EDIの請求書取引とは?システムの導入のメリットや注意点、電子帳簿保存法との関係について解説
請求書や発注書など従来の紙の書類を電子データでやり取りする「EDI取引」は、業務効率化やペーパーレス推進などを目的として幅広い業種で導入が進められています。一方で2022年に電子帳簿保存法が改正されたことを受けて、「EDI取引を導入したいけれども現在の最新状況でどんなシステムやツールを選ぶべきか分からない」「現在使用しているEDI取引システムが電子帳簿保存法の要件を満たしているか分からない、必要に応じて移行を検討している」といった悩みを持つ方も多いかもしれません。
本記事では、EDI取引におけるメリットや注意点とともに、電子帳簿保存法で満たすべき要件や関係について解説します。EDIシステムの選び方のポイントも解説していますのでぜひ参考にしてください。
EDI取引の概要や電子データとして取り扱う書類
まずはEDIの基本知識やEDI取引で取り扱う書類の種類を解説します。
EDIとは
EDIとは「Electronic Data Interchange」の略で、日本語では「電子データ交換」と訳されます。企業や個人間での受発注や請求といった商取引に関連するデータを、ネットワークを介して電子的かつ自動的に交換する仕組みが、EDIです。
EDIの目的
EDI取引を導入する主な目的は、商取引をより迅速、円滑にすることです。メールや郵送、FAXといったバラバラの送付方法や保管方法で取り扱われていた書類や帳票類を、インターネットを通じたEDI取引によって、統一したフォーマットで一元管理できるようになります。
取引関連業務が効率化することで、以下のような効果も期待できます。
- ヒューマンエラーの削減
- コスト削減
- 取引データの正確性の保持
- 企業間のデータ連携の強化
- サプライチェーンの最適化
- 新しいビジネス機会の創生
EDI取引で取り扱われる書類の種類
EDI取引では、以下のような書類や帳票が電子的にやり取りされます。
- 契約書
- 発注書
- 受注書
- 納品書
- 請求書 など
EDIの種類と関連技術のWeb-EDI、EOS、BtoB ECとの違い
EDIは、取引方法や規格などによりさまざまな種類があります。また、EDIと似ている技術も、企業間の商取引に活用されています。
各EDIの特徴や、似ている技術について解説します。
個別EDI
個別EDIとは、取引先ごとに定められた通信方法、フォーマット、データ交換方式を利用したEDI取引のことです。取引先別に運用のルールや識別コードの詳細設定が可能なため、取引先企業の特色やシステムに合わせたやり取りが実現します。
一方で取引先それぞれで専用のシステムやフォーマット、ルールが必要となるため複数企業との取引が煩雑になる、柔軟性に欠けるといったデメリットがあります。商取引先が多い場合は、他のEDI取引方法の採用がおすすめです。
標準EDI
標準EDIとは、業界や業種ごとに存在するEDIの標準規格のことです。代表的な標準EDIには、以下のものがあります。
- 全銀EDI(銀行業界)
- 流通BMS(流通業界)
- JPCA-BP(石油化学業界)
- 中小企業共通EDI
通信方式やフォーマットが均一化されている標準EDIを使用することで、同業種や同業界内での企業間のデータ交換やシステム連携などの負担軽減につながります。自社でEDIシステム構築が難しいと考えている企業にとっても、標準EDIによってEDI取引を導入するハードルが下がるでしょう。
一方で異業種の企業とまんべんなく取引をしている企業の場合には、業界ごとに異なる標準規格の使用が必須となる、取引先別のフォーマットのカスタマイズ性が低いなどといったデメリットがあります。
業界VAN
標準EDIの中でも、特定の業界・業種に特化したEDIが業界VANです。業界特有のフォーマットやプロトコルが採用されています。業界VANの利用率が高い業界の場合、企業間でのEDI取引がさらにスムーズ、スピーディーになるでしょう。
ただし、別業界の企業との取引が必要な場合は、業界VANではフォーマットが合わず別のフォーマットが必要となるケースが多くなります。
Web-EDI
Web-EDIとは、Webサーバー上で構築したシステムを利用し、Webブラウザー上で取引データ交換を行うEDIです。自社内でのサーバーやシステム構築が不要なため、EDI取引の導入にかかる手間やコストを抑えられるメリットがあります。
