促進することで、各メンバーが抱える課題や進捗状況を理解しやすくなり、チーム全体で問題解決に向けたアプローチを協議することもできます。

④デジタル技術の活用(AI・RPA・BRMSなど)

システムのブラックボックス化を解消するためには、デジタル技術の活用もお勧めです。
AIを用いてデータを分析することで、業務プロセスのボトルネックや非効率な部分を特定し、改善策を提案することができます。また、AIによる自然言語処理技術を活用すれば、メンバーがシステムに対して質問を投げかけ、必要な情報を取得できる環境を整えることができます。これにより、メンバー全員のシステム理解度が向上します。

ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)は、手作業で行われている定型的な業務プロセスを自動化することができます。業務プロセスが標準化され、その過程が明示化されるため、各業務プロセスの理解が深まり、透明性も向上することができます。

BRMS(ルールベース開発)は、システムからビジネスルール(業務ルール)となる部分を切り離して管理します。ビジネスルールとは、「(条件)ならば、(アクション)する」の形で表現できる、業務を遂行する上で判断や行動の基準となるものです。ビジネスルールは、デジションテーブル(決定表)で表現されており、このデジションテーブルがシステムの業務ロジックとして、そのまま実行されます。このため、誰でもシステムに実装されている業務ロジックを把握することができます。
8693_01.png 専門的な知識や技術がなくてもビジネスルールを理解し、修正できるため、システムの運用に関与する全てのメンバーがルールを共有しやすくなります。これにより、システムがブラックボックス化するリスクが軽減されます。


オージス総研では、ルールベース開発(BRMS)の特集ページもご用意しております。BRMSの導入事例やケーススタディをご紹介した資料のダウンロードが可能となっておりますので、ぜひ一度ご確認ください。

2025年9月1日更新
2025年7月24日公開
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

関連サービス

  • ルールベース開発(BRMS)特集

    オージス総研の強みであるモデリング技術と、BRMS(Business Rule Management System)を融合した「ルールベース開発ソリューション」をご紹介します。

  • ルールベース開発 -BRMS-

    オージス総研はBRMSの開発経験を通じて得た知見やノウハウから、BRMSを『ルールべース開発』というソリューションとして提供しています。

  • ルールベース開発プラットフォーム-yonobi®-

    オージス総研はBRMSの開発経験を通じて得た知見やノウハウから、新たにルールベースAIという概念を取り入れ、yonobi®を開発しました。最短15分で、新しいルールをリリースすることも可能です。

関連記事一覧