過去、2024年にはNTT東西が推し進めた固定電話網IP化に伴って、固定電話網を使用した旧来型のEDIについてはデータ伝送遅延が発生したり、新規開設はできなくなったりという状況が訪れました(2024年問題)。現在では、固定電話網を利用したEDIを採用していた企業も新しいシステムへの移行をほとんど終えており、またこれからEDI取引を新規導入する場合には、Web-EDIが選ばれるケースがほとんどです。
EOS
EOSとは「Electronic Ordering System」の略で、「電子発注システム」と訳されます。インターネット経由で発注情報のやり取りができ、発注業務効率化を目的に利活用されています。
EDIの適用範囲が商取引全体であるのに対して、EOSの適用範囲は発注業務のみです。よって、EOSはEDIの一部であるとも考えられます。
BtoB EC
BtoB ECとは、企業対企業の取引にて展開するECシステムのことです。EDIが商取引の自動化や効率化を目的としているのに対して、BtoB ECは業務販路の拡大や受発注の効率化を主な目的として導入されています。また、BtoB ECはインターネット環境さえあればブラウザーベースで取引ができるということから、取引企業間でのフォーマットやシステムなどの影響を受けないという特徴もあります。
請求書を含むEDI取引の業種別導入事例
請求書を含むEDI取引は、多くの業種や業界で導入されています。多業種でのEDI取引の導入事例を、業種別に解説します。
製造業
製造業では、調達から製品、納品までのサプライチェーン全体の効率化を目的に、EDIが以下のようなケースで導入されています。
- 部品や資材の調達(供給業者との受発注や納品のやり取り)
- 在庫管理(在庫情報のリアルタイム更新)
- 生産計画の調整(複数の取引先との情報共有)
いずれのケースでも、EDI取引により手作業による入力ミスや過剰在庫、部品の欠品などを防ぎつつ、生産をスムーズに行うことが可能です。
物流業
物流業界では、配送業務の関連情報をスピーディーにやり取りする目的で、以下のようなシーンでEDIが活用されています。
- 配送指示(配送指示書の交換)
- 配送状況の管理(配送スケジュールや荷物の追跡情報などのやり取り)
- 倉庫管理(在庫状況や出荷指示の自動化)
EDIにより配送遅延や誤配を激減させ顧客満足度を向上させたり、在庫管理の効率化によるコスト削減につなげたりしています。
小売業
小売業では、商品の発注から販売までで発生する以下のような多くの取引にEDIが活用されています。
- 発注業務(在庫が少なくなったときの自動発注)
- 仕入れ業務(書類や帳票のやり取り)
- 納品(書類や帳票のやり取り)
- 在庫管理(在庫のリアルタイム更新による適正管理)
小売業では納品書や請求書などの書類をEDIで取引することで、書類管理の効率化や手作業での負担軽減、取引先とのデータ不一致の防止などを実現しています。
金融業
金融業界では、顧客や企業、銀行間での正確なやり取りを目的に、以下のようなシーンで活用されています。
- 決済情報の交換(エラーや重複取引の防止)
- 支払い指示(スピーディーで正確な支払いの実現)
- 顧客のデータ管理(顧客の手続き処理)
EDIにより業務の効率化だけでなく正確性を向上させ、取引先や顧客との信頼関係の構築につなげています。
医療業界
医療業界では、医療サービスの質向上を目的に以下のようなシーンでEDIが活用されています。
- 医薬品の発注と供給(薬局や製薬会社との正確、迅速な取引)
- 在庫管理(薬剤の欠品や過剰在庫防止)
- 患者情報の共有や管理(診察履歴や検査結果の共有)
特に薬局や病院間などで正確かつスピーディーに情報のやり取りを行う際に、EDIでの取引が有効です。
公共機関・行政
公共機関および行政でも、EDIが以下のようなシーンで活用されています。
- 税務申請および支払い(企業から税務署へ必要な情報の送信)
- 公共事業の入札と契約管理(入札情報や契約書類の交換)
従来煩雑だった手続きや書類の記入について、EDIにより正確性を担保しながらも、スピーディーな情報のやり取りを実現できるようになっています。
EDI取引を請求書業務に導入すると実現することやメリット
請求書業務にEDI取引を導入することで実現することや具体的なメリットを解説します。
送信漏れなどの人的ミスの防止
EDIのシステムでは基幹システムと連携することで、受信データを自動的に取り込む機能が活用できるため、入力作業の自動化が実現できます。今まで手作業で行っていたデータ入力や転記が不要となるため、人的ミスの削減につなげられます。
注文書や請求書、納品書などの書類や帳票の自動生成や自動送信も行うため、送信漏れなどのミスもなくなるでしょう。
送信するデータの信頼性の担保
送信するデータも自動で入力されるため、誤った情報が入力されることがなくなります。取引先へ送信するデータの正確性も向上し、信頼性を担保した取引につながるでしょう。
業務効率化
EDI取引ではシステム上で書類データの送受信が完了します。納品書や請求書といった紙ベースの商取引で発生する書面の印刷、入力、押印、郵送といった手作業が不要となるため、取引業務全体の効率化が実現します。
コスト削減
印刷や郵送といった工程で発生する印刷代、封書代、郵送料といったコストもかからなくなるため、取引業務で発生していたコスト削減にもつながります。
ペーパーレスの実現
EDIを導入することで、商取引におけるペーパーレス化が実現します。紙の使用量削減が実現するペーパーレスは、環境への配慮においても有効です。さらに、郵送で発生していた輸送のエネルギーや資源の消費もなくなるため、輸送面での環境負担の低減にもつながるでしょう。
BCP対策
EDI取引は紙の書類や帳票が不要になり、デジタルデータをリモート環境で取引可能です。災害やシステム障害などが発生した場合でも商取引の継続が可能であり、データの自動バックアップや分散によって必要なデータをすぐに検索でき復旧もスピーディーに行えるため、BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)対策の一環として取り入れることもできます。事業の停止や中断のリスクを抑えることもでき、企業としての優位性の保持にもつながります。
EDI取引と電子帳簿保存法の関係
EDI取引の導入時に留意しなければいけないのが電子帳簿保存法です。EDI取引と電子帳簿保存法およびインボイス制度との関連性について解説します。
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法とは、税務関係帳簿書類のデータ保存を可能とする法律です。1998年の施行から何度かの改正を経て、2026年現在に至ります。紙の帳簿管理で発生しがちな企業の課題解決を目的に制定されました。
EDI取引と電子帳簿保存法の関連性
電子取引の真実性と透明性を高めるために、2022年の電子帳簿保存法の改正にて、企業は要件を満たしたうえで電子取引データを保存することが義務付けられました。改正によってEDIを含む電子取引データへの新しい要件が設定され、要件を満たしたうえでの取り扱いが求められています。
インボイス制度との関連性
EDI取引において、2023年10月より導入されたインボイス制度への以下のような対応も求められるようになりました。
- EDIで取り扱うデータの内、どれをインボイスとして取り扱うかを事前に取引先と合意しておく
- EDIフォーマットやデータにインボイスに必要な項目を含める
- 返還インボイス(適格返済請求書)をEDI送信か別途書面管理にするか事前に決めておく
- EDIで送受信したインボイスは電子データとして7年間保存が必須
自社のEDI取引やフォーマットの、インボイス制度への対応整備も必須です。
改正電子帳簿保存法に則ったEDI取引のデータ保存要件と方法
電子帳簿保存法で満たすべき要件と、具体的な電子データの保存方法を解説します。
請求書を含むEDI取引データの保存要件
電子帳簿保存法では、請求書を含むEDI取引データ(電子データ)に、以下2つの要件を満たしての保存が義務付けられています。
- データが改ざんされていないことを保証する「真実性」
- データを容易に閲覧できる状態を確保する「可視性」
これら2つの要件を満たしたうえで、EDI取引データの保存や取り扱いが必要です。
EDI取引データの保存方法
電子帳簿保存法の保存要件を満たしたうえで、適切にEDI取引データを保存する方法には以下の3つがあります。
- EDIシステム上で保存する
- EDIシステムからCSV出力し、自社のデータベース上で保存する
- EDIシステム上のデータを取引別に帳簿出力し、帳簿管理ツール上などに保存する
なおEDI取引によって授受した電子取引データを印刷し、紙媒体として保存することは認められていません。
電子帳簿保存法に対応したEDIシステムやツールの選定ポイントと注意点
請求書をはじめとした帳簿や書類のやり取りについて、これからEDI取引の導入を検討しているという場合には、電子帳簿保存法の保存要件を満たし、適切な形式で保存できるシステムやツールを選ばなければいけません。電子帳簿保存法を踏まえた、EDIシステムやツールの選定ポイントと注意点を解説します。
データ通信時の通信プロトコルを確認する
EDI取引のツールやシステムは、主要な取引先が指定する通信プロトコルに対応しているものを選ばなければいけません。取引先が以下の通信プロトコルを採用しているかを確認し、対応しているツールやシステムを選びましょう。
- JX手順
- ebXML MS
- SFTP
- AS2
- 全銀TCP/IP
- 全銀BSC
- 流通JCA
- 流通JCA-H
- FTP
- HULFT
- SFTP など
データフォーマットを確認する
データフォーマットも通信プロトコル同様、取引先が採用しているものに適合したツールやシステムを選ばなけれないけません。データフォーマットには以下のようなものがあります。
- 固定長
- 可変長(CSVなど)
- XML
- CII標準(業界標準フォーマット)など
オンプレミス型かクラウド型かを選択する
EDIツールには、自社サーバーにインストールするオンプレミス型(パッケージ型)と、クラウド上でデータの保存や授受を行うクラウド型に二分されます。
オンプレミス型はカスタマイズ性が高く自社や業界に適合したシステムが構築できる一方で、サーバーなどのインフラ整備や機器の設置といった面で初期費用が高額になりやすく、担当者の整備負担が大きくなりやすいのが特徴です。
クラウド型はサーバーなどのインフラ整備や管理が不要なため初期費用を抑えやすい、スピーディーに導入できるといったメリットがあります。法改正時もクラウドサービス側がアップデートを行い、基本的にユーザー側の対応負担がありません。一方でカスタマイズ性がやや低く、細やかなセキュリティ対策を自社で実施できないといった点に注意しましょう。
費用対効果を検討する
EDI導入により商取引の正確性の向上や業務効率化、コスト削減などが実現できるものの、導入の際には初期費用とランニングコストが発生します。
また、取引先の件数が多い場合には請求書をはじめとした書類や帳簿の送付件数が多くなるため、EDI導入によって高い費用対効果が得られますが、取引先件数が少ない場合はそれほど費用対効果が高くないかもしれません。
EDI取引を導入するときには、導入によって解決したい課題や目的を明確にし、費用対効果の面でプラスになるかどうかをしっかりと確認しましょう。
電子帳簿保存法の要件を満たしているかを確認する
EDI取引でやり取りしたデータは電子データに該当するため、電子帳簿保存法の要件を満たしたうえでの保存が義務付けられています。電子帳簿保存法の要件を満たした設計となっているEDIシステムやツールを選びましょう。
現場で定着できるかを確認する
操作がしづらい、システムの導入が難しいといったタイプのEDIシステムやツールは、導入後に現場で定着しない恐れがあります。操作が簡単で、使いやすいインターフェースを備えるなど、既存の業務プロセスへスムーズに導入できるEDIを選びましょう。資料の配布やEDIに関するセミナーの開催など、EDIに対する理解定着のための取り組みを社内で行うことも有効です。
導入実績やサポート体制を確認する
システムやツールのベンダーについて、導入実績やサポート体制をチェックしておくこともポイントのひとつです。自社と同業界や同業種での導入実績が豊富な製品の場合、そのシステムやツールのベンダーが業界特有の慣習や慣例に精通している場合が多いでしょう。
導入後、トラブルへの対応や問い合わせに対してすぐに対応してもらえるなど、サポート体制が充実しているかも確認しておきましょう。
請求書を含めた業務効率化を実現するおすすめEDI取引ソリューション
EDIの新規導入や、レガシーEDIからWeb-EDIへの移行を検討しているときにおすすめのソリューションが、オージス総研のEDIフルアウトソーシングサービス「eCubenet」です。クラウドEDI「データ伝送サービス」やインターネットデータ伝送サービス「SecureEC」、Web-EDIサービスなどを組み合わせ、EDIの構築、設計、運用までトータルに支援を行います。
EDI取引の導入は電子帳簿保存法の要件を満たしたシステムやサービスを採用しよう
請求書を含めたEDI取引のメリットや注意点とともに、電子帳簿保存法で満たすべき要件、システムやツールの選び方を解説しました。
請求書や納品書の送付や発行にEDIを導入する場合は、電子帳簿保存法の要件を満たしているシステムやツールを選ぶことはもちろん、費用対効果の高いものや現場へ定着しやすいもの、取引先のフォーマットやプロトコルに適応するものを選ぶ必要があります。自社の商取引にぴったりのシステムやツールを選び、業務効率化や自動化を実現させましょう。
2026年5月22日公開
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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